米中経済安全保障調査委員会が米台経済関係強化や駐台代表の格上げを提言

 12月1日、米国の連邦議会諮問機関の「米中経済安全保障調査委員会」(USCC:U.S.-China Economic and Security Review Commission)が年次報告書を発表し、最新の中国情勢や議会への提言を行った。

 産経新聞によると「報告書は、中国による台湾周辺での軍事行動の活発化や6月の香港国家安全維持法(国安法)の制定に関し『中国の指導部が既存の約束事を破って、自国の評価が下がることなどを気にせずに政治的目的を追求する決意を固めていることを実証した』と指摘し、米国が台湾と経済を中心に関係を緊密化させ、中国に対抗する必要があると提言した」と伝えている。

 提言には台湾支援策が盛り込まれ、中央通信社は「AIT台北事務所長の格上げに向けた法改正の検討▽台北の外交的孤立を防ぐ「台北法」の改正▽科学技術産業を最初の分野とし、台湾の主要産業との経済的連携を強化する機会を評価▽サプライチェーンと安全保障を強化する国際的取り組みに台湾を含めることを政府に促す」という4項目が提言されたと報じている。

 現在、駐台米国大使に相当する米国在台協会(AIT)事務所長は国務長官が選び、上院の承認を必要としていないが、一般の大使職と同様に大統領が指名し、上院が承認するよう求めたという。

 ちなみに、米国の中国や台湾に関する法案提出では共和党と民主党による超党派の提案がほとんどで、これは、この米中経済安全保障調査委員会の存在が大きい。

 米中経済安全保障調査委員会は2000年10月、上下両院の共和、民主両党議員が指名する12人の専門家の委員を中心に、米中経済関係が米国の安全保障に及ぼす影響を精査して政府と議会に政策勧告することを目的に設立されている。共和党と民主党がメンバーを選出するため、その年次報告書は米の与野党の共通認識を反映し、法案でも共通認識を反映することから超党派の法案となる。

 米国ならではの優れた議会諮問機関で、日本にも台湾と中国に関するこのような諮問機関が欲しいものだ。

 おそらく米国在台協会(AIT)事務所長の格上げや「台北法」の改正案などは、上院か下院のいずれかから法案として提出されるものと思われる。 —————————————————————————————–米議会の諮問機関、米台経済関係の強化や駐台代表の格上げを提言【中央通信社:2020年12月2日】

(ワシントン中央社)米議会の諮問機関、米中経済安全保障調査委員会(USCC)は1日公表した今年の年次報告書で、台湾の主要産業との連携強化や駐台米国大使に相当する米国在台協会(AIT)台北事務所長の格上げなどを議会に提言した。

 報告書では台湾に関し、2020年は両岸(台湾と中国)関係にとって極めて重要な年になったと言及。香港国家安全維持法の強行や台湾周辺での軍事行動増大を例に挙げ、政治的目標を達成するには既存の約束に背いて名声の犠牲を払う可能性も顧みない中国の指導者の決意を証明していると分析した。その上で、これらの出来事は、米政府は長年の対台湾政策を変更するかどうかについて議論する切迫性を明示していると指摘した。

 台湾に関して報告書で挙げられた議会への提言は、AIT台北事務所長の格上げに向けた法改正の検討▽台北の外交的孤立を防ぐ「台北法」の改正▽科学技術産業を最初の分野とし、台湾の主要産業との経済的連携を強化する機会を評価▽サプライチェーンと安全保障を強化する国際的取り組みに台湾を含めることを政府に促すーの4項目。

 AIT台北事務所長に関し、現在は米国務長官が任命し、上院の承認は必要ないとされている。一方、米国が各国に派遣する大使は米大統領が指名し、上院の承認を得る必要がある。報告書は、AIT台北事務所長を米大統領の指名と上院の承認を経て就任する役職とするための法改正を検討するよう議会に促した。

 同委は米中間の2国間貿易や経済関係が国家安全保障に与える影響を監視、調査する役割を担っている。

(徐薇?/編集:名切千絵)

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