鉄道が生む交流 [産経新聞台北支局長 長谷川周人]

台湾有情 鉄道が生む交流
【11月16日 産経新聞】

 「日本の記者でしょ? そのレンズを使うならいい場所がある。案内するから一緒に
行こう」。早朝からレンタサイクルで撮影ポイントを探していると、大学生ぐらいの若
い台湾人がこう声をかけてきた。台湾中部の彰化県で日本製蒸気機関車を取材していた
ときのことである。この若者、“鉄ちゃん”らしく、日本製のデジタルカメラを大事そ
うに抱えている。

 こちらは土地勘がないから、ありがたい申し出だ。素直に従って行き着いたのが、檳
榔林の中を機関車がカーブですり抜ける絶好のポイントで、まさにイメージ通りの背景
だった。残念ながら別の取材があって、慌ただしく別れたが、翌日、メールが届いてい
た。「記事になるのが楽しみです。多くの日本の鉄道ファンと交流したいから」

 台湾の南北を貫く縦貫鉄道が日本統治下で開通したのが約100年前。時代を経た今日、
新たな日台鉄道交流の実現は意義深い。日本の鉄道ファンは100万人を下らないそうで、
地域社会に溶け込む、お仕着せの旅行とはひと味違う台湾を味わってくれればと思う。

 「来春の次期総統選で政権交代があれば、日本に好意的な政策の見直しが始まる」。
ある政権関係者はこう話すが、為政者が誰だろうと、草の根交流は育ててほしい。

                                (長谷川周人)

■「“鉄ちゃん”は民主主義国家にしかいない」と、鉄道模型製作の世界ではその名を
 知られ、世界で最も早く台湾版新幹線の模型を作って走らせた“鉄ちゃん”の片木裕
 一理事は言う。勝手気ままに車輌を撮影したり、作ったりできるのは、自由を保障さ
 れた民主主義が定着している証だからだそうだ。台湾に“鉄ちゃん”が出てきたのは
 90年代だという。中国や北朝鮮に“鉄ちゃん”はまだいないそうだ。   (編集部)


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