【祝】 本日、日本と台湾が「法務司法の協力に関する覚書」を締結

 日本と台湾では、法務司法分野における共助関係がなく、受刑者移送もできないのが現状だ。裁判関係書類の送達や証拠調べに関して協力する「司法共助」や、刑事事件の捜査・公判に必要な証拠の提供に関して協力する「捜査共助」などができない。

 和田有一朗・衆議院議員(維新)は所属する外務委員会において、昨年3月と5月に日台間の司法や捜査の共助の実態について質疑し、それを明らかにしている。

 3月は捜査共助や受刑者移送の現状について質疑し、政府からは「我が国と外交関係がない台湾との間で捜査共助を行うことは困難」(政府参考人:保坂和人・法務省大臣官房審議官)、また「我が国と台湾との間には受刑者移送条約が締結されないため、国際受刑者移送は実施されてございません」(津島淳・法務副大臣)という答弁だった。

 5月は台湾との司法共助について、日本は地域として扱っている香港とは刑事共助協定を締結しているにもかかわらず、同じく地域扱いの台湾とはなぜ同じ条約を結べないのかについて質疑すると、政府からは「香港は、中国の一国二制度の下で、香港特別行政区基本法に基づいて、中国政府から刑事共助協定の締結権が付与されています。平成20年の5月に我が国との間で刑事に関する共助に関する日本国と中華人民共和国香港特別行政区との間の協定が締結」されたとの答弁があり、続けて台湾について「締結権が付与されているような場合以外には、外交関係を持たない地域との間で捜査協力等を行うことは困難」(小田原潔・外務副大臣)という答弁を引き出している。

 日本は台湾を「非政府間の実務関係」と位置づけ、また「我が国との間で緊密な経済関係と人的往来を有する重要なパートナー」とも位置付けているにもかかわらず、台湾とは、これこそ「実務」と言うべき捜査協力も受刑者移送もできず、法務司法分野では共助関係にないという、なんともちぐはぐ感が拭えない現状だった。和田議員の質疑は、このようなちぐはぐな関係を正常化したいという考えからのものだった。

 しかし、3月13日の日本台湾交流協会のホームページに、3月16日(本日)17時から東京都港区六本木の日本台湾交流協会東京本部において、「公益財団法人日本台湾交流協会と台湾日本関係協会との間の法務司法分野における交流と協力に関する覚書」の署名式を行うということで、メディアに対する取材案内が掲載された。

 この「法務司法の協力に関する覚書」は「日台間の法務司法分野における協力関係の強化及び促進のために、両協会が相互に協力することを定める」内容だそうで、署名式には、日本は大橋光夫・日本台湾交流協会会長、台湾は蘇嘉全・台湾日本関係協会会長が臨むという。

 日台双方とも民間機関なので条約ではなく「取決め」ということになるが、取決めといえど、ほぼ条約と同等の取扱いとなっている。

 例えば、2013年4月10日に日台で交わした「日台漁業取決め」(公益財団法人交流協会と亜東関係協会との間の漁業秩序の構築に関する取決め)をみても、この「取決め」によって日台間の操業範囲などが定められたことによって台湾漁船の拿捕などは格段に減少し、日台間はこれまで以上に安定した状態となり、信頼感は深まっている。

 本日結ばれる「法務司法の協力に関する覚書」の詳しい内容は、日本台湾交流協会のホームページに掲載されるはずなので、明日の本誌でお伝えする予定だ。

 ともかく、懸案だった日台間の法務司法分野における協力関係がようやく第一歩を踏み出し、喉(のど)元に刺さっっていた小骨が抜けた思いだ。和田有一朗議員も同じ思いなのではないだろうか。「法務司法の協力に関する覚書」締結を心から祝福したい。

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