聯合報が12月10日に発表した世論調査(カッコ内は前回11月18日調査)では、蔡英文:48%(45%)、韓國瑜:20%(29%)、宋楚瑜:8%(8%)と、蔡候補が16ポイントから28ポイントにその差を広げている。
蘋果日報の世論調査(12月9日発表、カッコ内は前回12月2日調査)でも、蔡英文:50.8%(51.0%)、韓國瑜:15.2%(19.0%)、宋楚瑜:6.5%(6.6%)と、蔡候補が大きく35.6ポイントもリードしている。
一方、立法委員選挙は聯合報の世論調査(12月10日)では、民進党:36%、中国国民党:30%、台湾民衆党:8%、時代力量:3%、親民党:3%と、民進党と中国国民党が接戦で6ポイント差だ。
また、蘋果日報の世論調査(11月25日)でも、民進党:31.2%、中国国民党:24.2%、台湾民衆党:10.1%、時代力量:5%、親民党:3.5%、台湾基進:1.2%、緑党:1%と、やはり民進党と中国国民党は7ポイント差の接戦模様だ。
これらの世論調査に表われているように、ここにきて柯文哲・台北市長の率いる台湾民衆党が支持を広げており、どうやら柯氏の目論見どおりキャスティングボートとなりそうな勢いを示している。
日本経済新聞がかなり詳しく報じているので下記にご紹介したい。
—————————————————————————————–台湾与党、議会選過半数割れに危機感 総統・立法委員選まで1カ月【日本経済新聞:2019年12月10日】
【台北=伊原健作】1カ月後に迫る台湾の総統選を巡り、同日実施の立法委員(国会議員)選挙が焦点に浮上している。総統選びでは対中強硬路線の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統が優位に立つが、立法委員選では蔡氏の与党が苦戦。現有の過半数を割り込み、政権と議会の「ねじれ」に直面する可能性がある。鴻海(ホンハイ)精密工業の創業者の郭台銘(テリー・ゴウ)氏らによる第三極を築く動きも行方を左右しそうだ。
「改革を進めるために国会での過半数が必要だ」。蔡氏は8日夜、中部最大の都市・台中での与党民主進歩党(民進党)の集会でこう訴えた。総統選と立法委員選は来年1月11日に迫る。総統の職務の傍らで、平日夜や週末には台湾各地での選挙活動に駆け回る。
台湾主要紙「聯合報」の10日掲載の世論調査によると、蔡氏の支持率は48%と、対中融和路線の最大野党・国民党の韓国瑜(ハン・グオユー)高雄市長を28ポイント上回る。ただ政党支持率ではリードは6ポイントしかない。
立法委員選挙は小選挙区と政党に投票する比例区を中心に争われる。定数113のうち現状は民進党が過半数の68議席を握る。ただ今回蔡氏が再選を果たしても議会で過半数を割り込めば「ねじれ」が生じ、多数派の野党に重要法案の成立を阻止される可能性がある。また中国が外交や経済などで台湾に圧力を強めるなか、議会による政権への責任追及が激しくなるのは必至だ。
台湾では1980年代に民主化が進むまで長く国民党の一党独裁支配が続いた。同党はいまも北部を中心に強い組織力を持ち、特に中高年の支持層が厚い。民進党が初めて政権を握った2000〜08年の陳水扁総統時代も議会では少数与党で、議会運営が混乱した。
香港がデモ隊と警察の衝突激化で混迷を深めるなか、台湾では香港と同じ「一国二制度」での統一を目指す中国への警戒感が高まり、対中強硬路線の蔡氏への支持が高まっている。ただ有権者は中国と一定の距離を取るため総統選では蔡氏を支持しつつ、議会選では身近な国民党候補に票を投じる可能性がある。
民進党幹部は「過半数を取れるかギリギリの闘いだ」と話す。存在感を高めているのが第三勢力だ。二大政党がいずれも過半数に届かなかった場合に、議会運営のカギを握る可能性がある。
第三極の最有力候補は台北市長の柯文哲氏が8月に立ち上げた「台湾民衆党」だ。イデオロギー色の強い二大政党による利権争いが台湾の政治を劣化させていると主張。対中政策では台湾の主体性を守ると強調する一方、「両岸一家親」(中台はひとつの家族)などと中国にすり寄る発言も多い。曖昧さが目立つが、二大政党にあきたらない若者らの支持を集め、各種世論調査での政党支持率は10%前後を占める。
また9月に総統選への出馬を突然取りやめた鴻海の郭氏も動き出した。「志を同じくする候補者を支援する」と述べ、柯氏の台湾民衆党の比例区名簿の第3位に鴻海幹部の高虹安氏を送り込んだ。同党を支援することで自らの政治勢力拡大につなげる構えで、11月末には北部・新北市での選挙集会で柯氏と同席した。
ただ郭氏は自らの勢力を強めようと小政党の親民党の比例区名簿にも自らの関係者を送り込んでおり、柯氏陣営からは不満の声も出ている。柯氏と郭氏はいずれも24年の次々回総統選への出馬を目指しており、連携は同床異夢との見方がある。選挙戦で足並みをそろえられるかが第三勢力の成否を左右しそうだ。