沈伯洋・立法委員「勇敢な台湾人として決して退くことはない」

中国政府は高市早苗・首相の台湾有事を巡る国会答弁に「内政干渉だ」と強く反発し、さまざまな対日揺さぶりカードを繰り出している。

薛剣・駐大阪総領事によるSNSの「汚い首」投稿にはじまり、日本への渡航自粛の呼びかけ、日本映画の公開延期、日本産水産物の輸入再開手続きの見合わせという事実上の輸入停止措置、沖縄県の帰属を疑問視する論評の掲載、金井正彰・外務省アジア大洋州局長と中国外務省の劉勁松・アジア局長との会談での、両手をポケットに突っ込んだ劉局長に金井局長が頭を下げているように見える画像の公表など、異常とも言うべき反応を中国側は示している。

高市首相発言への意趣返しにしては度が過ぎていると思われるが、これらはすべて、あわよくば高市首相が発言を撤回することを狙った、日本を委縮させようとする中国の「認知戦」の一環とみていいだろう。

日本国内のリベラル勢力が同調しているところを見ると、中国による今回の「認知戦」は一定程度の効果は上げているように見える。

とは言え、高市内閣の支持率は下がらず、高市首相の人気にも陰りは見えない。

日本国内の反発も強い。

中国国内では反日デモも起こっていない。

このような脅しは中国の常套手段とも言えるが、台湾は何度となく同じような脅しを受けてきている。

中でも、中国から頑固な台湾独立分子として「国家分裂罪」で立件されて国際指名手配の対象となり、国外に出たら逮捕もありうると示唆されていた沈伯洋・立法委員(民進党)の言動は目を引いた。

沈伯洋・立法委員は10月12日、ドイツ連邦議会の人権・人道支援委員会で開かれた民主主義と人権に脅威を与える独裁国家から、偽情報を議題にした公聴会に招かれて出席し、台湾の経験を紹介したという。

「予定では2ラウンドの質疑応答だったが、3ラウンドに拡大されるほど活発な討論だった」そうだ。

下記に紹介する台湾国際放送の記事は、公聴会に臨むにあたって、沈立法委員は「中国は私が出国すれば逮捕されると脅していたが、今私はドイツ連邦議会の前に立っている。

台湾の立法委員として自由と民主主義のために証言する」と語り、「中国は脅しで台湾人を沈黙させようとしているが、勇敢な台湾人として決して退くことはない」と述べたと報じている。

その言やよし。

日本の国会議員のみならず日本人として、沈伯洋・立法委員の毅然とした姿勢に学ぶことは多い。


中国に指名手配された沈伯洋・議員:台湾人は決して中国の脅迫に退かない【台湾国際放送:2025年11月13日】https://www.rti.org.tw/jp/news?uid=3&pid=175316

中国の重慶公安当局は10月28日、台湾の与党・民進党の沈伯洋・立法委員(国会議員)を「頑固な台湾独立分子」として立件し、捜査を開始しました。

その後、中国の国営メディア、中国中央テレビ(CCTV)は11月9日午前、「台湾独立派の沈伯洋を暴く」と題する映像を公開し、全世界での逮捕を示唆する脅迫的な内容を報じました。

沈伯洋氏は12日夜、メディアのチャットグループを通じて動画を発表し、自身がドイツ連邦議会で開かれた「独裁国家による偽情報が民主主義と人権にもたらす脅威」に関する公聴会に招かれたことを明らかにしました。

沈氏は「中国は私が出国すれば逮捕されると脅していたが、今私はドイツ連邦議会の前に立っている。

台湾の立法委員として自由と民主主義のために証言する」と語り、「中国は脅しで台湾人を沈黙させようとしているが、勇敢な台湾人として決して退くことはない」と強調しました。

沈氏はさらに、「私は台湾の民主主義だけでなく、世界の自由と民主主義のために戦っている」と述べ、「This is Taiwan, this is freedom, and we will never back down(これが台湾、これが自由だ。

私たちは決して引き下がらない)」と締めくくりました。

公聴会後、沈氏はベルリンで取材に応じ、「会議では主にヨーロッパにおける偽情報と浸透の事例について議論が行われ、私は専門家証人および立法委員として台湾の経験を紹介した」と説明しました。

この公聴会はドイツ連邦議会の主要政党が共催し、各国の専門家を招いて、独裁国家がどのように偽情報を用いて民主制度を破壊しているかを討議したものです。

沈氏によると、ハンガリーやロシアがヨーロッパで偽情報を拡散した事例に加え、中国が台湾およびヨーロッパに及ぼしている影響など、SNSでの世論操作や浸透工作についても幅広く議論され、「予定では2ラウンドの質疑応答だったが、3ラウンドに拡大されるほど活発な討論だった」と述べました。

出国前に政府部門と協議したかとの問いに対し、沈氏は「国家安全会議と外交部に連絡、報告していた」と明かし、「安全上の懸念から出国を控えるよう助言されたが、もしそれで退くなら、この戦いを続ける意味がない」と話しました。

沈氏は「台湾は中国の脅威を恐れるべきではない。

私たちは恐れず、世界の民主主義と自由の陣営と共に立って権威主義国家の侵害に対抗しなければならない」と強調しました。

中国から国際指名手配の対象とされているにもかかわらず、沈氏は今回のドイツ入国について「すべて正常で、異常や特別な警護はなかった」と説明。

中国側は彼の出国を予期しておらず、「いつ再び出国するのか」と慌てて情報を追っているという話もあると述べました。

また、沈氏に対して重慶公安局が立件捜査を行ったのに続き、中国・福建省泉州市公安局も13日、台湾のネット配信者「八炯」(本名:温子渝)と「●南狼」(本名:陳柏源)に関する懸賞通告を発表しました。

(●=門構えの中に虫)

中国の国営1メディア、中国中央テレビ(CCTV)の報道によりますと、2人は今年3月26日に中国で台湾政策を担当する中国国務院台湾事務弁公室(国台弁)から「台湾独立派の手先」として名指しされており、通告には写真、氏名、台湾の身分証番号が記載されています。

さらに、中国刑法第103条に基づき「国家分裂扇動罪」に該当すると主張。

逃亡者をかくまう者への法的責任追及や、通報者への報復行為に対しては厳罰を科すと警告しています。

沈伯洋氏を「国家分裂罪」で立件し、世界的な逮捕を示唆したことについて、台湾の対中国政策を担う、大陸委員会(陸委会)の邱垂正・主任委員は12日の取材で、「これは典型的な越境弾圧であり、台湾に対する威嚇と分断工作だ」と非難し、「与野党を超えて全国民が団結し、中国共産党の思惑を挫かなければならない」と呼びかけました。

(編集:呂学臨/王淑卿/本村大資)


※この記事はメルマガ「日台共栄」のバックナンバーです。


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