米国連邦議会の下院と上院が「2021会計年度国防権限法案」を可決

 米国が毎年定める「国防権限法」(NDAA:National Defense Authorization Act)は国防授権法とも呼ばれ、米国の国防プログラムの承認と予算上限額を決定するもっとも重要な法律の一つ。

 連邦議会の下院は7月21日、総額7400億ドルとなる2021会計年度(2020年10月1日〜2021年9月30日)の国防権限法案を賛成295票、反対125票で可決。ロイター通信は「法案には、南北戦争で奴隷制を支持した南軍の将官らの名前を米軍基地名から削除する改正案が含まれている」と報じている。

 7月23日には上院も2021会計年度国防権限法案を賛成86票、反対14票で可決。上院案にも南軍由来の基地名を変更する改正案が盛り込まれているという。

 中央通信社は、上院案では「リムパックやフォートアーウィン(カリフォルニア州)国立訓練センター(NTC)における合同演習、訓練などに台湾を招待することや、台湾旅行法に基づいて双方の軍高官の交流や軍事医療、人道支援における協力を拡大させること」などを提言するとともに、「米海軍の病院船『コンフォート』と『マーシー』を台湾に寄港し、任務に当たらせるよう国防総省に求める提言」も盛られていると伝えている。

 上院案では2019会計年度でも、台湾の軍事演習に米軍が参加することを推進することや米軍訓練への台湾の参加を促進すべきとされ、米軍病院船の台湾寄航も検討すべきだと提案されていた。

 下院案と上院案の内容はすべてにおいて一致しているわけではないので、今後、両院協議会で調整して一本化し、同じ案を両院で可決してから大統領に送られる。

 両院で同じ案が全会一致で可決されると、連邦議会開催中は大統領の署名がなくても法案は10日を過ぎた時点で自然成立する。ただし、連邦議会の閉会中に大統領が署名しなければ法案は廃案となる。

 ちなみに、トランプ政権になってから、2018年3月16日に成立した「台湾旅行法」(Taiwan Travel Act)や2018年12月31日に成立の「アジア再保証促進法」(ARIA:Asia Reassurance Initiative Act)、2019年10月27日に成立の「香港人権・民主主義法」(Hong Kong Human Rights and Democracy Act)、2020年3月26日に成立の「台北法」こと「台湾同盟国際保護強化イニシアチブ法」(TAIPEI Act:Taiwan Allies International Protection and Enhancement Initiative Act)などは、上下両院が全会一致で可決しており、自然成立する法案が大半だったにもかかわらず、トランプ大統領は署名することで成立させている。

—————————————————————————————–米上院が可決した国防権限法 「台湾をリムパックに招待」と提言【中央通信社:2020年7月24日】

 (ワシントン中央社)米上院は現地時間23日、2021会計年度の国防予算の大枠を定める国防権限法案を賛成86、反対14で可決した。同法案では、中国が台湾を抑え込み、既成事実とするのを拒絶する能力を備えるよう米軍に求めているほか、米海軍主催の多国間海上訓練「環太平洋合同演習」(リムパック)に台湾を招待するべきとする提言が盛り込まれている。

 上院軍事委員会が6月に公表した草案によれば、台湾関係法と台湾に対する米政府の「6つの保証」を米台関係の基礎とすることが確認された。このうち台湾関係法については、双方のパートナーシップ強化の分野は制限されておらず、同法の実施は政治や安全保障、経済の動向、情勢などによって変化するべきとの見解が示された。

 その上で、台湾関係法には、非平和的な手段で台湾の前途を決定するいかなる企ても西太平洋地域の平和と安定に対する脅威と見なされることが明記されていると指摘。度重なる軍事演習など、台湾に対する脅迫や侵略的な行為を強める中国への懸念と、台湾の国防力強化や非対称戦力の確保を支持する米国の姿勢が示された。

 台湾を支持する具体案として、リムパックやフォートアーウィン(カリフォルニア州)国立訓練センター(NTC)における合同演習、訓練などに台湾を招待することや、台湾旅行法に基づいて双方の軍高官の交流や軍事医療、人道支援における協力を拡大させることなどが提言された。

 このほか、米海軍の病院船「コンフォート」と「マーシー」を台湾に寄港し、任務に当たらせるよう国防総省に求める提言もなされた。新型コロナウイルスの検査やワクチン・薬物の研究開発を含むさまざまな米台協力を続行するためとしている。

 下院でも21日、国防権限法案が可決された。上院版とは内容が異なるため、今後上下院ですり合わせが行われ、一本化された法案が両院で可決された後、大統領の署名を経て成立する。

(江今葉/編集:塚越西穂)

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