お)氏は4月30日に着任、5月10日に着任レセプションが台北市内の国賓大飯店で開催され
た。
中国語学習で台湾に派遣されたことがある樽井代表はいわゆる「チャイナスクール」の
出身で、このレセプションの挨拶で「駐台代表に就任し、責任はきわめて大きなものであ
ると強く感じている。私は外務省に40数年間奉職しており、初めて海外に派遣されたの
が、1972年における台湾であり、当時台湾の人々から温かく迎えられたことが最も深く印
象に残っている。残念なことは、その後に日台関係は変化し、私は香港に転任し、中国大
陸の北京にも行き中国語も勉強した」と述べ、また「このたび再び台湾に派遣されたこと
は嬉しい限りであり、良好な日台関係を全力もって発展させていく所存である」(5月11日
付「台湾週報」)と抱負を述べたと伝えられている。
また、樽井代表は5月16日、馬英九総統と総統府で初めて会見した際、馬総統は樽井代表
の在任中に日台間で自由貿易協定(FTA)を締結したいと強調したと報じられている。
一方、台北駐日経済文化代表処の新代表(駐日台湾大使に相当)の沈斯淳(しん・しじ
ゅん)氏は5月30日に着任予定で、今朝の産経新聞がその横顔を伝えているので下記にご紹
介したい。
ちなみに、樽井代表が馬総統と会見したように、沈斯淳代表が日本の野田佳彦首相など
政府関係者と着任挨拶のため会見できるかというと、できない。そもそも台湾の駐日外交
官は日本政府と接触できない。
これは、林建良氏が指摘するように「台湾の駐日外交官が日本の政府機関へ接触するこ
とは、日本側の内規により、禁じられているも同然」(日本版台湾関係法の制定を急げ)
だからだ。日台関係の実態は、両代表の就任状況をみても変則的な関係にあることが分か
る。
台北駐日経済文化代表処代表に着任する沈斯淳氏
【産経新聞:平成24(2012)年5月22日】
http://sankei.jp.msn.com/world/news/120522/chn12052201260000-n1.htm
「今月30日の台北駐日経済文化代表処代表(駐日大使に相当)着任に向けて、スマート
フォンで日本の新聞を読むなど、常に勉強しています」
20日に行われた台湾の馬英九総統の2期目の就任式典を前に、日本語を交えつつ朗らか
に語った。
日本には旅行で数回訪れた程度。しかし、現職の外交部常務次長(外務次官)として、
アジア太平洋地域を担当。昨年、日台間で締結した民間投資取り決めや、オープンスカイ
取り決めなど、対日関係を飛躍的に発展させる業務に携わったという自負心は強い。
今年2月、次期駐日代表に決定した際、「日本語に難あり」と書き立てた台湾メディアの
前で、「半年後には日本語で演説してみせる」と宣言した。
言葉通り特訓を積み、先月下旬、外交部で就任に向けた宣誓式に臨んだ際、楊進添外交
部長(外相)から「すでに中級レベル」とお墨付きをもらっている。
実務に徹する外務官僚という印象だが、北宋の文人、蘇東坡(そとうは)の「赤壁賦
(せきへきのふ)」を愛し、「日本の武将では織田信長が好き」とも。
馬総統からは、日台自由貿易協定(FTA)締結や、2014年に東京国立博物館での開催
を目指す台北の故宮博物院の日本展開催成功などに期待が寄せられている。
東日本大震災後の対日支援や交流を通じ、日台関係が緊密な時期だけに「全力で努力し
ます。大きなプレッシャーだが、仕事とはそういうもの」と淡々。
尖閣問題では、対日関係を重視しつつも主権を主張するが、中国と連携はしないとする
「従来の外交部方針に従う」という。
夫人を帯同。日本では「在外公館時代に知り合った日本の友人らと会うのが楽しみ」と
笑った。(台北 吉村剛史)
◇
沈斯淳(しん・しじゅん)氏 台湾大学政治学部卒。駐バンクーバー弁事処長(総領事に
相当)、駐カナダ副代表や駐チェコ代表、外交部主任秘書などを歴任。58歳。家族は夫人
と1男1女。台南出身。