尖閣をめぐって中国と台湾の「共闘」を標榜する台湾の民間団体「中華保釣協会」総幹事
らメンバー4人や香港の衛星テレビ局「フェニックステレビ」のカメラマン1人を含む7人が
乗った台湾の漁船「全家福号」の出航を許可した。これに対して、日米が正式な外交ルー
トを通じて台湾当局に抗議を申し入れるという強い姿勢で臨むと、馬英九政権は全家福号
に出航停止処分を下した。
この一連の経緯については本誌の2月25日号で詳細を記したが(「弥縫策を重ねてブレに
ブレる馬英九氏の尖閣対応」)、産経新聞が改めて取り上げているので下記にご紹介した
い。
それにしても、安倍首相の対応は素早い。台湾側が攻勢を弱めた途端、「日台漁業協定
について、安倍晋三首相は関係省庁に早期合意を目指すよう指示した」という。
台湾と中国が「共闘態勢」をつくる前に日台漁業協定を結び、尖閣問題に中国を入り込
ませないよう先手を打つという姿勢が垣間見える。「中国を刺激するな」として後手後手
に回っていた民主党政権ではついぞ見られなかった安倍首相の対応ぶりに今後とも注目し
たい。
尖閣問題で日米連携、米政府が台湾に自制要求
【産経新聞:平成25(2013)年3月3日】
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130303/plc13030301370000-n1.htm
中国と台湾が領有権を主張する沖縄県・尖閣諸島をめぐる日本政府の働きかけの結果、
米政府が台湾側に尖閣諸島周辺海域の公船航行について自制を求めていたことが2日、分か
った。台湾公船は1月27日以降、尖閣周辺の日本の領海の外側にある接続水域を航行してお
らず、馬英九総統が尖閣をめぐり中国と共闘しない方針も表明した。日米の連携で中台の
共闘を阻止した形だ。複数の政府関係者が明らかにした。
台湾公船が1月24日、26日に相次ぎ尖閣周辺の接続水域を航行したのを受け、日本政府は
対台湾窓口機関・交流協会を通じて台湾側に抗議するとともに、米政府に対して台湾側に
自制を求めるよう働きかけた。米政府は「台湾の戦略的利益を考えるべきだ」として、台
湾に尖閣周辺海域での行動自粛を求めたという。
1月24日に台湾の海岸巡防署(海上保安庁)の巡視船4隻と台湾の活動家を乗せた遊漁船1
隻が尖閣周辺の接続水域に入った際には、台湾側が日米両政府に対し「抗議船の出航は合
法的で阻む理由がない。接続水域に入る前に折り返すよう誘導する」と事前通告してい
た。しかし台湾船は接続水域を航行。中国公船が接続水域内で台湾船に近づき、尖閣をめ
ぐる中台の共闘を印象付けた。米政府はこの経緯を問題視し、台湾側に自制を求めたとい
う。
台湾側は1月27日以降、尖閣周辺海域での公船航行を自粛し、同月24日に接続水域に入っ
た抗議船に3カ月の出港停止処分を下した。2月8日には台湾外交部(外務省)がホームペー
ジ上で尖閣について「中国大陸と合作(連携)しない立場」と題する声明を発表した。馬
総統も同月18日の会合で中国との連携を拒否する理由を説明した。
日本政府は台湾側の動きについて「馬氏の発言や外交部の声明は積極的に評価できる」
(外務省幹部)と歓迎。台湾が求める尖閣周辺海域での日台漁業協定について、安倍晋三
首相は関係省庁に早期合意を目指すよう指示した。日台双方は週明けにも漁業協議再開に
向けた予備協議を行う方向で調整している。