年頭の1月2日、習近平・中国国家主席が「一つの中国」原則を前提に、「九二共識」を堅持することによる「一国二制度」について、「台湾同胞は、中華民族の一部分で、正々堂々な中国人として……国家の完全なる統一、民族の偉大なる復興を無上の光栄な事業として受け止めるべきだ」と演説したことに、蔡英文総統をはじめ台湾各界から強い反発を招いている。
そもそも「九二共識」は、中国は「双方とも『一つの中国』を堅持する」という受け止め方で「一中」解釈だが、台湾は異なる。国民党は「一中各表」(双方とも『一つの中国』は堅持しつつ、その解釈は各自で異なることを認める」と解釈してきた。
それゆえ、この習近平演説について、中国との統一を進めようと図っていた馬英九・前総統でさえ「見解にわれわれと食い違いがある」(3日のラジオ番組)と違和感を隠さなかった。
ましてや蔡英文政権は「九二共識」そのものを受け入れていない。習近平演説に即座に反応した蔡英文総統は「台湾は断固として『一国二制度』を受け入れない。台湾の民意の圧倒的多数は『一国二制度』に強く反対しており、これは『台湾コンセンサス』である」と反駁している。
それを証明するかのように、「両岸政策協会が3日に発表した世論調査によると、中台は不可分の領土だとする『一つの中国』原則を中台がそれぞれの立場で1992年に認めたとされる『92年合意』について、台湾人の84.1%が『中華民国が存在する余地がないもの』との解釈を『受け入れない』と回答した」という。84.1%は「台湾の民意の圧倒的多数」だ。
習近平氏が4日に中央軍事委員会の軍事工作会議で演説し、「軍事闘争の準備をしっかりと行い、強軍事業の新局面を切り開く」よう指示したこととあいまって、年頭からきな臭い話が続き、波乱含みの年明けとなった。
————————————————————————————-台湾人の84%、92年合意による主権剥奪を拒否【NNA ASIA:2018年1月7日】
中台関係に関する政策研究などを行う非営利団体の両岸政策協会が3日に発表した世論調査によると、中台は不可分の領土だとする「一つの中国」原則を中台がそれぞれの立場で1992年に認めたとされる「92年合意」について、台湾人の84.1%が「中華民国が存在する余地がないもの」との解釈を「受け入れない」と回答したことが分かった。3日付中央通信社が伝えた。
調査は2018年12月27〜28日に成人1,081人に対してインタビュー形式で実施した。
「92年合意は経済発展を推進すると同時に、中華民国の主権を奪い、中華人民共和国の地方政府に編入するもの」との解釈についても、台湾人の81.2%が「受け入れない」と回答。一方、「92年合意の『一つの中国』の『中国』とは、中華民国のこと」との解釈については、54.2%が「賛同する」と回答した。
このほか92年合意が定めた中台関係の解釈については、44.4%が「中台は異なる国家」、20.9%が「中台は一つの国家だが、まだ統一していない」、20.6%が「中台はそれぞれが中国を代表する」、7.1%が「中華民国は中華人民共和国の地方政府」と回答した。
■柯台北市長、一国二制度などの実現に懐疑的
中国の習近平国家主席は2日、共産党独裁下で高度な自治を認める「一国二制度」による台湾統一に触れ、「両岸(中台)は早期に政治対立を解決すべきだ」と訴え、台湾側に対話を呼び掛けた。
行政院(内閣)直轄6市の市長はこれに対する見解を表明。柯文哲台北市長は「中国側の主張は大部分の台湾人には受け入れられないだろう」と述べた。韓国瑜高雄市長は「中国共産党の台湾奪回の決意と台湾人の民主主義、自由主義の決意を疑うべきでない」と述べ、中国と台湾がかねてより異なる理念を持っていることを強調した。
国民党では、侯友宜新北市長が「中台関係の平和的発展を支持する」、盧秀燕台中市長は「中台関係はより深い相互理解が必要」とコメント。一方、台湾独立志向の民主進歩党(民進党)では鄭文燦桃園市長が中台の交流、対話の促進を訴えた。また黄偉哲台南市長は、中国側の主張に対し、平和的かつ対等な方法で双方の見解の対立に対処することなどを対話の条件とした蔡英文総統の主張に賛同する見解を表明した。