高市氏「毅然とした外交」で日台与党の連携強化  河崎 真澄(産経新聞論説委員)

高市氏「毅然とした外交」で日台与党の連携強化  河崎 真澄(産経新聞論説委員)

 本会は昨年12月19日、自民党の高市早苗・政務調査会長を講師に迎え、全国各地から会場収容数上限の150人が参加し、19年目を迎えた「日台共栄の夕べ」を開催しました。

 メディアの関心も高く、産経新聞、朝日新聞、毎日新聞、読売新聞、世界日報、北海道新聞、共同通信、時事通信、NHK、TBS、フジテレビ、自由時報、中央通信社、新唐人電視台など14社が取材に訪れました。

 産経新聞で論説委員兼特別記者をつとめる河崎真澄記者は、金美齢氏や門田隆将氏などとともに来賓として出席、高市氏と同じテーブルに座り、高市氏の講演に耳を傾けていました。

 河崎記者が産経新聞で断続的に連載している昨日(1月13日)の「河崎真澄の中台両岸特派員」は、この高市氏の講演を取り上げ、とても詳しく伝えています。河崎記者はこの講演会後、高市氏に「米国が台湾への武器供与などを定めた1979年の国内法「台湾関係法」に関連し、日本の今後の法的措置について書面で尋ねた」ところ、高市氏が年明けの1月5日に回答を寄せたそうで、回答の内容も紹介しています。

 ちなみに、本会が「政策提言」として発表している「日本と台湾との相互交流の基本に関する法律(略称:日台交流基本法)」では、米国のような台湾への武器供与を求めているのはなく、台湾の蔡英文総統が日本に求めた「台湾と日本の安全保障対話」を、法治国家として、法的根拠を設けることで実現しようと提言しています。

 台湾への武器供与や防衛装備の移転はまったく非現実的な話で、その前に、すでに結ばれた実務上の交流に関する取決め、及び今後必要となる取決めに対する法的基礎を与えるためにも、「日台交流基本法」を制定すべきと提言しています。

 河崎記者のレポートでも、高市氏は「現状では『リアルタイムの(日台間)情報共有の手段がない』」ことを指摘しています。法的裏付けがない現状だから、日台は情報を共有することができず、その手段も設定できないのです。このような現状を克服するために、まず情報を共有するための法的根拠を定めたらどうかと提言しているのです。

 日本版「台湾関係法」という名称は分かりやすいのですが、台湾への武器供与を定めた米国の「台湾関係法」を想起させやすく、また、日本はすでに「日本台湾交流協会」という台湾との窓口機関を設けているのですから、日本と台湾との相互交流の基本に関する法律、すなわち「日台交流基本法」という名称で提言しています。

◆2019政策提言「『日台交流基本法』を早急に制定せよ」(2019年3月24日発表) http://www.ritouki.jp/index.php/info/20190630/

—————————————————————————————–高市氏「毅然とした外交」で日台与党の連携強化河崎 真澄(産経新聞論説委員・特別記者)【産経新聞「河崎真澄の中台両岸特派員」:2022年1月13日】https://www.sankei.com/article/20220113-QV7Q2CULNJOAREGDIGWMJME5NQ/?996983&KAKINMODAL=1写真:昨年12月19日、都内で開かれた「日本李登輝友の会」の会合で、講演する自民党の高市早苗政調会長(河崎真   澄撮影)

 「李登輝先生に薫陶を受けた日本の政治家として私たちは最後の世代。『台湾愛』が強く、強くなりました」。自民党の高市早苗政調会長は昨年暮れ、都内のホテルで開かれた日本李登輝友の会(会長・渡辺利夫拓殖大顧問)の会合で講演し、こう話し始めた。

 あえて「強く」を2度繰り返した高市氏。壇上に置かれた李登輝氏(2020年7月に97歳で逝去)の遺影にまなざしを向けた。

 高市氏は、「欧州も中国の軍事活動に危機感を抱き始め、台湾は国際社会にとって重要になってきた。2021年は大きな変化の起きた年」と指摘。同年10月発足の岸田文雄政権で与党、自民党の政調会長として公約を起草し、「日本のパートナーとして台湾をしっかり明記した」と述べた。

 その外交公約には「日米同盟を基軸に豪、印、ASEAN(東南アジア諸国連合)、欧州、台湾など普遍的価値を共有するパートナーと連携を強化」すると書かれている。外交関係なき台湾をかくも重視した政権公約は異例だろう。22年の日台関係、そして東アジアの国際情勢はどう動くのか。

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 講演で高市氏は、中国の軍事脅威への危機感をあらわにした。「中国の国防費は公表分のみで30年間で42倍(に増加した)。現状では米国が(軍事バランス全体で)中国を上回っているが、西太平洋では中国が上回る。中台軍事バランスは中国が15倍。すでに侵攻能力がある」と話す。

 習近平政権は35年までに人民解放軍を近代化し、21世紀半ば、中華人民共和国の建国100年の49年前後に、世界一流の軍隊、すなわち米国を超える軍事力の獲得を狙っている。

 したがって、中国の軍拡は「ここ数年の一過性のものではない」(高市氏)のは明白だ。サイバー戦などを含め中国の「台湾奪取はすでに始まっている」。高市氏はその上で「日本もしっかり(台湾と)連携をとらねばならない時期。自民党はかなり急ピッチで(台湾の与党、民主進歩党と)情報共有を進めている」と述べた。

 20年8月に日台の与党間対話として、自民党と民進党の議員による「外務・防衛2プラス2」会合をスタートさせた。12月には、台湾が参加を目指す環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)、半導体サプライチェーン(供給網)など、経済安全保障をテーマに、両党の「外交・経済産業2プラス2」も開催。外交関係がない中で、政党間交流に制限がないことを最大限に生かした連携を、この先も加速させる方針だ。

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 昨年9月、自民党総裁選を前に、蔡英文総統(民進党主席)と初めての会談をオンラインで行った高市氏は、蔡氏について「私の憧れの方」と話した。政治家として強いリーダーシップを発揮するアジアの女性同士。蔡氏は「地域の戦略的秩序、平和と安定を維持するために、台湾と日本が助け合うことは非常に重要な絆」と応じている。

 高市氏は言葉を選びながらも、自由、民主主義、人権、法の支配といった基本的価値観を共有している関係を「同志国」と表現した。見方によっては、台湾を「国家として扱う」ことを暗示したとも受け止められる。会談では蔡氏に「日本と台湾の実務関係には、平和的地域秩序の安定を支える安全保障関係も含まれると考えており、国防ばかりではなく経済安全保障にも焦点を当てたい」と語り掛けた。

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 台湾のTPP加盟は地域の経済安全保障面で重大な課題となる。オンライン会談で昨年9月に蔡氏に表明した「台湾のTPP参加への支持」をめぐり、高市氏は昨年暮れの講演でこうも語った。

 「日本は21年末までがTPPの議長国。この期間に台湾参加のための委員会などを設置すべきだとの声もあった」という。議長国の任期は1年。台湾が加盟を申請したのは昨年9月下旬で、年末までには間に合わなかったが、「外務省に確認したところTPPはその年の議長国のみならず、前年と翌年の議長国の3カ国によるトロイカ体制で対応する」と明かした。22年も日本はTPPでなお指導的な役割を果たせそうだ。

 地政学的に、日本が輸入する原油の90%、液化天然ガス(LNG)の60%が台湾海峡や、台湾の南側のバシー海峡というシーレーンで運ばれてくることを考えても、高度な半導体技術保全を考えても、日台の経済安全保障は欠かせない。

 台湾との関係で、高市氏が「経済安全保障」を強調する背景には、国益としての安全保障よりも企業に利益拡大や既得権益を優先する傾向がある「財界の対中ビジネス偏重」への警告が見え隠れしていた。

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 講演で高市氏は「個人的な見解」と断った上で、さらに踏み込んだ考えを明かした。「台湾有事に備えて日本と米国は作戦計画を立てねばならないし、アジアへの影響が大きいことを考え、(米国以外の)同志国も交えた多国間の協力体制構築へ、できるだけ早く着手したい」と強調。台湾には約2万5000人の日本人が在住している。「邦人保護や非戦闘員の保護などで共同訓練も必要」と話した。

 現状では「リアルタイムの(日台間)情報共有の手段がない」といい、日本側と台湾側の当局者を専用線でつないで、公的な情報を共有するホットラインの開設まで模索する意向だ。

 ほかにも、台湾周辺の海難・航空事故を想定した防止協定の締結、さらに海底ケーブルや通信衛星といった国際情報インフラの相互防御など、より高度な安全保障の協力関係構築に高市氏は関心を深めている。

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 中国の習近平国家主席は新年を控えた12月31日、年頭所感で「祖国の完全な統一は両岸(中台)の同胞がともに願っている」と一方的に主張した。台湾併合の野望を改めて強調し、海外からの介入を牽制(けんせい)した。

 これに対し台湾の蔡総統は1月1日、「両岸問題の解決で軍事的衝突は絶対に避けなければならない」と指摘。「中国が状況を見誤らず、軍拡に突き進むことも防ぐように注意を促していく」とも述べた。強硬な表現は避けながらも中国の主張を否定し、平和的な問題解決を模索する姿勢だ。

 ただ、北京冬季五輪の閉幕後に中国が軍事行動に出る可能性を懸念する声も上がっている。8年前にはソチ冬季五輪の閉幕後すぐ、ロシアがウクライナのクリミア半島の併合を行った経緯がある。

 台湾有事が現実味を増す中で、米国が台湾への武器供与などを定めた1979年の国内法「台湾関係法」に関連し、日本の今後の法的措置について書面で尋ねた。高市氏は1月5日、回答を寄せた。

 「わが国からの防衛装備の海外移転については、安倍(晋三)政権下の平成26年4月、従来の『武器輸出三原則等』に代わる新原則として、『防衛装備移転三原則』を導入した。この新原則に基づき、近年、わが国は厳格ながらも柔軟に外国為替および外国貿易法を運用。防衛装備の海外移転実績を積み重ねている」

 「そのような中で台湾に限らず、特定の国・地域を対象とした防衛装備移転も含む法整備を、三原則の枠外で行うことについては慎重を期すべきだと思う。安全保障分野も含む日台関係強化は喫緊の課題だが、段階を踏みつつ、着実に進めていくことが必要と考えている」とした。党内で制定を求める声がある日本版「台湾関係法」制定には、なお時間を要するとの考えだ。

 今夏の参院選や秋の米中間選を控え、国内世論の動向、台湾海峡の事態なども慎重に見極める意向なのだろう。

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 昨年暮れの講演で、高市氏は「平和的な解決を促すために、外交的な働きかけでは不十分。力による一方的な現状変更は不可能、と中国に理解させなければならない」と話した。安全保障協力など、「多くの後押しがなければ毅然(きぜん)とした外交などできない」として講演を締めくくった。

 強権的、覇権的な相手と対峙(たいじ)しながら、平和と安定や繁栄の継続という理想を手にするため、価値観を同じくする同志が安全保障などで連携を強めるとの現実的な対応策。日本の高市氏も台湾の蔡氏も、1988年から2000年まで12年間続いた李登輝氏の総統時代の姿をどことなく思わせる。2人の女性リーダーは李氏の「薫陶」を胸に秘めて理想に向かっていた。

(論説委員兼特別記者)

※この記事はメルマガ「日台共栄」のバックナンバーです。

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