去る9月26日に投開票が行われたドイツ連邦議会選挙では、メルケル首相率いる最大与党のキリスト教民主社会同盟が第2党に転落し、連立与党で中道左派の社会民主党(SPD)が第1党に躍進。これを受け、ドイツ連邦議会は12月8日、引退するメルケル首相の後任に社会民主党首相候補者のオラフ・シュルツ氏を新首相に選出した。
翌9日、ドイツ連邦議会の請願委員会は「台湾の国家承認を含めた対台湾政策の見直しや、ドイツと欧州連合(EU)の台湾との交流深化などを政府に提言する」請願を賛成多数で採択して政府に提出したと、台湾の中央通信社が報じている。
ちなみに、ドイツ連邦議会に戦後設置された請願委員会は憲法上の機関で、国民からの請願は連邦議会での決定を経ることなく直接、この請願委員会に付されるという。多数の専門スタッフをそろえる事務局の事前審査を通過した請願は請願委員会に付託され、請願委員会で審議、決議される。決議された請願は連邦議会本会議でほぼそのまま全会一致で採択されるという。
この台湾に関する請願委員会の決議も、恐らく連邦議会本会議において全会一致で採択されるものと思われる。
本誌でお伝えしてきたように、ヨーロッパでは中国離れとともに台湾との関係を強める動きがこれまでになく高まっている。
フランス、オランダ、リトアニア、スロバキア、チェコ、イギリス、アイルランドで、次々と中国・新疆ウイグル自治区の少数民族ウイグル族の状況について「ジェノサイド(集団虐殺)」と認定する動議や台湾の国際機関への参加を支持する決議が採択されている。ここに、ヨーロッパを牽引してきたドイツが加わることになりそうだ。 —————————————————————————————–ドイツ請願委員会、対台湾政策見直しを政府に提言【中央通信社:2021年12月12日】
(ベルリン中央社)ドイツ連邦議会の請願委員会はこのほど、台湾に関する決議を採択した。台湾の国家承認を含めた対台湾政策の見直しや、ドイツと欧州連合(EU)の台湾との交流深化などを政府に提言する内容だ。
ドイツでは2019年、台湾との国交樹立を求める請願がドイツ人男性から出され、署名開始から約3週間で規定数の5万件を集めた。これを受けて開かれた公聴会で、外務省幹部は当時、「一つの中国」政策を維持しつつ、台湾との関係拡大を計画しているとの考えを示していた。これ以来、進展がないままとなっていたが、新政権発足で、同委は9日に採決を行い、賛成多数で採択された。
駐ドイツ台北代表処(大使館に相当)は歓迎と謝意を表明し、ドイツ政府の前向きな回答と実践を期待する立場を示した。
(林育立/編集:楊千慧)
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