南太平洋のナウル共和国が台湾と再び断交し中国との国交を再開

 南太平洋の島嶼国家のナウル共和国が1月15日、台湾と断交して中国と国交を結ぶことを表明した。

 台湾とは1980年に国交を樹立したものの、2002年にナウルが債務問題を理由に中国と国交を結んだことから断交。しかし「中国が約束した援助の多くが実現しなかったことから、ナウルは05年に中華民国との外交関係を回復」した。ところが、またもや「巨額の財政赤字やミクロネシア地域のスポーツ大会『ミクロネシアンゲームズ』の26年開催に伴う競技場の建設費など」の財政上の理由から、1月15日に再び台湾と断交し、中国と国交を再開した。

 中央通信社は、台湾の外交部は「中国がナウルの政府要人と積極的に接触し、経済援助を餌に外交関係の乗り換えを働きかけているとの情報を昨年の時点で把握していた」と伝えている。

 総統選挙直後の発表というタイミングからして、民進党の頼清徳候補が総統選挙で当選したことへの当てこすりであり、中国が台湾への圧力として外交関係がある国への切り崩しを行っている一環だろう。

 とはいえ、これで蔡英文政権が始まって以来、2016年12月21日のサントメ・プリシンペ民主共和国との断交をはじめとして今回のナウル共和国までの断交国は10ヵ国となり、国交締結国は12ヵ国となった。下記にその一覧と中央通信社の記事をご紹介したい。

 ちなみに、ナウル共和国は21.1平方キロメートル(東京都品川区とほぼ同じ)、4、5時間で一周できる一周17kmほどの島で、バチカン、モナコに続き世界で3番目に小さい国だ。人口も1万2,000人ほど。かつてはリン鉱石の輸出によって栄えたものの、外務省によれば「主要外貨獲得源である燐鉱石がほぼ枯渇し、他にナウル経済を支えるめぼしい産業もなく、経済状況は厳しい状態である。国内には自給可能な食糧産業はなく、食糧及び生活物資のほとんどを海外からの輸入に頼っている」という。

 日本はオーストラリア、ニュージーランドに次ぐ援助国だが、かつて日本に開設されていた領事館も財政上の理由で1989年9月に閉鎖されたという。

 ナウル共和国との断交による台湾への影響は微々たるものだろう。ただし、太平洋島嶼国家への影響力はじわじわと拡大しつつあり、主要援助国のオーストラリア、ニュージーランド、日本、米国などで南太平洋における安全保障上の危機感は深まる。

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・台湾と断交した国(2024年1月15日現在)

 1)2016年12月21日:サントメ・プリシンペ民主共和国 2)2017年6月13日:パナマ共和国 3)2018年4月30日:ドミニカ共和国 4)2018年5月24日:ブルキナファソ 5)2018年8月21日:エルサルバドル共和国 6)2019年9月16日:ソロモン諸島 7)2019年9月20日:キリバス共和国 8)2021年12月9日:ニカラグア共和国 9)2023年3月26日:ホンジュラス共和国 10)2024年1月15日:ナウル共和国

・2024年1月現在の台湾との国交国:12ヵ国 大 洋 州:マーシャル諸島、パラオ、ツバル アフリカ:エスワティニ 中 南 米:ベリーズ、グアテマラ、ハイチ、セントクリストファー・ネービス、セントルシア、      セントビンセント及びグレナディーン諸島、パラグアイ 欧  州:バチカン

—————————————————————————————–総統選直後にナウル断交 中国による外交的圧力 「民主主義への報復」=総統府【中央通信社:2023年1月15日】

(台北中央社)総統府は15日、南太平洋の島国ナウルとの断交について、台湾が総統選を無事終えられたことを全世界が祝福する中で、北京当局が外交的圧力をかけたことは「民主主義の価値観への報復だ」と非難した。

 外交部(外務省)は同日午後、ナウルが中国代表権を巡る国連総会2758号決議(アルバニア決議)と一つの中国原則を理由に中華民国(台湾)と断交するとの情報を受け、ナウルとの外交関係を即日断絶することを決めたと発表した。中華民国とナウルは1980年に国交を樹立したが、2002年にナウルが債務問題を背景に中国と国交を結んだことから一度は断交した。だが中国が約束した援助の多くが実現しなかったことから、ナウルは05年に中華民国との外交関係を回復させていた。

 同部の田中光政務次長によれば、同部は中国がナウルの政府要人と積極的に接触し、経済援助を餌に外交関係の乗り換えを働きかけているとの情報を昨年の時点で把握していた。ナウル議会は昨年10月30日、デービッド・アデアン氏を新大統領に選出し、両国の関係は一時は安定していたものの、新政権発足後、難民認定を求める人々を収容する「ナウル地域処理センター」(PRC)をオーストラリアが閉鎖したことによる巨額の財政赤字やミクロネシア地域のスポーツ大会「ミクロネシアンゲームズ」の26年開催に伴う競技場の建設費などを名目に巨額の経済援助を台湾に要求していた。それと同時に、ナウルは台湾と中国からそれぞれ提示された援助案を比較していたという。

 田氏は、中国の金銭的誘惑に目がくらみ、ナウルが台湾の長年の協力や友情を顧みずに中国と国交樹立の交渉を進めたことに対し、政府として「沈痛な思いと遺憾の意」を表明した。

 総統府の林聿禅(りんいつぜん)報道官も同日、報道資料を通じ、ナウルが北京の誘惑の下で双方の人々の利益と地域の安定に無益な誤った決定を下したことに「強い遺憾」を示した。

 総統選は13日投開票され、中国と距離を置く与党・民進党の頼清徳(らいせいとく)副総統が勝利した。

 民進党の蔡英文(さいえいぶん)政権が2016年に発足して以来、断交した国は10カ国目。外交関係を結ぶ国は12カ国になった。

(游凱翔、葉素萍/編集:名切千絵)

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