本誌7月16日号でお伝えしたように、台湾の立法院は与党議席が過半数を割る「ねじれ国会」のため、野党の中国国民党と台湾民衆党が共同提案した「立法院職権行使法改正」と「刑法改正」が可決され、頼清徳総統が署名をして施行された。
しかし、行政院と民進党立法院党団は施行翌日の6月27日に司法院に違憲審査と仮処分(法律の一時停止)を申し立て、翌々日の6月28日には頼総統自身も司法院に違憲審査と仮処分を司法院に申し立てる事態になっていた。
立法院が第11期の第一会期が7月16日に終了した直後の19日、司法院の「憲法法廷は一部条文を一時停止とする決定を下し、同日以降、違憲審査の判決が出るまでは関連の条文の適用が停止される」(中央通信社)という。
中央通信社によれば「適用が一時停止となるのは、立法院(国会)職権行使法の▽総統による国情報告の聞き取り▽報告聞き取りと質問▽人事同意権行使▽調査権行使▽聴証会開催─に加え、刑法の「国会軽視(議会侮辱)罪」などに関連する規定」で、行政院や民進党、頼総統が申し立てた改正法だ。
一時停止処分は、法律の施行が半年間停止される。
特に総統の国情報告について、本誌で平井新・東海大学特任講師が「(台湾の)現行法規では立法院は毎年の会期中に総統の国情報告を聴取『できる』と規定されているが、総統にとって『義務』ではない。
総統は独立して職権を行使し、直接選挙民に対して責任を負っている。
今回の法改正で総統に立法院での質疑応答義務を負わせることは、改憲を経ずに総統に対して新たな憲法上の義務を創設すること」となることを紹介した。
台湾国内でもこのような見方が少なくなく、憲法法廷は違憲判断を下すのではないかと予想されている。
それにしても、立法院職権行使法の同意権行使、調査権行使、聴証会開催、刑法の「国会軽視罪」などに関連する規定まで一時停止になるとは思わなかった。
今回の憲法法廷で、台湾では司法の独立が正常に機能していることが確認される事態となった。
改正国会職権関連法 憲法法廷、一部条文の一時停止を決定【中央通信社:2024年7月19日】https://japan.focustaiwan.tw/politics/202407190006
(台北中央社)先月26日に施行された改正国会職権関連法を巡り、憲法法廷は19日、一部条文を一時停止とする決定を下した。
同日以降、違憲審査の判決が出るまでは関連の条文の適用が停止される。
適用が一時停止となるのは、立法院(国会)職権行使法の▽総統による国情報告の聞き取り▽報告聞き取りと質問▽人事同意権行使▽調査権行使▽聴証会開催─に加え、刑法の「国会軽視(議会侮辱)罪」などに関連する規定。
憲法法廷は総統が立法院で行う国情報告に関する規定の一時停止について、条文が憲政に関する疑念と与野党間の衝突を引き起こし、民主主義の憲政運営における極めて重要な公共の利益が回復し難い重大な損害を被る可能性があるとの見方を示した。
関連法を巡っては、頼清徳(らいせいとく)総統や行政院(内閣)、与党・民進党立法院党団(議員団)、監察院がそれぞれ、違憲の恐れがあるとして違憲審査と法律の一時停止を司法院に申し立てていた。
(林長順/編集:名切千絵)
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