米国と台湾が1997年以来開いてきた安全保障対話の定期協議の一つ「モントレー対話」は、今年もワシントンで7月に開催されるという。
米台双方は「モントレー対話」の開催や中身を公表しないと言われるが、中央通信社は「消息筋によれば、来月の会談には安全保障政策に関する総統諮問機関、国家安全会議の官僚や国防部(国防省)の戦略企画部門トップらが台湾側から出席するという」と伝えている。米側は国防次官補、台湾側は国家安全会議副秘書長をトップとして、国防当局や外交部門から参加するようだ。
昨年は6月下旬にワシントンで開かれ、ロシアのウクライナ侵略や米国が台湾に提供する武器や軍事訓練について協議したと言われる。
現在の呉[金リ]燮・外交部長が総統府秘書長だったときの2017年12月、本会役員などと総統府内で面会した折、普段は温厚な呉氏が顔を紅潮させながら「台湾と米国の間には4つのレベルの安全保障対話がある。台湾を重視する安倍政権にもかかわらずなぜ安全保障対話が進まないのか」と迫ったことがあった。
事実、米国と台湾の間には「モントレー対話」以外にも「米台国防再検討対話」「米台安全保障協力対話」「将官級ステアリンググループ」があると言われる。しかし、日本と台湾の政府間において安全保障対話の枠組みはない。
林芳正・外務大臣の外務委員会答弁によると、日台の政府間で台湾安全保障対話ができない理由は「1972年の日中共同声明を踏まえ、台湾との関係を非政府間の実務関係として維持していくこととしております。こうした立場に基づき、我が国の民間窓口機関である日本台湾交流協会を通じ、幅広い分野で台湾との情報共有や協力を積極的に推進してきている」からだという。
日中共同声明で、台湾とは「非政府間の実務関係」で維持してゆくとしたので、事実上の大使館である日本台湾交流協会を通じて台湾政府と情報共有などを行っているのだという。それが日本の台湾との関係に関する日本の基本的立場だという。
しかし、本誌で何度も指摘してきたように、外務省にも防衛省にも、外交関係のない台湾であっても、日本政府が行う安全保障などの情報共有を禁止する法令はない。
つまり、国内法では台湾との安全保障に関する政府間対話を禁止していないが、日中共同声明で台湾との関係を「非政府間の実務関係」としたので、政府間対話はできないというのである。
だが、日中共同声明のどこにも台湾との関係を「非政府間の実務関係」と規定する文言はない。米国も中国と3つのコミュニケを結んでいるが、台湾とは「モントレー対話」など、政府間で安全保障対話を実施している。
日中共同声明は「条約」ではない。日中共同声明は、日本の国益と安全保障の観点から、国内法との整合性が改めて問われるべきではないだろうか。
—————————————————————————————–台湾と米国、安保会談を来月ワシントンで開催へ 武器調達や台湾海峡問題が焦点に【中央通信社:2023年6月5日】https://japan.focustaiwan.tw/politics/202306050003
(台北中央社)台湾と米国が安全保障に関する実務級最高会談「モントレー対話」を米ワシントンで来月開催することが5日、消息筋の話で分かった。米国からの武器調達や台湾海峡問題に焦点が当てられる見通し。
モントレー対話は定期協議の枠組み。消息筋によれば、来月の会談には安全保障政策に関する総統諮問機関、国家安全会議の官僚や国防部(国防省)の戦略企画部門トップらが台湾側から出席するという。
淡江大学国際関係・戦略研究所の翁明賢所長は、昨年のモントレー対話では主にロシア・ウクライナ戦争に焦点が当てられていたとした上で、バイデン政権がこの1年、米日、米韓、米日韓、米日比、米豪日などの2国間または3国間関係を積極的に推進していることに触れ、今年の会談は主に台湾海峡問題を焦点とすることが予想されるとの見方を示した。また、台湾有事の際にインド太平洋地域の同盟国がどのような対応を取るのかについても話が及ぶ可能性があると指摘した。
政府系シンクタンク、国防安全研究院の舒孝煌副研究員は軍事戦略を担う戦略企画部門の代表者が会談に参加することに触れ、米国からの武器調達や弾薬備蓄、台湾に対する米国の軍事援助などについても言及があるだろうと推測した。
(游凱翔/編集:名切千絵)
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