2014年11月末の統一地方選挙後の政治大学選挙研究センターによるアイデンティティ調査では「(自分は)台湾人だ」と答えた人は過去最高の60.6%となり、「中国人」は3.5%、「台湾人でもあり中国人でもある」は32.5%と過去最低を示した。
しかし、2018年12月の調査では「台湾人だ」と答えた人は54.5%と6.1ポイント下がり、「中国人」は3.7%とほぼ横ばいだったものの、「台湾人でもあり中国人でもある」は38.2%と5.7ポイントも増えていた。
だから「台湾の未来は台湾人が決めるべき」が87.7%を示したことに驚かされたのだが、同調査では、中国が主張する「一国二制度」に賛成しない人は79.0%、「中共による台湾への武力行使」への反対は83.9%となり、1月2日に行った中国の習近平・国家主席の演説を台湾の人々が快く思っていないことを如実に示す結果となった。
また、国民党の呉敦義主席は2月14日のラジオ番組で「国民党が政権を取れば平和協定に調印する権利を持つことになる」と発言し、与党などから猛反発を受けた。
この世論調査では、「台湾が『一つの中国』原則を受け入れてから政治的な協議を行うとする中国の要求」についても質問していて、不賛成が73.0%だった。中国と国民党が進めようとしている「一つの中国」の下における政治的協議、すなわち平和協定を結ぶことに台湾の民意は賛意を示していないことになる。
習近平演説は台湾の民意を大きく変え、蔡英文政権への批判の矛先は中国に向けられたと言ってもいいだろう。この民意は、2020年1月11日に投開票が行われる台湾の総統と立法委員のW選挙を左右しかねない。総統選で民進党候補が勝ったとすれば、陰の功労者は習近平だったと言われるかもしれない。
—————————————————————————————–8割弱の台湾人、中国の「一国二制度」に反対【中央通信社:2019年3月22日】
(台北 22日 中央社)台湾の対中国政策を所管する大陸委員会が21日に発表した最新の意識調査で、中国が主張する「一国二制度」に賛成しない人は79.0%に上ることが分かった。同委は、この調査結果は中国共産党(中共)が近年進める台湾統一工作に反発する民意の表れだとの見方を示している。
調査ではこのほか、「中共による台湾への武力行使」への反対が83.9%、「台湾が『一つの中国』原則を受け入れてから政治的な協議を行うとする中国の要求」への不賛成が73.0%などの結果が出ている。「台湾の未来は台湾人が決めるべき」と考えている人は87.7%に上り、長期的な両岸(台湾と中国)関係の展望については「広義の現状維持」を望む声が87.1%を占めた。
中国の習近平氏は今年1月の対台湾政策に関する演説で、一国二制度による統一や「民主的な対話」などを提唱し、武力行使も排除しない意向を表明した。大陸委員会の邱垂正・副主任委員兼報道官は21日の定例記者会見で、中共が台湾統一に本腰を入れ始めたと指摘し、これに対抗し、断固として国家の主権や安全、台湾の民主体制を守る政府の姿勢を示した。
調査は、同委の委託を受けた政治大学選挙研究センターが今月13〜17日にかけて、台湾に住む20歳以上の男女を対象に電話で実施し、1093人から回答を得た。
(繆宗翰/編集:塚越西穂)