この世論調査は5つの調査機関に依頼、7月8日から14日にかけて固定電話方式で行われ、下記のような結果だったという。急追していた郭台銘・鴻海精密工業前董事長は政権発表会における発言などが影響して終盤で失速し、17ポイントの大差で敗れた。また、昨年11月24日の統一地方選挙直後に出馬表明していた朱立倫・前新北市長に至っては27ポイントも引き離され惨敗だった。
韓國瑜:44.805% 郭台銘:27.730% 朱立倫:17.900% 周錫●: 6.020%(●=王韋) 張亞中: 3.544%
なお、中国国民党は候補者別に総統選の世論調査も実施していて、韓國瑜氏が中国国民党候補者として総統選挙に出馬した場合、韓氏が47.7%で、民進党候補の蔡英文氏や無所属の柯文哲・台北市長に圧勝するという結果も発表している。郭台銘氏や朱立倫氏でも、総統選では蔡英文氏や柯文哲氏に勝つという結果だった。
・韓國瑜:47.7% 蔡英文:15.8% 柯文哲:18.0%・郭台銘:29.2% 蔡英文:14.1% 柯文哲:14.6%・朱立倫:20.7% 蔡英文:15.6% 柯文哲:18.8%
ただ、報道を見る限り、総統選候補者に内定した韓氏に笑顔はなかった。7月15日に党本部で開いた勝利の記者会見でも「公認候補内定について『一抹の喜びもなく、あるのは比類ないほどに重いプレッシャーだ。これから巨大な挑戦に直面することになるが、この責任を引き受けたい』と語った」(時事通信)という。
6月19日に蘋果日報が発表した世論調査では、韓国瑜:32.8%、蔡英文:27.1%、柯文哲:24.3%だったが、蔡英文氏との一騎打ち対決では蔡英文:40.3%、韓国瑜:39.1%と逆転される結果だった。また、6月24日にTVBSが発表した世論調査でも、蔡英文:37%、韓国瑜:29%、柯文哲:20%と旗色は悪かった。
韓國瑜氏が総統選にも圧勝すると出た中国国民党の世論調査の結果は、メディアの世論調査とかけ離れ、記者会見で笑顔のない韓氏の正直とも思えるコメントともかけ離れていて、どういう世論調査だったのか、支持率操作さえ疑いたくなる結果だった。
下記に紹介する毎日新聞は「柯文哲・台北市長(59)は15日、記者団に『(出馬を)まじめに考えているところだ』と述べた」と伝え、柯文哲氏に総統選出馬を決意させることも十分あり得る中国国民党の世論調査だったと言えよう。
—————————————————————————————–台湾総統選 国民党候補に韓・高雄市長 鴻海前会長は及ばず【毎日新聞:2019年7月15日】https://mainichi.jp/articles/20190715/k00/00m/030/082000c
来年1月11日にある台湾の総統選で、対中融和路線を取る最大野党・国民党は15日、予備選の当選者を決める世論調査の結果を発表した。韓国瑜・高雄市長(62)が鴻海精密工業の郭台銘・前会長(68)ら他の4人を支持率で上回った。同党は17日の幹部会合で韓氏を公認候補に決定する。独立志向がある与党・民進党からは蔡英文総統(62)が再選を目指して出馬する。2大政党の候補が固まったことで総統選の戦いが本格化する。
国民党が民間機関に委託した五つの世論調査の平均支持率で韓氏が44・8%、郭氏は27・7%だった。韓氏は15日、党本部であった記者会見で「共に美しい未来を切り開こう」と決意を述べた。
韓氏は昨年11月の高雄市長選で「高雄市民をもっと豊かにする」という訴えと庶民的な独特の語り口で既存政治に飽き足らない有権者の人気を集めた。「韓流」と呼ばれるブームを巻き起こして初当選。同12月に市長就任後は、主に中国との関係強化による経済振興を試みてきた。総統選でも「経済活性化」を前面に出して選挙戦に臨む戦略だ。
韓氏は訪中時に中国側から歓待を受けており「親中」のイメージがある。また、中台が「一つの中国」で合意したとされる「92年コンセンサス」を認める国民党の立場を踏襲する。台湾の有権者には「韓氏が政権を取れば、中国との関係が過度に深まる」との警戒感も少なくない。一方で有権者は経済活性化を強く期待する。韓氏は対中関係について「経済を優先する」と主張し、有権者に理解を求めている。
ただわずかな期間で高雄市長から総統にくら替えを図ることへの批判は根強い。また韓氏は香港で6月に「逃亡犯条例」改正案に反対する大規模デモが起きた際、記者に「(デモを)詳しく知らない」と述べ、強い反発を受けた。韓氏は中国が目指す台湾への「1国2制度」導入について「絶対に受け入れない」と釈明している。
一方、予備選で敗れた郭氏について台湾メディアは、離党して無所属で立候補する可能性を報じている。郭氏が出馬すれば国民党支持者の票が割れて蔡氏が有利になる可能性がある。また無所属での出馬を検討している柯文哲・台北市長(59)は15日、記者団に「(出馬を)まじめに考えているところだ」と述べた。無所属で立候補するには有権者の1・5%の署名(約28万人分)を集める必要がある。【台北・福岡静哉】