米国の国防権限法(NDAA:National Defense Authorization Act)は国防授権法とも呼ばれ、米国の国防プログラムの承認と予算上限額を決定するもっとも重要な法律の一つで、毎年、会計年度(10月1日〜9月30日)ごとに制定している。
米国のバイデン米大統領は12月27日、2022会計年度(21年10月1日〜22年9月30日)の国防予算の大枠を決める国防権限法案に署名して成立した。国防予算総額は前年度比約5%増の約7780億ドル(約89兆円)規模だという。
来年(2022年)の環太平洋合同演習(リムパック)への台湾の招待に関する提言や、台湾の非対称防衛戦略強化に対する支援計画の制定への呼び掛けなども盛り込まれた。
ロイター通信は「ロシアや中国を中心とした地政学的脅威への対応策に加え、軍人給与の2.7%引き上げや航空機および海軍艦艇の購入額増大などが盛り込まれている。また、ウクライナ軍支援に3億ドル、欧州防衛イニシアチブに40億ドル、バルト海の安全保障協力に1億5000万ドルを拠出する」と伝え、中央通信社は「太平洋抑止イニシアチブへの71億ドル拠出のほか、台湾防衛に向けた議会支援表明や中国の新疆ウイグル自治区の強制労働で生産された製品を国防総省が調達することを禁止する項目が盛り込まれた」と伝えている。
12月7日に下院は賛成363票、反対70票、15日には上院で賛成88票、反対11票といずれも賛成多数で可決していた。
連邦議会諮問機関の「米中経済安全保障調査委員会」はトランプ政権時代の2017年11月15日に発表した年次報告書において、台湾をリムパック(環太平洋合同演習:Rim of the Pacific Exercise)や空軍軍事演習の「レッドフラッグ」、サイバー攻撃に対する国際演習「サイバーストーム」など米国が主導する軍事演習に招待すべきと提言していた。リムパックを主催する米海軍から台湾が招待されれば初の参加となる。
ちなみに、リムパックは米海軍主催により1971年にカナダ、オーストラリア、ニュージーランドの海軍が参加して始められ、ハワイの周辺海域で実施される世界最大の多国間海軍軍事演習で、西暦の偶数年に実施している。2018年は26カ国から、艦艇47隻、潜水艦5隻、航空機約200機、人員約2万5,000人が参加していた。
日本は1980年から招待されて参加しており、招待国は米国の同盟国だけでなく非同盟国も含まれ、チリ、コロンビア、ペルー、インド、インドネシア、マレーシア、タイ、フィリピン、トンガ、オランダ、ノルウェー、イギリス、韓国などが参加している。2012年にはロシアが初めて参加し、中国も人員のみオブザーバー参加した。
中国は2014年から正式参加し、2016年にも参加している。しかし、参加艦艇以外に情報収集艦も派遣して他国艦艇の情報収集活動を行ったことで、他の参加国に警戒感を抱かせ、米国内だけでなく参加国からも中国参加に異論が出ていた。米海軍は2018年5月23日に中国に対する参加招請を撤回すると表明、それ以降、中国は招待されていない。
台湾への招待は2020年にも取り沙汰されたが、コロナ禍により規模が大幅縮小されたため実現しなかった。日本は「リムパック2022」にはぜひ台湾が招待されるよう、日米同盟の一方として米国側に強く働きかけるべきだ。
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