毎回、面白く読ませていただいている。本誌でもその多くを紹介してきた。
先日の「台湾有情」で、長谷川周人・台北支局長が総統府について書いている。台湾李
登輝学校研修団の野外研修では、この総督府に行くことが少なくない。入ると大きなパネ
ルがあり、日本統治時代の歴代総督19人と戦後台湾の総統が、写真入で掲げられている。
解説は日本語世代の方々がボランティアでやっている。日本人訪問者の間では有名な蕭
錦文さんなどは、二二八紀念館と掛け持ちで解説されている。
なかなか総統府の建物そのものが話題になることも少ないので、ご紹介したい。台湾を
訪れたときにはぜひ立ち寄ってみたいところだ。
ちなみに、大正8年(1919年)に竣工したこの総統府は今年で88年目を迎えた。韓国に
あった「朝鮮総督府」は台湾に遅れること7年の大正15年(1926年)に竣工している。だ
が、「日帝36年のシンボル」だとして、1995年(平成7年)8月15日を期して取り壊されて
いる。竣工69年目であった。 (編集部)
総統府に日本人の軌跡
産経新聞台北支局長 長谷川周人
【1月26日付「産経新聞」朝刊「台湾有情」】
日本から訪れた知人を案内したついでに、一般参観者に混じって総統府を見学した。取
材で内部まで出入りする機会はあるものの、総統府が観光客や住民に見せる“表の顔”に
触れるのは初めてだけに、興味があった。
総統府の裏側にある出入り口では、来訪者はまず金属探知機で身体検査を受ける。カメ
ラのほか携帯電話も持ち込みは許されず、自動小銃を構えた憲兵があたりに、にらみを利
かせている。出迎えてくれた案内役のボランティアは親日的ないわゆる「日本語世代」で、
開口一番、こう言った。
「日本は台湾を植民地にしていない。疫病を一掃し、高いレベルの教育環境を整えたの
です。イギリスやフランスの植民地とは違います」
内部に入って、まず目に飛び込んできたのは、歴代総統を紹介する大型パネル。日本の
総督19人の顔写真も総統と同じ扱いで掲げられていた。解説に耳を傾ければ、社会基盤整
備など日本の政策が台湾の発展を促した功績として熱く語られる。
歴史認識では日本に厳しい中国通の知人は押し黙った末に、別れ際にようやく口を開い
た。「戦後、われわれが自ら封印した日本人の軌跡が台湾では今なお生きていた。しかも
権力の中枢である総統府に…。北京ではおよそ考えられない」。
総統府の一般開放は週日の午前9時〜正午。日本人は旅券が必要です。