議・決算特別委員会のとき、本会理事でもある和田有一朗(わだ・ゆういちろう)県議が
質問に立ち、井戸敏三(いど・としぞう)知事や県側に「台湾との交流促進」について質
した。
和田県議は「他府県は現実的な政治的な台湾との交流を深めて、どんどん接近して、実
利を上げつつある現状」や「各県の知事が競うように台湾もうでをしている」ことを踏ま
え、井戸知事に「『大陸のご機嫌伺い』みたいな時代からかじを切って、台湾との間で行
政のトップ間の交流も促進する方向へ交流というものを転換をすべきだ」と迫った。
決算特別委員会の議事録から、和田県議と県側の「台湾との交流促進」をめぐる質疑応
答の全文をご紹介したい。
ちなみに和田県議は、本会設立のときに神戸市議として理事に就任している。早稲田大
学時代、石原慎太郎氏に「国士」と言われた故末次一郎氏の薫陶を受けて政治家を目指
し、神戸市議時代には北方領土問題に取り組むとともに日台交流にも取り組んできている。
○和田有一朗委員
台湾との交流促進について、お伺いする。台湾は世界でも有数の親日国であり、さきの
東日本大震災では、200億円もの桁外れの義援金が寄せられたことは記憶に新しいところで
ある。
また、平成24年に本県を訪れた外国人約48万人のうち、台湾の方はその約20%の約9万人
を占め、韓国に次ぐ2位である。全国的に見れば、昨年の台湾から日本への旅行者数は156
万人、兵庫県民全部が来たぐらいの数になるわけである。日本から台湾への旅行者数は143
万人、本年度は上半期だけでも、もう既に前年を上回っており、このペースで行けば、恐
らく往来──向こうから来る人、こっちから行く人を足すと、300万人の大台を突破するだ
ろうと言われているところである。
いまや、本県にとっても観光やビジネスの発展に欠かせない国となっているのは言うま
でもない。
日本と台湾の関係は、1972年の日華断交以降、非政府間の実務関係として維持されてお
り、両国の交流は、主に経済面を中心としたものであった。
しかし、兵庫県などが、「政治と経済は別だ」などと言っている間に、他府県は現実的
な政治的な台湾との交流を深めて、どんどん接近して、実利を上げつつあるのが現状であ
ると思う。
かつてはどこかの首長さんが、訪台するだけでも大変な時代が長く続いた。しかし、こ
こ一、二年の間に、各県の知事が競うように台湾もうでをしている現状がある。
実は、ここに至るまでも、大変なハードルがあって、多くの関係者の方の血のにじむよ
うな人力があって、ここまで来ているのは事実である。そういうふうないろんな流れの中
で、姉妹都市提携が結ばれたりするようになってきた。
例えば、10年前のことだが、岡山市が台湾の新竹市と姉妹都市を提携をしようとしたと
きは、いろんなところからクレームが入って、圧力がかかって大変だった。こういうこと
を当時、姉妹提携を結ばれた岡山の市長さんはおっしゃっておられた。今、公になってい
る著書で書かれているから言っていいと思うのだが。
さらには、後で述べるが、仙台市も実は今、交流促進都市の提携を、台湾の都市と結ん
でいるが、これをするときにしても、その当時、それを結んだ市長さんが言うには、もう
うんざりしたと。もう大変だった、うんざりしたというぐらい、いろんな圧力があったよ
うである。
しかし、そういうのを跳ねのけて、いろんな方々の努力の上に、今、最近の交流という
のができ上がってきている。
そういう中で、例えば今言った仙台市などは、東日本大震災が起こった直後に、その交
流促進都市提携を結んでいる台南市の市長さんと市議会議長さんがすぐに市民から集めた
義援金1億円を持って、仙台市を訪ねてこられた。
あるいは、観光友好都市の提携をしている、同じ台南市は、実は日光市──日光東照宮
のある日光市である。と友好都市提携をしているが、その日光市がこの震災の後、本当に
外国人観光客が来なくなってしまったと言ったら、それから間もない6月中旬に、この市長
さんが300人もの人を集めて、大観光団を組んで鬼怒川温泉に泊まりにきたと、こういうこ
とが実例としてあるわけである。ありがたい話である。
そういうふう流れの中で、いろんな方のご努力の中で、昨今は友好交流というのが随分
スムーズに行くようになってきた。最近では、熊本と高雄市とが提携を結ぶ中では、全く
圧力やクレームはなかったと、何の問題もなかったというふうにも伺っている。
先週、大阪であった、この中華民国台湾の双十節、建国記念日のパーティーでは、数十
人の自治体の首長さんや議長さんなどが出席していたし、私も昔からの仲間で仲のいい愛
媛県知事の中村時広さんも、このためだけに、このパーティーにお見えになっていた。世
の中は随分変わったなと、確実に変わってきたなと私は思った。
一方、井戸知事はどうかというと、中国へは毎年のように訪問されて、経済面ばかりで
なく、地方政府の幹部の方などと政治的な交流を深めているようだが、台湾を訪問された
という話は私は聞いていない。
平成24年において、県では台湾との関係においてどのような交流がなされたのか。「政
治と経済は別」「大陸のご機嫌伺い」みたいな時代からかじを切って、台湾との間で行政
のトップ間の交流も促進する方向へ、交流というものを転換をすべきだと思うが、ご所見
をお伺いする。
○国際交流課長(森安秀和)
台湾との関係については、昨年度、本県の輸出入先の中で、輸出額で5位、輸入額で11位
を占め、また、来県者数においても、委員ご指摘のとおり約9万人で2位を占めるなど深い
かかわりを持ち、また、極めて重要であると認識している。
特に、経済分野においては、本県からバンドー化学、シスメックスなど21社が台湾のほ
うに進出し、また、台湾からもハイウィンやTPOディスプレイズジャパンなど5社が県内
に進出し雇用創出に貢献をいただいているところである。さらに、台湾新幹線の車両には
川崎重工製が採用されているところである。
また、観光分野では、昨年度、台北国際旅行博へ出展し、商談会などを実施したところ
であるが、それが功を奏して、訪日教育旅行においては、22団体843名と台湾からの受け入
れが最も多くなっている。まさしく実利のある交流を実施してきたところである。
また、教育分野においても、昨年度、県選抜の高校生が野球交流を実施したほか、HU
MAPの枠組みで29名の学生を台湾から受け入れ、また、71名の学生を台湾に派遣するな
ど、幅広い分野で交流が進んでいるところである。
今後とも台湾とは、これまでの成果も踏まえ、観光、経済、教育、文化等さまざまな分
野で、引き続き交流を推進していく。
なお、行政トップの交流については、高い効果が得られるものと我々も認識していると
ころである。しかし、他方、本県から88社が進出し経済を初め緊密な関係にある中国への
配慮も必要であるため、今後の日中関係や両岸関係の動向を注視しつつ、適切に対応して
いきたいと考えているので、よろしくお願いする。
○和田有一朗委員
さまざまな配慮を見ながら、大変重要だと思うが、進めていきたいと御答弁があった。
しかし、時代は変わってきて、かつてのような配慮は、もはや私は必要ないとは言わない
が、そういう物の見方で見る時代では、もうなくなってきて、新しい時代に入ってきてる
んではないかと私は思う。
そういう意味で、新しい時代の交流に向けて一歩踏み出すにしても、若干、私は本県の
動きは遅きに失した感は実は思っている。でも、まだ間に合うと思う。
というのは、富山県の石井知事が、石井部長でなく石井知事が、ことしの1月に台北を訪
れて、台湾への富山県の事務所を開設する、その開所式も行った。福岡県の小川知事も1月
10日に台湾を訪問して、産業協定を結ぶために行っている。ことしに入ってから、どんど
んスピードが上がっていっている。まだまだ私は遅きに失した感はあるけれども、まだこ
れから間に合うと思うので、ぜひとも頑張っていただきたいと思う。
もう一点、最後につけ加えるが、いろんな知恵の出し方が、やっぱり交流にはあると思
う、私は。
例えば、江ノ電、江ノ島電鉄が、台鉄、台湾の鉄道局と実は協定を結んでいて、何をや
ってるかというと、台湾のある観光区間の鉄道に乗った人の半券を持って江ノ電に乗ると
ただで乗れるとか、そういうふうなことをやったりしているところがある。
例えば兵庫県のどうだろうか、県立美術館が台湾のある県の美術館と協定を結んで、こ
の半券を持ってきたら県立美術館にただで入れるよとか、そういうふうなことも、やっぱ
り幅広くいろんな知恵を出すことができるのではないのかなと、そんなこともトップの交
流から私は生まれるのではないのかと思うので、またこれから一歩前に踏み出た交流とい
うのを進めていただきたいと思う。
これで終わる。