柯文哲氏はこれまで総統選への出馬について「問題は出るか出ないかではなく、どうやって出るかだ」(5月半ば)「(出馬を)まじめに考えている」(6月15日)と答えてきた。その答えの一部が示された形だ。
下記に紹介する産経新聞は「政党を結成しても、総統選では無所属扱いになるため、出馬には有権者の署名約28万人分が必要」で、新党結成の目的は「自らの総統就任をにらみ、立法院での足場固めを図る狙い」があると解説している。
また、日本経済新聞は「出馬を模索する鴻海(ホンハイ)精密工業の郭台銘(テリー・ゴウ)前董事長と連携する」という見方も浮上していると伝え、新党結成の目的については「新政党で郭氏の総統選出馬を支援するとの見方」や「自身が総統になるため郭氏に支援を期待しているとの声」も報じている。
国会での「足場固め」説にしろ「郭台銘氏との連携」説にしろ、柯氏は「どうやって出るか」について、総統選出馬の布石として新党を結成するわけだから、総統選への出馬を固めたと見ていいだろう。柯氏は記者会見で総統選への出馬は「9月上旬に明らかにする」と明言はしなかったものの、この新党結成は総統選出馬のプレ宣言と捉えていいのではないだろうか。
—————————————————————————————–台北市長が政党結成 総統選の布石か【産経新聞:2019年8月1日】
【台北=田中靖人】台北市の柯文哲(か・ぶんてつ)市長は1日、市政府(市役所)で記者会見し、自らの政党を結成する考えを明らかにした。柯氏は来年1月の総統選に出馬するかどうかは9月上旬に判断すると改めて表明した上で、同時実施の立法委員選(国会議員選に相当)に候補者を擁立すると述べた。
政党名は「台湾民衆党」で、すでに内政部(内務省)に届け出た。6日に結党大会を開く。名称は日本統治時代に自治運動を担った政治団体に由来するという。柯氏は、結党の目的は「民主、自由、多様性、開放、法治、人権、弱者保護などの普遍的な価値を台湾で実践する」ためだと述べる一方で、与党・民主進歩党は「価値のない政党だ」と批判した。
柯氏が今、政党を結成しても、総統選では無所属扱いになるため、出馬には有権者の署名約28万人分が必要だ。ただ、所属政党がない場合、総統に当選しても立法院(国会)の運営が困難になるのは確実なため、今回の政党結成は自らの総統就任をにらみ、立法院での足場固めを図る狙いがあるとみられる。