記事を執筆している矢板明夫記者はそのコンセプトを次のように説明している。
<親日米派と呼ばれる民進党陣営と、親中派の中国国民党陣営の攻防が激しさを増している。社会の分断も同時に進んでいる。台湾で生きる人々は何を考え、台湾はどこに向かうのか。市民の声を聞きながら考えてみたい。>
1回目は、日本留学で台湾人アイデンティティに目覚めた郭瑞氏は「台湾にいたときはあまり意識しなかったが、日本で生活してみると、周りに中国人が大勢いたため、『自分は台湾人』と強く感じるようになった。生活習慣も考え方も違うのに、中国人として扱われることが多く悔しい思いをした」という。
折しもひまわり学生運動が台湾で起き、居ても立ってもいられず、仲間と一緒に「関西地方台湾留学生会」を立ち上げ、台湾を応援する活動を始めたという。
海外にいると、中国政府がいかに台湾を矮小化し、外交的、経済的に台湾をのみ込もうとしているかがよく分かるという。
2回目は、日本ではほとんど報道されることのない台湾基進党を取り上げ、主席の陳奕齊氏に創設の狙いを紹介している。
25歳の郭瑞氏と47歳の陳奕齊氏の「台湾を台湾人の手でよくしたい」という思いは同じだ。台湾人アイデンティティはもちろん愛国心さえ感じさせる発言は、明日の台湾をになう気概を感じさせる。下記に郭瑞氏と陳奕齊氏を取り上げた記事を併せてご紹介したい。
◆【台湾に生きる】「今年の総統選は負けられない」【1月5日:産経新聞】 https://www.sankei.com/world/news/200105/wor2001050020-n1.html
◆台湾基進党 https://statebuilding.tw/
—————————————————————————————–二つ目の本土派政党を目指す」 台湾基進党主席 陳氏【産経新聞:2019年1月6日】https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200106-00000573-san-cn
2019年12月21日。台湾南部・高雄市で韓国瑜(かん・こくゆ)氏の市長罷免を求める大規模なデモが行われた。約50万人(主催者発表)が参加して「光復高雄」(高雄を取り戻せ)とのスローガンを掲げて行進した。韓氏は今月11日の総統選で最大野党・中国国民党が擁立した候補者だ。デモ隊は韓氏の親中姿勢などを批判した。
ただ、デモを主導したのは与党の民主進歩党ではない。「台湾基進党」という聞き慣れない政党だ。16年に創設し、中国との対決姿勢を明確にしている。ネットを駆使し、主に若者の間で支持を広げてきた。
大手メディアの世論調査では基進党の支持率は5%未満だが、台湾学生連合会が19年12月に実施した大学生、高校生による模擬投票(約1万1千人が参加)では、基進党の支持率は24・1%。同じく台湾本土派の政党、時代力量の26・9%や民進党の25・8%と並び、3強の一角を占めた。中国大陸由来の国民党の支持はわずか3%だった。
基進党主席の陳奕齊(ちん・えきさい)氏(47)は「70年前に中国から渡ってきた国民党が台湾政治の主役を演じる時代は終わりつつある。今の高校生たちが社会の担い手になった頃、民進党と基進党という2つの台湾派政党による政権交代ができる体制にしたい」と語った。
「そもそも中国との統一を主張する国民党の存在を認めるべきではない」というのが陳氏の考えだ。「台湾の主権を否定している北京の中国共産党政権と手を組もうしていることは、ほかの国ならば外患誘致罪にあたる」と強調した。
陳氏は大学卒業後、香港で約2年間、勤務した経験がある。1997年の香港返還直後で、共産党の勢力が香港の政治、経済、マスコミに急速に浸透した様子を目の当たりにした。「家をむしばむシロアリのようだった」と振り返る。
その後、オランダの大学院に進んだが、2008年に対中融和政策をとる国民党の馬英九政権が発足し、中国が台湾にも浸透し始めたことに気づいたという。
「親中勢力を排除しなければ台湾が危ない」と強い懸念を抱いた陳氏は、台湾に戻って政治活動を始めた。政治評論家としてテレビなどに出演。明快な主張が人気を博し、民進党から出馬の誘いもあったが、「台湾には2つ目の本土派政党が必要だ」と考え、基進党を創設した。
「台湾の基本を固めて前進する」と党名の意味を説明した。総統選と同時に行われる立法委員(国会議員に総統)選挙で、陳氏自身も比例区2位で立候補している。「いまは当落線上と報じられている。当選すれば台湾の政治が変わる」と力を込めた。
(台北 矢板明夫 写真も)