同委員会は上下両院の共和、民主両党議員が指名する12人の専門家の委員を中心に、米中経済関係が米国の安全保障に及ぼす影響を精査して政府と議会に政策勧告することを目的とし、米国の中国政策に直接的な影響を及ぼす諮問機関だからだ。
本誌でもお伝えしたように、昨年11月15日に発表した「2017年版年次報告書」においては、台湾をリムパック(環太平洋合同演習:Rim of the Pacific Exercise)など米主導の軍事演習に招待すべきと提言し、またリムパックばかりでなく、空軍軍事演習の「レッドフラッグ」やサイバー攻撃に対する国際演習「サイバーストーム」に台湾を招待すべきとも提案。また、今年3月にトランプ大統領が署名して成立した「台湾旅行法」を先取るように、相互訪問により地位の高い政府関係者を派遣すべきと提案していた。
すると、トランプ大統領が12月12日に署名して成立した「2018年国防授権法案」(NDAA)では、海軍の艦船を高雄など台湾の港に定期的に寄港させ、太平洋軍が台湾の入港や停泊の要請を受け入れることや、「レッドフラッグ」への台湾の招待、水中戦での攻撃能力向上を目指す台湾への技術支援などを含む、米国と台湾のさらなる関係強化をめざす7項目が盛り込まれていた。
下記に紹介する「大紀元時報」も、2016年版の年次報告書について「16年の年次報告書では、USCCは議会に対して、中国国有企業による米企業の買収を禁止するよう助言した。これに基づき、米議会は今年8月初め、対米外国投資委員会(CFIUS)の権限強化を盛り込んだ国防権限法案を可決した」と報じている。
米中経済安全保障調査委員会は11月14日、2018年版の年次報告書を議会に提出した。その詳しい内容を「大紀元時報」が伝えているので、下記に紹介したい。
今年度の年次報告でも台湾に言及し「中国当局は外交、経済、プロパガンダ工作を通じて、台湾政府への圧力を強化しているとした。米政府は台湾軍の関係者を軍事演習に招待するなど米台両軍の軍事連携を深めるとともに、国際社会における台湾の地位向上や台湾の自己防衛能力維持に協力すべきだと強調した」という。
トランプ大統領も連邦議会も、引き続き「国際社会における台湾の地位向上や台湾の自己防衛能力維持」を図るための政策を取り続けることになるだろう。
米超党派委員会、年次報告書を発表 「中国は国家安全上の脅威」【大紀元時報:2018年11月16日】
米議会の超党派諮問機関「米中経済安全保障調査委員会(USCC)」は14日、年次報告書を発表した。報告書は、中国当局の一帯一路経済圏構想、南シナ海での軍事化、ハイテク分野での政策、北朝鮮情勢への関与、香港・台湾などに言及し、中国当局による米国国家安全への脅威に強い懸念を示した。
米の共和党と民主党がUSCCのメンバーを選出するため、USCCの年次報告書は米の与野党の共通認識を反映する。米議会で共和党と民主党は対中強硬政策の継続で足並みをそろえる。
2000年設立されたUSCCは毎年、米中間の貿易、経済活動、国家安全保障などに関して報告書をまとめていて、米政府の対中政策に一定の影響を与えている。16年の年次報告書では、USCCは議会に対して、中国国有企業による米企業の買収を禁止するよう助言した。これに基づき、米議会は今年8月初め、対米外国投資委員会(CFIUS)の権限強化を盛り込んだ国防権限法案を可決した。
13日に公表された報告書では、中国通信大手の華為技術(ファーウェイ)と中興通訊(ZTE)を再び名指して批判した。2社はネットワーク設備生産の世界大手であるため、米国の次世代通信システム(5G)関連のインフラ整備に大きなリスクをもたらす。
また、身の回りのモノをインターネットにつなげる「IoT」技術においても、中国当局が世界的なリーダーとしての地位を狙っているとした。USCCの報告書では、中国側が5GとIoT技術を通じて、米政府と企業への情報収集と監視をさらに強化する狙いがあると警鐘を鳴らした。
「中国当局が重要な技術開発に支援を行っていることや、米国と中国のサプライチェーンの密接的な関係から、中国が米の経済・国家安全保障に非常に大きなリスクをもたらしている」と明記した。
北朝鮮に関して、報告書では中国当局が「対北朝鮮制裁を履行していない」とし、議会に対して、財務省は180日以内に中国の対北制裁の実施状況をまとめた報告書を提出するよう促した。
また、北朝鮮が有事になった場合、中国当局は北朝鮮からの難民流入を防ぐため、北朝鮮の一部の地域を占領し、難民収容施設を建設する可能性が高いと示した。
報告書は、中国当局の朝鮮半島における最大の関心事は、北朝鮮の非核化ではなく、米韓軍事同盟関係を弱体化させることにあるとの見解を示した。
南シナ海において、中国は人工島における軍事拠点化を加速し、同地域への自由な航行や米国の安保にリスクをもたらしたと指摘。南シナ海での軍事拠点化に関わった企業と個人を制裁するよう求めた。
中国の軍事戦略については「2035年までにインド洋や太平洋で米軍に対抗できる能力を備えるだろう」と警鐘を鳴らした。小笠原諸島からサイパン、グアムをつなぐ中国の軍事的防衛ライン「第2列島線」では中国軍は陸海空それぞれで米軍に対抗する能力がすでにあると述べた。
中国当局は中国企業と外資企業に対して党組織の設置を強要し、企業内における党の支配を強化しているとあらためて強調した。
米ラジオ・フリー・アジア(14日付)によると、報告書の発表記者会見で、USCCのロビン・グリーブランド(Robin Cleveland)委員長は、当局から補助金を受けている中国企業が競争の優位性を保っているため、米国企業が損失を被ったと批判した。トランプ米政権と議会に対して有効な対策を講じるよう要請した。
グリーブランド委員長は、「われわれは、議会が米通商代表部(USTR)に、より多くの権限を与えるよう要求した。世界貿易機関(WTO)は現在、中国の不公平な貿易慣行を制約できないため、USTRは他の関係国とともに中国に対して訴訟を起こすなど、法的措置を取るよう議会に働きかける」と語った。
また、USCCの報告書は過去1年間、中国の経済成長が一段と鈍化したと指摘。中国の商業銀行の不良債権規模は、2018年に約2兆元(約32兆6000億円)まで膨れ上がった。中国経済だけではなく、他国の経済活動にも悪影響を及ぼす可能性が高まっているとした。
中国当局が主導する「一帯一路」経済圏構想をめぐって、報告書では、当局が同政策を通じて国際社会への影響力を増強しようとしているとした。中国側は経済支援の受入国に対して、中国製品の購入と中国人労働者の大量雇用を要求している。一部の国の政府が、債務返済の代わりに港の運営権を中国側に渡し、中国当局は港を軍事基地に転用している、と報告書が警戒感をあらわにした。
また、USCCは、中国当局の影響力が拡大する香港に対しても懸念を強めた。
グリーブランド委員長は、「香港は世界金融センターとして、米国の国益にとって重要な役割を果たしてきた。中国当局が各分野において影響力を強めているため、香港はその特徴を失いつつある」と述べた。報告書は、議会に対して、香港を中国本土と同じく貿易制裁対象に指定し、ハイテク技術関連の輸出を規制するよう求めた。
台湾について、報告書は過去1年間、中国当局は外交、経済、プロパガンダ工作を通じて、台湾政府への圧力を強化しているとした。米政府は台湾軍の関係者を軍事演習に招待するなど米台両軍の軍事連携を深めるとともに、国際社会における台湾の地位向上や台湾の自己防衛能力維持に協力すべきだと強調した。
(翻訳編集・張哲)