読売新聞のスクープだ。
昨年12月18日、日本台湾交流協会と台湾日本関係協会が台湾有事を視野に、台湾から日本に入国する外国人の情報共有について「出入境管理にかかわる事項に関する情報共有に関する協力覚書」を結んでいたことが明らかとなった。
台湾の中央通信社は「内政部(内務省)移民署の公式サイトにも、昨年12月18日に日本と出入境管理での情報共有に関する協力覚書を締結したとの記載がある」と報じているが、内容については触れていない。
読売は「交流協会は覚書の内容を『非公表』としている」と伝え、また「有事の邦人退避を念頭に置いた覚書は異例」とも報じている。
異例というのは、締結のポイントが「有事の際に退避外国人の情報を共有することで、工作員らが混乱に乗じて入国するのを阻止し、国内での破壊工作を未然に防ぐ狙いがある」覚書だからであろう。
具体的には「台湾人に紛れて中国の工作員が日本に入国する可能性がある」からで、覚書は中国を刺激することはほぼ確実であることから非公表となっているのだと思われる。
それにしても、日台間でこのような覚書が交わされていたことに少し安堵した。
本誌でも、台湾有事の際の観光客を含む邦人避難の問題を取り上げ、日台安全保障対話の早期実現を提言してきたが、日台の安全保障に関わる提携の一端が明らかになり、少しホッとしたというのが正直な感想だ。
だが、まだまだ懸念材料は多い。
例えば、中国の工作員が台湾人に成りすまして日本に入国し、日本人と結婚して新たに戸籍を作った場合、戸籍の「国籍・地域」欄では「台湾」とされる。
その後、この中国人工作員が台湾を訪問するケースも想定される。
台湾から日本ではなく、中国人工作員が日本から台湾へ堂々と入り込むことも考えられる。
このようなケースにどう対応するかである。
覚書の締結が明らかとなり、中国がまたいろいろ嫌がらせを仕掛けてくることが予想される。
しかし、この覚書はまだまだ序の口であり、台湾有事への備えを怠ることは日本にとって死活問題だ。
台湾とのさらなる関係強化を推し進めていただきたい。
台湾有事、退避外国人の情報共有…異例の覚書締結「中国の工作員が入国する可能性を警戒」 【読売新聞:2025年8月19日】https://www.yomiuri.co.jp/politics/20250819-OYT1T50016/
日本と台湾が台湾有事を視野に、台湾から日本に入国する外国人の情報共有について協力覚書を結んでいたことがわかった。
有事の際に退避外国人の情報を共有することで、工作員らが混乱に乗じて入国するのを阻止し、国内での破壊工作を未然に防ぐ狙いがある。
複数の日本側関係者が明らかにした。
日台当局間で台湾有事を念頭に置いた覚書を締結するのは異例だ。
覚書は、「出入境管理にかかわる事項に関する情報共有に関する協力覚書」。
日本の対台湾窓口機関「日本台湾交流協会」が昨年12月18日、台湾側の窓口機関「台湾日本関係協会」との間で合意した。
交流協会は覚書の内容を「非公表」としている。
関係者によると、日本側は覚書に基づき、台湾からの入国を希望する外国人について、情報提供を受ける。
その結果、有事の際に、国内の治安に悪影響を及ぼす恐れのある人物が含まれていないかを調べるスクリーニング(受け入れ審査)を効果的に行えるようになる。
平時でも、台湾の空港で日本に向かう乗客の事前確認などを実施している。
外務省によると、台湾には昨年10月時点で約2万1700人の在留邦人がいる。
中国が侵攻して台湾有事が起きれば、多数の在留邦人が退避し、現地の台湾人や外国人らも日本に避難する事態が想定される。
入国管理の現場では、混乱の隙を突いて外国人の工作員やテロリストが侵入する事態が懸念される。
日本側関係者は「台湾人に紛れて中国の工作員が日本に入国する可能性がある」と警戒している。
出入国在留管理庁は、外国人の不法滞在などへの対応を巡り、豪州やニュージーランドなどと覚書を結んでいるが、有事の邦人退避を念頭に置いた覚書は異例だ。
日本は1972年の日中国交正常化により台湾と断交しているため、同庁ではなく窓口機関が署名した。
中国は台湾有事を想定した実戦的な演習を繰り返しており、2027年にも台湾侵攻の準備を整えるとの見方がある。
日本側は、今回の覚書締結により、邦人退避をめぐる協力を台湾側と深めるとともに、米国などとも連携し、台湾有事への対応を強化する方針だ。
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