【4月6日付 産経新聞「台湾有情」】
「傷口に塩をすり込まれた。今まさにそんな思いです」。ある会合で偶然、隣り合わせ
た台湾人男性が切り出した。彼は日本統治下の台湾で読み書きを日本語で覚えた、いわゆ
る「日本語世代」。「切って捨てられたとは思いたくないが、結局は“同床異夢”という
ことなのでしょうか」
学生寮の所有権をめぐる光華寮訴訟で、「中国の代表権」を失った台湾が原告として行
った法手続きは、すべて無効だとの判断を下した先の最高裁判決のことである。
判決を踏まえ、台湾当局は日本政府に向けて、「中国の温家宝首相の訪日に影響を受け
たのではないか」と非難のメッセージを送った。訪日直前に下された司法判断に、くだん
の男性が、「日本は司法も台湾を踏み台にして中国にこびを売るのか」と深読みするのも
心情的には理解できる。
法的存在を国際的に認められない台湾の人々、中でも「日本人との心の絆(きずな)は
生きる糧」と言い切る台湾の“元日本人”たちが、「棺おけに片足を突っ込むわれわれを
切り捨てる判決だ。義理と人情は日本人の美徳ではなかったのか」と、憤懣(ふんまん)
やるかたない思いを抱くのも、無理からぬことだと思うからだ。
日中関係の重要性は言うまでもない。法解釈も専門家に譲るとしよう。ただ、彼らが判
決に抱く失望感や挫折感もまた、厳然たる事実である。日本は、台湾の旧宗主国として、
この現実を厳粛に受け止めて、理解する責務はないのだろうか。 (長谷川周人)
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