アジア安全保障会議で岸田首相も岸防衛省も台湾海峡の平和と安定に言及

 昨日、6月10日からシンガポールで開かれていたアジア安全保障会議(シャングリラ対話)が閉幕した。この会議は2002年から年1回開かれ、今年が19回目だった(2020年と2021年はコロナ禍のため中止)。

 開幕の6月10日、岸田文雄首相が基調講演を行い、南シナ海において、国連海洋法条約下の仲裁裁判の判断が守られていないことや、東シナ海でも、国際法に従わず、力を背景とした一方的な現状変更の試みが続いていることを指摘するとともに「この2つの海の間に位置する台湾海峡の平和と安定も、極めて重要です」と述べている。

 そして、ルールに基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化、安全保障の強化、「核兵器のない世界」に向けた現実的な取組の推進、国連安保理改革を始めとした国連の機能強化、経済安全保障など新しい分野での国際的な連携の強化という5本の柱からなる「平和のための岸田ビジョン」を発表した。

 岸信夫・防衛大臣も同会議に出席し、スピーチを行うとともに、日米韓、日米豪の三国会談やカナダ、シンガポール、フィジー、オーストラリア、ニュージーランドの防衛相と二国間会談を行い、最終日の12日には魏鳳和・中国国防部長との2国間会談を行った。

 この会談については多くの報道があるので、本誌では防衛省が発表している会談内容を紹介したい。

 岸防衛相は、ロシアによるウクライナ侵略は、国連憲章をはじめ国際法の明確な違反であり断じて認められないと指摘し、安保理常任理事国である中国が、国際社会の平和と安全の維持のため、責任ある役割を果たすよう求めた。また、中国とロシアによる我が国周辺での一連の両国の共同行動に対して重大な懸念を伝えるとともに、尖閣諸島周辺海域を含む東シナ海において依然として力を背景とした一方的な現状変更の試みが継続していることなどについて中国側に強く自制を求めている。

 その上で「台湾海峡の平和と安定は我が国のみならず、国際社会にとっても極めて重要」である旨を述べたという。そして「日中関係については懸念があるからこそ率直な意思疎通を図ることが必要である」とも述べて、中国側の同意を引き出し、聞くべきことは聞き、言うべきことは言うという自然体で臨んだ様子が察せられる。

◆防衛省:日中防衛相会談について[6月12日] https://www.mod.go.jp/j/approach/exchange/area/2022/pdf/20220612_chn-j.pdf

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