国防授権法は国防権限法とも呼ばれ、米国の国防プログラムの承認と予算上限額を決定するもっとも重要な法律の一つで、毎年、下院と上院における可決を経、大統領の署名をもって成立させている。
昨年の「2017国防授権法」は、米台間の高級将官と国防にかかわる高官以上の交流プログラム実行を含む内容で、2016年12月23日、オバマ大統領の署名をもって成立している。
「2018国防授権法」は、米海軍の艦船を高雄など台湾の港に定期的に寄港させ、米太平洋軍が台湾の入港や停泊の要請を受け入れること、「レッドフラッグ」と呼ばれるアメリカ空軍やアメリカの同盟国・友好国の空軍が参加する高度な空軍演習への台湾の招待、水中戦での攻撃能力向上を目指す台湾への技術支援などを含む、米国と台湾のさらなる関係強化をめざす7項目の国会意見が盛り込まれているという。
7月14日に下院で可決し、上院は9月18日に賛成89、反対8の圧倒的な大差で可決していた。
ホワイトハウスも12月12日、トランプ大統領が国防授権法に署名したことを速報で伝えている。下記にその記事と、中央通信社の記事をご紹介したい。
なお、「台湾国際放送」によれば、台湾政府も13日に早速「台湾はアメリカが長期的に台湾に対して各分野で支持を続けてくれていることに感謝する。それには、アメリカ政府の行政部門が台湾関係法に基づいて台湾に対して行っている6項目の約束、台湾が必要とする武器の継続的な提供、台湾の自己防衛能力向上への協力が含まれる。さらに、アメリカ議会は台湾の防衛能力と双方の安全関係を強化するため、各種の法律の制定を続けている」と感謝の意を表している。
◆WTAS: Support For President Trump’s Signing Of The National Defense Authorization Act (NDAA) https://www.whitehouse.gov/the-press-office/2017/12/12/wtas-support-president-trumps-signing-national-defense-authorization-act
—————————————————————————————–米国防権限法成立 台米の軍艦相互訪問実施には懐疑的な見方も【中央通信社:2017年12月13日】
(台北 13日 中央社)米国の2018会計年度の国防権限法が現地時間12日、トランプ大統領の署名を経て成立した。台湾との防衛関係強化を定めた第1259条には、米台海軍軍艦の相互訪問の妥当性や実施可能性を検討することなどが盛り込まれている。トランプ氏は同日発表した声明で同条文に触れ、外国主権に関する条文の承認決定は、外政における唯一の代表である大統領が決定するなどと言及した。これを受け、台米関係に詳しい米国の専門家は、トランプ氏が軍艦相互訪問を実現させないのではとする見解を示している。
同法の第1259条には米議会の意見として、軍艦相互訪問のほか、米空軍演習「レッドフラッグ」への台湾の招へいなど7項目が示された。
トランプ氏は声明で、第1259条を含む11の条文に言及。政権はこれらの条文の処理において、軍の最高司令官および外政における唯一の国家代表として大統領が有する独占的な憲法上の権限に相反しないよう扱った上で、どのように条文を外国に適用し、外交を行うか決定すると明示した。
米国の対台湾窓口機関、米国在台協会(AIT)の元理事長、リチャード・ブッシュ氏は中央社の取材に対し、軍艦相互訪問は同法において最も敏感な部分だと指摘。この項目は議会の意見であり、トランプ氏に対する強制力はないと述べた。一方、米シンクタンク、ヘリテージ財団アジア研究センターのウォルター・ローマン氏は、トランプ氏の声明が議会の意見を受け入れないことを意味しているとは限らないと説明。「大統領として、トランプ氏が決める」と言っているだけで、いずれの大統領もこのようにするだろうとし、重要なのは議会の意見が聞き入れられることだとの考えを示した。
台米の軍艦相互訪問をめぐっては、中国大陸の駐米公使・李克新氏が「米国の軍艦が台湾の高雄港に寄港する日には、(中国大陸は)武力をもって台湾に攻め入る」と発言するなど、中国大陸側は強い姿勢で反対を表明している。
総統府の黄重諺報道官は13日、同法に台米の防衛関係強化が含まれたことについて、台湾の各分野に対する米国の長年の支援に感謝を示し、引き続き米国と堅実な協力関係を発展させていくと述べた。頼清徳行政院長(首相)は、中国大陸の脅威を前に、台湾には国際社会からの支持が必要であり、米国による支援は「台湾にとっては良いこと」だと語った。
(鄭崇生、廖禹揚、葉素萍/編集:名切千絵)