【産経新聞「主張」:2019年12月16日】
来月11日投開票の台湾総統選が告示された。台湾が成熟した民主主義を守れるかどうかの正念場であり、東アジアの平和と安定に直接かかわる重要な選挙である。
台湾への統一圧力を強める中国が、総統選に介入することへの懸念が強まっている。台湾の民意が公正に反映されるよう日本と国際社会は総統選の在り方と行方を注視する必要がある。
再選を目指す蔡英文総統と対抗馬の野党・国民党の韓国瑜高尾市長との争いは、蔡氏のリードで推移している。蔡氏の追い風となったのは、6月以降の香港情勢の混乱である。
香港の「一国二制度」の無力化を図る中国に抗議する若者らを警官隊が弾圧する光景に、「今日の香港は明日の台湾」との危機感が広がっている。
昨年11月の統一地方選で蔡政権の与党・民主進歩党が大敗した。今年1月、中国の習近平国家主席が演説で「一国二制度」を台湾に迫ったことに蔡氏は断固拒否の態度を示した。中国の香港介入を不安視する多くの人が、蔡氏の毅然(きぜん)とした対中姿勢を評価する。
一時は「韓流」と称されるほどの人気を博した韓氏は、香港情勢に距離を置くなど、中国に融和的な言動がマイナスに響いている。韓氏は対中国政策を明確に提示し、台湾の進路を堂々と論じてほしい。