また、米海軍の艦船を高雄など台湾の港に定期的に寄港させること、米太平洋軍が台湾の入港や停泊の要請を受け入れること、水中戦での攻撃能力向上を目指す台湾への技術支援などを定めた2018年版の「国防授権法」((NDAA:National Defense Authorization Act)は、すでに下院で7月14日に可決し、上院も9月18日に可決。あとはトランプ大統領の署名を待つのみとなっている。
さらに、今度は米議会諮問機関の「米中経済安全保障調査委員会」(USCC)が11月15日に公表した中国の動向に関する年次報告書で「台湾をリムパックなど米主導の軍事演習に招待すべき」と提言した。
リムパックとは、周知のように「環太平洋合同演習」(Rim of the Pacific Exercise)のことで、アメリカ海軍主催により1971年にカナダ、オーストラリア、ニュージーランドの海軍が参加して始められた、ハワイの周辺海域で実施される世界最大の国際海事演習だ。ほぼ隔年で実施している。
日本は1980年から招待されて参加しているが、招待国は海軍米国の同盟国に限定されているわけではない。チリ、コロンビア、ペルー、インド、インドネシア、マレーシア、タイ、フィリピン、トンガ、オランダ、ノルウェー、イギリス、韓国なども参加していて、2012年にはロシアが初めて参加し、中国も人員のみオブザーバー参加したという。
中国は2014年に正式に参加し2016年にも参加しているが、参加艦艇以外に情報収集艦を派遣して他国艦艇の諜報活動を行ったことで、参加国に警戒感を抱かせたと言われ、米国内にも参加国からも中国参加に異論が出ているそうだ。
台湾国際放送は、米中経済安全保障調査委員会の提言の趣旨ついて、この年次報告書は「台湾の防衛力強化をサポートし、台湾が地域、そして世界の安全保障のために貢献できる機会を拡大するとともに、中国が国際社会における台湾の活動空間を制限しようとする意図に対抗する」と記し、それゆえ、米国主導の軍事演習に台湾を招く、もしくは少なくともオブザーバーとして参加させるよう提言したとその背景を伝えている。中央通信社も報じているので下記に紹介したい。
—————————————————————————————–米政府は台湾を軍事演習に招くべき=米議会の諮問機関が提言【中央通信社:2017年11月16】
(ワシントン 16日 中央社)米議会の諮問機関、米中経済安全保障調査委員会(USCC)は、15日に公表した年次報告書で、米政府は台湾を最低でもオブザーバーとして環太平洋合同演習(リムパック)など米主導の軍事演習に招待するべきと提言した。これを受けて総統府の林鶴明報道官は同日、同委員会に感謝の意を表明するとともに、健全な台米関係は地域の平和と安定につながるとして、米側との密接な対話と協力に意欲を示した。
報告では、中国大陸の人民解放軍も参加したリムパックのほか、空戦軍事演習の「レッドフラッグ」、サイバー攻撃に対する国際演習「サイバーストーム」などにも台湾を招待することで、台湾の防衛力向上や、地域・国際安全に貢献する機会の拡大を後押しし、国際社会における台湾の活動の場を狭めようとする中国大陸の意図に対抗するべきとしている。
また、最近の両岸(台湾と中国大陸)関係については、蔡英文総統の就任後、双方の緊張が高まっていると指摘。蔡総統は現状維持を主張しているものの、北京当局は蔡総統が一つの中国原則を巡る「92年コンセンサス」を認めないことに不満を抱いており、経済や外交などの手段を用いて台湾に圧力をかけ続けると分析している。
USCCのキャロライン・バーソロミュー議長は中央社の記者に対し、中国大陸の台湾に対する圧力は「強まることはあっても弱まることはない」との見解を示した。
(葉素萍/編集:塚越西穂)