世論調査捏造で三度墓穴を掘る中国  黄 文雄(文明史家)

黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」:2023年12月27日号】 https://www.mag2.com/m/0001617134*読みやすさを考慮し、小見出しは本誌編集部が付けたことをお断りします。

◆台湾各地で中国指示と思しき世論調査の捏造事件が発覚

 来年1月13日に台湾総統選挙が行われるまであと約2週間ですが、中国が指示したとされる世論調査の捏造事件が各地で発覚しています。

 台中市のインターネットメディアの所属記者は、中国福建省の共産党員から指示されて世論調査を捏造した疑いで当局に拘束されました。900人の市民に電話や面会で調査して8回にわたって作成したということだったデータが、いずれもまったく調査などせずに捏造したものだったことが発覚しました。

 その嘘の調査内容には、国民党の侯友宜候補のほうが民進党の頼清徳候補を支持率で上回っているとうものが含まれていたそうです。民進党・頼清徳は人気がないというデマを広げて、中国に融和的な国民党・侯友宜を持ち上げようとしていたようです。

 その他にも、高雄市でも中国側から買収されてニセの調査結果を公開したとして、男が拘束されています。

 台湾では、中国共産党が台湾の現職村長を低料金で中国に呼び寄せ、特定の総統候補への支持を要請しているという噂が流れています。 彰化県と雲林県の村長が最も多く渡航していることが明らかになったそうです。

◆中国の工作活動は逆効果

 あらゆる手を使って、民進党の頼清徳の当選を防ごうとしているようですが、これは逆効果でしょう。これまでも、中国は総統選挙に前後して、さまざまな恫喝や工作活動を展開してきましたが、ことごとく裏目に出ています。

 たとえば2016年の選挙の際には、韓国の人気アイドルグループTwiceの台湾人メンバー周子瑜(ツゥイ)が、韓国のバラエティー番組で台湾の青天旭日旗を持っていたということで中国から猛バッシングされ、周子瑜が涙ながらに謝罪したビデオが公開されました。

 総統選挙のさなか、この謝罪ビデオが何度も繰り返されたことで、中国の台湾人いじめに嫌気が指した台湾人は、中国に融和的な国民党ではなく、台湾独立を志向する民進党に投票、蔡英文政権が誕生したわけです。ある意味で、蔡英文政権を誕生させたのは中国だったのです。

 こうして誕生した蔡英文政権ですが、景気低迷もあって次第に支持率が低下、2018年11月末の地方選挙で民進党は大敗、蔡英文は責任をとって主席を辞任します。22県市のうち13持っていた首長の座が6にまで、半減以下になってしまいました。

 蔡英文の支持率は下落の一途をたどり、多くの台湾人が、2020年の総統選挙では蔡英文は再選されない、それどころか候補にもなれないのではないかと思われていました。

 これを救ったのが、習近平でした。2019年1月、40年前に台湾へ統一を呼びかけた「台湾同胞に告げる書」の記念式典で、習近平が「武力行使は放棄しない」としながら、一国二制度による統一を台湾に迫ったのです。

 これに対して蔡英文はこの呼びかけを即座に拒否、多くの台湾人が蔡英文の対応に賛同し、支持率は急回復しました。2019年3月から香港で、中国へ刑事事件の容疑者を引き渡すことができる「逃亡犯条例改正案」をめぐり民主化デモが起こり、中国当局の意を受けた香港政府がこれを弾圧したことから、ますます台湾では反中意識が高まっていったのです。

 その結果、2020年の総統選挙で蔡英文は、817万票という史上最高得票で再選されたわけです。

 そして今回の、中国共産党による世論操作です。言論統制による愚民化政策が当たり前の中国では、フェイクニュースで人民を操ることができると思っているのでしょうが、民主主義国家ではそれは不可能です。

◆独裁国家・中国は台湾人意識を高めるための反面教師

 中国が専制国家・独裁国家であり台湾統一を掲げている以上、中国による工作活動の疑念がぬぐえず、親中派が有利に働くことがあれば、それは中国の介入を必ず疑うことになるでしょう。

 そのため、2024年の総統選挙で民進党・頼清徳が勝利すれば、民進党政権は長期政権になるという観測もあります。

 しかも中国経済は不動産バブルが崩壊して悲惨な状況にあります。若者失業率は46.5%に達した可能性があるとも言われています。

 こうなると、中国と付き合うメリットはどんどんなくなっていきます。台湾の若者にとっても、少し前まで大陸で就職するという選択肢もありましたが、現在ではほとんどありません。

 いま思えば、2014年の「ひまわり学生運動」は非常に大きな意味があったと思われます。

 当時、馬英九政権は中国との間で「海峡両岸サービス貿易協定」を締結、あとは国会で批准するのみという段階でした。

 しかし、同協定が表向きは中国と台湾の市場を開放するという建前であったものの、人口の大小や開放分野などで台湾側が不利だとする危惧が噴出、これに反対する学生たちがデモを行い、さらには立法院に突入して占拠するという事態になったのです。

 結局、同協定は批准されずに終わりましたが、もしも批准されていたら、現在、台湾に多くの中国人の若者が押し寄せ、台湾人の職が奪われることになっていたかもしれません。

 今回の捏造事件も、民進党・頼清徳政権の誕生に大きな役割を果たすことになるかもしれません。そういう意味では、独裁国家・中国の存在は、台湾の民主主義を守り、台湾人意識を高めるための反面教師となっている側面が大きいと思います。

※この記事はメルマガ「日台共栄」のバックナンバーです。


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