日米防衛相会談では台湾有事に際して緊密に連携する方針も確認していた!

 3月16日午後、外務省飯倉公館において、茂木敏充・外務大臣、岸信夫・防衛大臣は来日した米国バイデン政権のアントニー・ブリンケン国務長官、ロイド・オースティン国防長官と対面で「日米安全保障協議委員会(2+2)」を開催した。

 それに先立ち、12時50分から14時20分まで約90分間、岸防衛大臣とオースティン米国防長官の会談が防衛省で行われ、同省ホームページによれば「自由で開かれたインド太平洋を維持・強化するため、日米が基軸となって取り組んでいくことを確認」するとともに、「岸防衛大臣は、国際法との整合性に問題のある規定を含む中国海警法により、東シナ海や南シナ海などの海域において緊張を高めることになることは断じて受け入れられない旨を述べ、両閣僚は深刻な懸念を表明した」と伝えるとともに「両閣僚は、台湾海峡の平和と安定の重要性について認識を共有した」と伝えている。

◆防衛省HP:3月16日「日米防衛相会談の概要」 https://www.mod.go.jp/j/approach/anpo/kyougi/2021/0316a_usa-j.html

◆防衛省HP:3月16日「日米安全保障協議委員会(2+2)共同発表(仮訳)」 https://www.mod.go.jp/j/approach/anpo/kyougi/2021/0316b_usa-j.html

 読売新聞(3月17日付)は、この日米防衛相会談では「沖縄県の尖閣諸島の有事に備え、自衛隊と米軍による共同演習を実施することで一致した。日本側は陸海空の自衛隊、米側は海兵隊と陸海空軍が参加する予定」であることも話し合われたと報じている。

 以上のことは、すでに本誌3月17日号でお伝えし、「台湾政府や関係者などには、防衛相会談で日米が台湾海峡の平和と安定の重要性について認識を共有し、2+2でも同様の認識を共有したことにホッとしているのではないだろうか」と述べたが、案の定、台湾の邱国正・国防部長は会談の翌日、メディアの取材に「台湾が強大な敵国からの圧力を受けても、日米が認識を共有していれば協力面で『プラスに働く』」(中央通信社)と歓迎のコメントを発表している。

 驚かされたのは、共同通信の報道だ。3月21日付の共同通信は、日米防衛相会談では尖閣有事ばかりでなく、「台湾有事に際しては緊密に連携する方針も確認した」と報じ、「中台双方の対話による平和解決を追求する立場の日本が、台湾有事を議題としたことが明らかになるのは異例」と伝えている。

 日米の防衛トップ同士が台湾有事には緊密に連携する方針を確認していたことに驚かされたが、これが同盟国の強みでもあろう。

 しかし、台湾との対話ルートを確立している米国はさて置き、台湾との対話ルートを持たない日本は「台湾有事」について、台湾とどのように意思疎通を図るのだろう。

 日本は台湾との関係を「非政府間の実務関係」としている。そのため、安全保障問題をはじめあらゆる日台間の問題を政府関係者が直接話し合ったり、情報を交換するなどの道を自ら閉ざしている。台湾と断交した1972年以降、いまに至るまで約50年間、中国の顔色をうかがい、自分の手足を自ら縛ってきた。

 民間機関の「公益財団法人日本台湾交流協会」の設立目的には「台湾在留邦人及び邦人旅行者の入域、滞在、子女教育等につき、各種の便宜を図ること、並びにわが国と台湾との間(以下、「日台間」という。)の民間の貿易及び経済、技術交流はじめその他の諸関係が支障なく維持、遂行されるよう必要な調査を行うとともに適切な措置を講ずること」(同協会定款)とある。

 つまり、民間の日本台湾交流協会は、「非政府間の実務関係」を担う駐台日本大使館のような活動をしている。しかし、どの国交国であっても日本大使館があるからと言って、すべての問題に大使館が対応するというのは無理がある。

 それは、今回の日米安全保障協議委員会(2+2)や防衛相会談をみても明らかなのだが、大使館を設けていても、首脳同士や政務三役が対応し、経産省など関係部局が対応するのが通常のあり方だ。ところが、台湾に対して日本は日本台湾交流協会に任せっきりで、実務関係を進めるべき立場にある副大臣や政務官、局長クラスさえ、台湾を訪問できない。

 ましてや、経済問題や農業問題ならまだしも、安全保障という国の防衛に関わることは、専門性が極めて高いことから民間機関が対応することはほぼ不可能といってよい。

 国交のある国でさえ大使館任せにしない、否、できないにもかかわらず、台湾についは日本台湾交流協会に任せっぱなしというのは、やはり変である。異常と言ってよい。

 日本は台湾について「我が国との間で緊密な経済関係と人的往来を有する重要なパートナー」(2016年5月20日の安倍晋三総理「答弁書」)と位置づけている。

 本誌では何度も触れてきたことだが、日本の「重要なパートナー」台湾との直接対話への道を切り拓くのが本会が提案している「日台関係基本法」の制定だ。国内法を定めるのに、他国への忖度は必要ない。政府には法治国家たる日本の毅然とした姿勢を示していただきたい。

—————————————————————————————–日米、台湾海峡有事へ懸念共有 防衛相会談で連携確認 【共同通信:2021年3月21日】

 バイデン米政権下で初めて行われた16日の日米防衛相による対面会談で、米中間の緊張が高まる台湾海峡で不測の事態が起きかねないとの懸念を共有していたことが20日、複数の日本政府関係者の話で分かった。台湾有事に際しては緊密に連携する方針も確認した。中台双方の対話による平和解決を追求する立場の日本が、台湾有事を議題としたことが明らかになるのは異例。日米の具体的な対処策が今後の課題になる。会談には岸信夫防衛相とオースティン国防長官が出席した。 中国の圧倒的な軍備増強により地域の軍事均衡が崩れている現状に対する、日米防衛当局の危機意識が浮き彫りになった形だ。

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