台湾が米国海軍主催のリムパックへ参加意向を表明

 リムパックとは「環太平洋合同演習」(Rim of the Pacific Exercise)のことで、アメリカ海軍主催により1971年にカナダ、オーストラリア、ニュージーランドの海軍が参加して始められ、西暦の偶数年にハワイの周辺海域で実施される世界最大の多国間海軍軍事演習だ。

 偶数年の今年2020年はこのリムパックが実施される年で、8月17〜31日に開催を予定しているという。ここに台湾が参加を目指して働き掛けていると中央通信社(下記)が報じている。

 リムパックへの参加は米国海軍からの招待による。招待国は米国の同盟国だけでなく非同盟国も含まれ、これまでチリ、コロンビア、ペルー、インド、インドネシア、マレーシア、タイ、フィリピン、トンガ、オランダ、ノルウェー、イギリス、韓国などが参加している。もちろん、日本も1980年から招待されて参加している。

 ロシアが初めて参加した2012年に、中国は人員のみオブザーバー参加し、2014年からは正式参加となり、2016年にも参加している。

 しかし、参加艦艇以外に情報収集艦も派遣して他国艦艇の情報収集活動を行ったことで、他の参加国に警戒感を抱かせた結果となり、米国内だけでなく参加国からも中国参加に異論が出ていた。

 これが直接の原因かどうかは定かではないが、米国防総省はリムパック開催年の2018年5月23日、中国に対する参加招請を撤回すると表明した。

 それに先立ち、本会は2018年3月、台湾のリムパック参加には中国が難色を示すことを見越し、リムパックを実施しない西暦の奇数年に、国際・地域テロ、海賊、捜索・救難、大規模自然災害などいわゆる「非伝統的」海洋安全保障における訓練の実施を求める政策提言「台湾を日米主催の海洋安全保障訓練に参加させよ」を発表している。

 しかし、政策提言発表から2ヵ月ほどで米国は中国の参加招請を撤回したことで、台湾がリムパックに招待される可能性が浮上してきていた。

 実は、米国の連邦議会に大きな影響力を持つ諮問機関「米中経済安全保障調査委員会」(USCC:U.S.-China Economic and Security Review Commission)が2017年の年次報告書ですでに台湾をリムパックなど米国が主導する軍事演習に招待すべきと提言していた。

 これは、2017年11月15日に発表された年次報告書で、この中で、リムパックのほか、空軍軍事演習の「レッドフラッグ」やサイバー攻撃に対する国際演習「サイバーストーム」に台湾を招待すべきとも提言していた。

 翌2018年11月の年次報告書では、中国通信大手の華為技術(ファーウェイ)と中興通訊(ZTE)が米国の次世代通信システム(5G)関連のインフラ整備に大きなリスクをもたらすと指摘しつつ、南シナ海において中国は、人工島における軍事拠点化を加速し、同地域への自由な航行や米国の安保にリスクをもたらしたため、南シナ海での軍事拠点化に関わった企業と個人を制裁するよう要求している。

 台湾に関しても、中国は外交、経済、プロパガンダ工作を通じて台湾政府への圧力を強化しているとも指摘し、米政府は台湾軍の関係者を軍事演習に招待するなど米台両軍の軍事連携を深めるとともに、国際社会における台湾の地位向上や台湾の自己防衛能力維持に協力すべきだと提言していた。

 この米中経済安全保障調査委員会は、上下両院の共和、民主両党議員が指名する12人の専門家の委員を中心に、米中経済関係が米国の安全保障に及ぼす影響を精査して政府と議会に政策勧告することを目的として2000年10月に設立されている。共和党と民主党がメンバーを選出するため、その年次報告書は米の与野党の共通認識を反映していると言われる。

 つまり、米中経済安全保障調査委員会の台湾をリムパックに招待すべきという提言は、米議会の与野党の共通認識を反映していると考えられることから、台湾が今年のリムパックに招待される可能性はかなり高いと言えよう。

 ただし、米国海軍でも原子力空母「セオドア・ルーズベルト」で600人ほどの武漢肺炎の感染者が出ており、フランス海軍の空母「シャルル・ドゴール」と随伴艦でも1000人以上の感染者が出ているため、リムパックが実施されるかどうかは未定だという。

 台湾にとっての好機到来にもかかわらず、中国発症の武漢肺炎に阻止される可能性もあり、今後の早急な収束を願いつつ、リムパックが実施されるか注目してゆきたい。

◆日本李登輝友の会:2018政策提言「台湾を日米主催の海洋安全保障訓練に参加させよ」 http://www.ritouki.jp/index.php/info/20180423/

—————————————————————————————–台湾、環太平洋合同演習への「参加目指す」=国防相【中央通信社:2020年5月4日】https://japan.cna.com.tw/news/apol/202005040004.aspx写真:4日の立法院(国会)外交および国防委員会で答弁に立つ厳徳発国防部長(左)

 (台北中央社)厳徳発国防部長(国防相)は4日、米海軍主催で実施される合同軍事演習「環太平洋合同演習」(リムパック)への参加を目指し働き掛けていると明らかにした。ただ、演習が予定通り実施されるかは未定だといい、回答もまだ得られていないとした。

 立法院(国会)外交および国防委員会の答弁で述べた。リムパックは米国の同盟国など複数国の軍が参加する合同演習。新型コロナウイルスの感染が世界的に広がっているが、今年は8月17〜31日の開催が予定されている。

(游凱翔/編集:楊千慧)

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