2月7日にこの法案を上院の外交委員会が全会一致で可決したとき、本誌は「ほぼ上院で可決される見通しがついたようだ。地震で苦しむ台湾の人々をおおいに激励する朗報となったことと確信する」と伝えたが、総統府報道官は「米議会が長期にわたり各領域で台湾を固く支持してくれたことに心から感謝する」と述べ、歓迎の意を表している。
しかし、台湾が歓迎するのとは裏腹に、中国は「強烈に不満であり断固反対する」と表明、「『一つの中国』の原則と中米間の3つの共同コミュニケの規定に深刻に違反している」「台湾地区との公的往来を停止し、台湾地区に関する問題を慎重に適切に処理して、中米関係を妨げたり損失をもたらしたりすることのないよう促す」(中国国際放送局)と不満をぶちまけている。
この「台湾旅行法」は下院も上院も同じ法案内容で、どちらも全会一致で可決されている。下記に紹介する時事通信は「大統領が拒否権を行使するのは困難とみられる」と指摘し、また米国のこれまでの中国への対応からしても、恐らくトランプ大統領が署名することはほぼ確実と見ていいだろう。
一昨年の大統領選のさなか以来、米国は台湾との関係強化を目指す国内法を次々と成立させており、目を見張るものがある。それを箇条書きで紹介すれば下記のとおりだ。
・2016年5月16日、米国連邦議会の下院が「『台湾関係法』と台湾に対する『6つの保証』を米台関 係の基礎とすることを再確認する共同決議案」を可決。
・2016年7月6日:米国連邦議会の上院が「『台湾関係法』と台湾に対する『6つの保証』を米台関 係の基礎とすることを再確認する第38号両院一致決議案」を可決。
・2016年12月23日、下院と上院で可決された、米台間の高級将官と国防にかかわる高官以上の交流 プログラム実行を含む「2017年国防授権法案」にオバマ大統領が署名して成立。
・2017年12月12日、下院と上院で可決された、米海軍の艦船を高雄など台湾の港に定期的に寄港さ せること、米太平洋軍が台湾の入港や停泊の要請を受け入れること、水中戦での攻撃能力向上を 目指す台湾への技術支援、台湾と米国のさらなる関係強化などを内容とする「2018年国防授権法 案」にトランプ大統領が署名して成立。
—————————————————————————————–米台高官の相互訪問に道=「旅行法」台湾側が歓迎【時事通信:2018年3月1日】
【ワシントン、台北、北京時事】米上院は2月28日、米国と台湾の高官による相互訪問に道を開く台湾旅行法案を全会一致で可決した。
下院では1月に可決されており、トランプ大統領が署名すれば成立する。中国は反発しているが、全会一致で通過した法案に対し、大統領が拒否権を行使するのは困難とみられる。台湾は米台交流を促進する動きとして歓迎している。
法案は「あらゆる地位の米当局者が台湾に渡航し、対応する台湾側当局者と会談する」ことや「台湾高官が米国に入国し、国防総省や国務省を含む当局者と会談する」ことを認める内容。在米大使館に相当する台北経済文化代表処など台湾側組織に、米国での経済活動を促すことも盛り込んでいる。
法案可決を受け、台湾総統府は3月1日、「台湾にとって最も重要な盟友である米国との関係をレベルアップできる」などと歓迎するコメントを発表し、法案成立への期待感を示した。
一方、中国外務省の華春瑩・副報道局長は1日の記者会見で、中台は不可分の領土とする「一つの中国」原則への重大な違反だと指摘し、「強烈に不満であり断固反対する」と強調した。既に外交ルートを通じて米側に抗議したという。