中米のニカラグアが台湾と断交し中国と国交回復

 米国が台湾などを招聘して主催する「民主主義サミット」開催の初日の12月9日、米国の裏庭と称される中米のニカラグア共和国が台湾との断交を発表し、台湾の中華民国政府も10日朝、強い遺憾の意を表するとともに「わが国は、国家の主権と尊厳を守るため、本日をもってニカラグア共和国との外交関係を停止し、あらゆる二国間協力及び支援プロジェクトを全面停止するとともに、大使館及び技術団員を撤退させることを決定した」と発表した。

 また、10日に中国とニカラグアは「中華人民共和国とニカラグア共和国の外交関係回復に関する共同コミュニケ」に調印、国交を回復した。ニカラグアは1985年に台湾と断交したものの、1990年に台湾との国交を回復。今回が2度目の断交となる。蔡英文政権下での断交は8ヵ国目。

1)2016年12月21日:サントメ・プリシンペ民主共和国2)2017年6月13日:パナマ共和国3)2018年4月30日:ドミニカ共和国4)2018年5月24日:ブルキナファソ5)2018年8月21日:エルサルバドル共和国6)2019年9月16日:ソロモン諸島7)2019年9月20日:キリバス共和国8)2021年12月9日:ニカラグア共和国

 これで台湾と国交を持つ国は下記の14ヵ国となった。

・大 洋 州:マーシャル諸島、ナウル、パラオ、ツバル・アフリカ:エスワティニ・中 南 米:ベリーズ、グアテマラ、ホンジュラス、ハイチ、セントクリストファー・ネービス、セントルシア、      セントビンセント及びグレナディーン諸島、パラグアイ・欧  州:バチカン

 下記のNHKの報道でも触れているように、ニカラグアは大統領選挙終了後、その選挙が公正ではなかったとして米国、英国、カナダからの経済制裁を受けたため、経済面で大きな圧力に直面し、中国の誘いに乗ったというのが断交の原因だという。

 金の切れ目が縁の切れ目を地で行っているような展開だ。しかし、一帯一路を進める中国の評判はかんばしくない。台湾から中国に乗り換えた国々からは不満も聞こえてくる。ニカラグアが中国とまた断交する日が来ないとは、誰も断言できない。

 蔡英文総統はニカラグアとの断交について「国民に伝えたい。台湾の民主政治が成功であればあるほど、国際社会からの支持が強ければ強いほど、権威主義国家からのプレッシャーが大きくなる。しかし、我々は確信している。外交面での圧迫も、武力など各種の手段による威嚇行為も民主と自由を守り、世界に歩み出し、国際社会の民主陣営に参与する我々の決意と努力を変えることはない」(台湾国際放送)と述べたそうで、この発言に悲壮感はない。

—————————————————————————————–ニカラグアと台湾が断交 中国が台湾の友好国の切り崩し進める【NHK:2021年12月10日】https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211210/k10013382781000.html

 中国が台湾の友好国の切り崩しを進めるなか、中米のニカラグアが「台湾は中国の領土の一部」だとして、台湾と断交すると発表しました。これに対し、台湾側も「尊厳を守るため」として、ニカラグアとの断交を決めました。

 ニカラグアの外務省は9日「即日、台湾との外交関係を断つ」という声明を発表しました。

 声明では「ニカラグア政府は、世界に中国は1つしかないと認識する。中華人民共和国が中国の唯一の合法的な政府であり、台湾は中国の不可分の領土の一部だ」としています。

 これは中国政府の主張と一致します。

 これに対し、台湾外交部も10日朝「ニカラグアの決定は一方的なもので、非常に心が痛み、遺憾だ」としたうえで「主権と尊厳を守るため、即日、ニカラグアとの外交関係を終える」という声明を発表しました。

 台湾が外交関係をもつ国の数はこれで14に減りました。

 中国が主張する「1つの中国」の原則を認めない蔡英文政権が2016年に発足して以降、中国による台湾の友好国の切り崩しが進んでいて、今回のニカラグアを含めて台湾と断交した国は8つ、このうち中米・カリブ海地域だけで4か国を数えます。

 ニカラグアの隣国のホンジュラスでも、先月の大統領選挙で「中国と国交を結ぶ」と主張してきた野党候補が勝利を確実にし、今後の動向に関心が高まっています。

◆中国「ニカラグアは中米の重要な国」

 中国外務省は10日、ニカラグアと国交を回復したと発表しました。

 国営の中国中央テレビは10日天津で、中国とニカラグアの代表者が面会し、国交を回復する文書に署名をしたと伝えました。

 これに合わせて、中国外務省の報道官は「ニカラグアは中米の重要な国だ。『1つの中国』の原則を認め、台湾といわゆる『外交関係』を断絶させ、中国と国交を回復したことを高く称賛する」とする談話を発表しました。

 また、中国外務省の汪文斌報道官は10日の記者会見で「ニカラグアが前提条件なしに中国と国交を回復したことは歴史における正しい選択で、我々は高く評価する」と述べました。

 そのうえで、汪報道官は「今回の国交回復は、『1つの中国』の原則が国際社会における普遍的な共通認識であることを改めて示している。これを堅持することは国際的に大きな意義を持つとともに人々の願いでもあり、いかなる勢力も阻むことはできない」と述べ、台湾側をけん制しました。

◆台湾 蔡英文総統「権威主義陣営からの圧力もより大きくなる」

 台湾の蔡英文総統は10日、新北市内で開かれた行事のあいさつでニカラグアとの断交について触れ「台湾の民主主義が成功すればするほど、国際社会からより強く支持され、権威主義陣営からの圧力もより大きくなる」と述べました。

 そのうえで「外交的な圧力であろうと、言論による攻撃や武力による威嚇であろうと、民主主義と自由を貫いて世界に向かって進み、国際的な民主主義のコミュニティーに参加するというわれわれの決意と努力は変えようがない」と述べて、中国の圧力に屈しない姿勢を強調しました。

 また、台湾外交部は、10日午後の報道発表文で「『民主主義サミット』の初日にニカラグアを誘惑して台湾と断交させた中国の行いは下劣で、民主主義の世界を公然と挑発するものだ」と、中国を非難しました。

◆台湾の専門家「中国 見せしめとして台湾の友好国奪う必要」

 国際政治や中台関係に詳しい台湾師範大学の范世平教授は、「アメリカが台湾をサミットに招待したことは中国にとって大きな打撃だ。中国は見せしめとして台湾の友好国を奪う必要があったのだろう」と話しています。

 また、范教授は、中国が台湾の友好国の切り崩しに成功するかどうかは、対象の国にアメリカがどのような態度をとるかに左右されると指摘します。

 ニカラグアの場合、先月行われた大統領選挙について公正でなかったとして、アメリカがオルテガ政権の高官らに制裁を科していて、このことが結果的にニカラグアを中国側に押しやったという見方を示しました。

◆米「台湾との関係を拡大を」

 アメリカ国務省のプライス報道官は9日、声明を発表し、台湾と断交したニカラグアについて「ニカラグアの人々から民主主義と経済成長のための確固たるパートナーを奪っている」と批判しました。

 そのうえで「民主的な制度や透明性、法の支配、それに国民の経済的な繁栄を重視するすべての国に対し、台湾との関係を拡大するよう呼びかける」としています。

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