鄭文燦・行政院副院長が来日 自民党要職者と次々に面談

 台湾の行政院副院長の鄭文燦氏が6月26日から来日し、自民党の麻生太郎・副総裁や萩生田光一・政調会長、茂木敏充・幹事長などと面談し、日台間の連携強化などについて意見を交換したそうだ。29日に帰台するという。

 行政院副院長の来日は、李登輝総統時代の1994年10月、連戦・行政院長下の徐立徳・副院長が広島アジア競技大会に出席して以来29年ぶりで、「外交部と経済部は極秘で今回の訪日計画を進めていた」と中央通信社は報じている。

 麻生副総裁との面会では行政院長を務めたこともある謝長廷・台北駐日経済文化代表処代表が同行し、萩生田光一・政調会長と茂木敏充・幹事長との面談では、蔡明耀・台北駐日経済文化代表処副代表が同行した。

 日本政府はこれまで中国への配慮から、台湾の政権中枢にいる幹部訪問の受け入れには慎重ながら、5月10日の衆議院外務委員会でも林芳正外務大臣は「個別具体的な状況に応じて対応している」「ハイレベルの訪日やトランジットを全面的に認めないというようなことはしておらない」と答弁し、台湾政府要人の来日を容認している現状を明らかにしていた。

 今回の鄭文燦・行政院副院長の来日が極秘裡に進められ、日本が受け入れたという背景には、和田有一朗議員などが外務委員会や予算委員会で台湾要人の来日や日台の政府間対話について何度も質問していることや、政府としても政府間対話に代わる自民党要職者との対話なら可能と判断したようだ。

 ちなみに、台湾政府要人の来日は、1985年3月に現職の副総統として李登輝・副総統が特使団長としてウルグアイとパラグアイを訪問の帰途、東京と横浜を訪問した事例と、2022年9月11日に頼清徳・副総統が安倍晋三元総理の葬儀参列のために訪問した事例がある。

 近年は王美花・経済部長やオードリー・タン(唐鳳)・デジタル発展部長も来日しており、ここに鄭文燦・行政院副院長が加わった。中国の顔色をうかがいながらの及び腰ではあるが、日本流サラミ・スライス戦術にも見え、事例を積み重ねてゆく方針のようだ。

—————————————————————————————–鄭文燦氏が訪日 行政院副院長として29年ぶり 自民・麻生氏と面会【中央通信社:2023年6月28日】https://japan.focustaiwan.tw/politics/202306280001

(台北中央社)鄭文燦(ていぶんさん)行政院副院長(副首相)が日本を訪問中であることが分かった。鄭氏が27日、フェイスブックで明らかにした。行政院副院長の訪日は1994年以来29年ぶり。

 鄭氏はフェイスブックで、謝長廷(しゃちょうてい)駐日代表(大使に相当)と共に自民党の麻生太郎副総裁や鈴木馨祐・政務調査会副会長と面会したことを報告。台湾と日本の経済・貿易交流や産業連携、台日関係強化について深く意見を交わしたという。面会時の様子や麻生氏とのツーショット写真も併せて投稿された。

 行政院(内閣)当局者によると、外交部(外務省)と経済部(経済省)は極秘で今回の訪日計画を進めていた。台湾の高官の訪日としては中華民国(台湾)と日本が1972年に国交を断絶して以降、昨年7月の頼清徳(らいせいとく)副総統に次いで2番目の高さとなる。行政院副院長の前回の訪日は李登輝(りとうき)政権下で、徐立徳(じょりつとく)行政院副院長(当時)が広島アジア競技大会に出席した。

(頼于榛/編集:名切千絵)

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