台湾智庫の世論調査で「台湾人」アイデンティティが62.6%、「中国人」は2%

 1月の総統選挙で再選された蔡英文総統は5月20日の就任演説において、行政システムの最適化を図り、憲法をより時代に即した内容とするため「立法院は間もなく憲法改正委員会を設置し、統治システムと国民の権利に関する憲法改正問題について、全面的な対話とコンセンサスを得るためのプラットフォームを提供する予定」だと発表した。

 加えて「与野党間で同意している18歳からの投票権付与を優先的に推進すべきと考えています」とも述べ、主軸の一つが「公民権の18歳への引き下げ」であることを明らかにしている。

 また、五権分立制の下に五院(行政院、立法院、司法院、考試院、監察院)を構成している現状から「考試院および監察院の廃止」も主軸の一つになっている。

 考試院は中華民国憲法第83条に定められた公務員の人事に関する最高行政機関で、公務員の採用試験や任用、管理を行っている。監察院は中華民国憲法第90条に定められた国家最高の監察機関で、公務員・国家機関の不正に対する弾劾と糾明を行い、国家機関の財政状況および決算等の会計監査などの国政調査を行っている。

 そもそも、権力の集中を排除することを目的とした五権分立制は、台湾の中華民国では今でも「国父」と仰がれている孫文が提唱した行政システムだそうだが、それを三権分立制にしようという抜本的な改正だ。

 これを受け、財団法人台湾智庫(台湾シンクタンク)は、憲法改正の参考として、このほど国内の22の県と市に住む、満18歳になる国民を対象に、「国家正常化の推進」と題して台湾人アイデンティティなどに関する世論調査を実施、9月24日にその調査結果を公表した。

 この世論調査によれば、「台湾人か、中国人か」という国民のアイデンティティについては、62.6%の回答者が「台湾人」としたのに対し、「中国人」がわずか2.0%だったそうだ。

 ちなみに、国立政治大学選挙研究センターが去る7月3日に発表した台湾人アイデンティティの世論調査によれば、「台湾人」67.0%、「台湾人であり中国人」27.5%、「中国人」2.4%で、台湾智庫の調査結果とほぼ同じ結果を示している。

 また政党支持率では、民進党:35.3%,中国国民党:16.9%、台湾民衆党:9.2%、時代力量:4.5%、台湾基進:4.0%、親民党:0.3%、?党:0.1%、新党:0.3%だったとも発表している。

 下記に台湾智庫が記者会見で発表した世論調査と、それを伝える台湾国際放送の記事をご紹介したい。 ◆【台灣智庫】「推動國家正常化」修憲民調記者會−會後新聞稿[9月24日] https://www.taiwanthinktank.org/single-post/2020/09/24/%E3%80%90%E5%8F%B0%E7%81%A3%E6%99%BA%E5%BA%AB%E3%80%91%E3%80%8C%E6%8E%A8%E5%8B%95%E5%9C%8B%E5%AE%B6%E6%AD%A3%E5%B8%B8%E5%8C%96%E3%80%8D%E4%BF%AE%E6%86%B2%E6%B0%91%E8%AA%BF%E8%A8%98%E8%80%85%E6%9C%83%EF%BC%8D%E6%9C%83%E5%BE%8C%E6%96%B0%E8%81%9E%E7%A8%BF

—————————————————————————————–「私は台湾人」が62%、台湾シンクタンク調査【台湾国際放送:2020年9月30日】

 立法院では、近く「憲法改正委員会」が設置され、憲政改革が始まります。今回の憲政改革の二大主軸は、「公民権の18歳への引き下げ」と「考試院および監察院の廃止」です。これに対して、台湾シンクタンクは24日に、「国家正常化の推進」と題して、国内22の県と市に住む、満18歳になる国民を対象に、憲法改正に関するアンケート調査を実施し、それを憲法改正の参考とします。サンプル数は1074人、標本誤差は、±3.0ポイントです。

 調査結果によりますと、「台湾人か、中国人か」という国民のアイデンティティについて、62.6%の回答者が「台湾人」としたのに対し、「中国人」がわずか2.0%でした。

 新型コロナウイルス感染症が世界的に広がる中、台湾が「Taiwan can help(台湾がお手伝いできます)」「Taiwan is helping(台湾がお手伝いしています)」というスローガンを掲げ、海外への感染予防物資の寄付など、海外への援助に積極的に取り組んでいます。

 この調査では、48.1%の回答者が「台湾名義」での国際組織への参加に非常に賛同しているとし、国際的な事務に当たる際、51.2%が「台湾」という名義を使ってほしいと答えています。同時に、45%が領土範囲を「憲法の効力が及ぶ地域」に変更することに非常に賛同すると答え、45.5%が「省政府」という行政レベルを保留する必要は全く無いと答え、憲法における領土と地方自治制度に対する規定が現状と一致すべきことを期待しています。

 台湾シンクタンクの董思齊・副執行長によりますと、アンケートの結果から、回答者の多くは、台湾人という意識を持つ傾向が非常に明らかです。これは、台湾が数々の選挙を経て、国家意識が徐々に定着していることと、最近中国大陸が台湾に対して、言葉と武力による攻撃と威嚇を繰り返したため、台湾アイデンティティが国民の共通認識となりました。今の台湾社会には、「台湾コンセンサス」と、30歳以下の「新世代コンセンサス」があります。董思齊・副執行長は、立法院がこれらの台湾コンセンサスの力をうまく活かすことを提案したものの、世代間の意見の相違にも慎重に対処するようアドバイスしています。

 董・副執行長は、「今回の調査結果から、憲法改正のプロセスの中で、台湾コンセンサスという集団の力をうまく活かすほか、世代間の意見の相違にも慎重に対処しなければならないことが分った。これは、数々の法律と政治のシステムの変動にもかかわるため、もっと討論しなければならないところが多くある」と話しました。

(編集:曽輿?/王淑卿)

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