平成国際大学の浅野和生教授は2005年から日本版「台湾関係法」の必要を説き、それを受けて、本会も2013年に政策提言として「我が国の外交��ぢ安全保障政策推進のため『日台関係基本法』を早急に制定せよ」を発表しています。
ただ、「日台関係基本法」という名称は、台湾に武器を供与できると定めた米国の「台湾関係法」を想起させ、この法案の趣旨を誤解させるおそれがあることから「日台交流基本法」と改め、2019年に改めて政策提言「『日台交流基本法』を早急に制定せよ」として発表しています。
日台間で医療や気象、安全に関する情報を交換してゆくことは、双方の国益にとってとても重要です。日台交流基本法はここを目的としています。
台湾でも李登輝元総統をはじめ与党の民進党などから早期制定を望む声が高かったにもかかわらず、台湾に理解の深かった安倍政権では実現しませんでした。
自民党の次期総裁の呼び声が高い菅義偉氏はすでに安倍政権の継承を打ち出しています。菅氏自身も台湾への理解も深いことから、菅義偉政権となった暁にはなんとしても日台交流基本法を実現していただきたいと期待はふくらみます。
台湾の経済評論家・黄世聡氏も同じ考えのようで、産経新聞のインタビューに、次期政権では「台湾に関する法整備を積極的に推進してもらいたい」と述べています。
—————————————————————————————–日本版「台湾関係法」に期待 台湾の経済評論家・黄世聡氏【産経新聞「安倍政権を振り返る」:2020年9月11日】https://www.sankei.com/article/20200911-XTTHOYYTSRMNDNFTR35GORRJEU/
安倍政権発足以前の日本経済は非常に不安定だった。日本がアジアの先頭を走り、他の国を牽引(けんいん)する存在でなければならないので、日本経済が失速するとみんながうまくいかなくなる。安倍晋三首相の「三本の矢」の金融、財政、成長戦略により、日本経済が正常に戻ったことは、台湾経済にもプラスとなった。
また、安倍政権が米国と非常に良い関係を作ったことは大きな意義があった。台湾にとって米国も日本も重要な外交相手国であり、日米関係が良好であれば台湾の外交環境も安定する。ここ数年、中国によって、台湾と外交関係があった中南米や太平洋の国々と断交させられたが、日米との外交では大きな進展があった。国際社会の台湾への関心は逆に高まった。
日本は歴代、なぜか中国に弱腰の政権が多かった。だが、安倍首相は中国に、時々ではあるが強い姿勢を示した。香港や南シナ海問題などで言うべきことを言い、アジアのリーダーとして存在感を示した。
安倍首相は台湾に非常に友好的だった。ツイッターなどを通じて蔡英文総統と常にエールを交換し合っていた。国会で台湾の世界保健機関(WHO)への参加支持を何度も表明した。日本の対台湾窓口機関「交流協会」を「日本台湾交流協会」に改名したことも大きな決断だった。安倍首相の台湾への好意的な姿勢は台湾の人々に伝わっている。
ただ、安倍首相が率いる連立政権が国会で圧倒的多数であるにもかかわらず、台湾に関する法律を作らなかったことは残念だった。(断交後の台湾との関係や台湾への武器売却を定めた)米国の台湾関係法のような法律を日本でも作るべきだという声は以前からあった。中国の圧力かどうか分からないが、日本の国会が動かなかったのは残念だ。外交関係のない日本と台湾が付き合っていくためには、政治家個人の理念や魅力に頼るのではなく、法整備が必要だと考える。
日本の次の政権も安倍首相の外交政策を継承する可能性が高いことは安心できるが、台湾に関する法整備を積極的に推進してもらいたい。(聞き手 台北・矢板明夫)
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【プロフィル】黄世聡(こう・せそう)台湾の経済評論家。1973年生まれ。台湾南部・嘉義市出身。東華大学(花蓮県)修士課程修了。経済雑誌「先探投資週刊」副編集長などを歴任した。
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