湾の主権を主張しつつも、「台湾は、中国と連携して日本に対抗することはしない」と改
めて述べ、尖閣諸島問題で「日本との関係が悪化することを避けたい」と表明した。下記
にNHKニュースの全文を紹介したい。動画もぜひご覧いただきたい。
また、馬氏は日本と台湾の「漁業交渉に進展があれば、衝突が減少する可能性がある」
とも指摘し、日本との漁業交渉の早期再開を希望した。
さらに、今後は「日本とのFTA=自由貿易協定の締結を目指すなど、経済連携や文化
交流をいっそう深めたい」という意欲を表明した。
日本と台湾の「尖閣問題」とは、漁業交渉にあることを明確に表明したインタビューと
なった。
8月16日午後、台湾外交部(外務省に相当)の董国猷政務次長(政務次官に相当)は、日
本の対台湾窓口機関である交流協会台北事務所の樽井澄夫代表(駐台湾大使に相当)を呼
び出し、台湾政府の立場を改めて表明したものの、日台漁業交渉の早期開催を正式に要望
した。これに対して樽井代表は「真摯に取り組む」と回答したと伝えられる。台湾外交部
はそのことを17日早朝に発表している。
日台漁業交渉はこれまで、日本側は交流協会台北事務所、台湾側は交流協会のカウンタ
ーパートで外交部所管の亜東関係協会が窓口となって進めてきたが、台湾側から正式ルー
トで漁業交渉再開を要望したのは恐らく初めてのことだ。
これが実務レベルのやり取りで、この交渉結果を受け、馬氏が台湾の国家元首の立場か
ら、NHKのインタビューを通じ漁業交渉の早期再開を表明した形となった。
昨日の本誌で指摘したように、台湾側は、本誌領土はさて置き、まず漁業問題を解決し
たいという意向であることがこのインタビューで一層明瞭になったと思われる。
台湾総統“行動の自制が重要”
【NHK:2012年8月21日】
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120821/k10014416081000.html
*動画あり(2分37秒)
台湾の馬英九総統が、20日、NHKの単独インタビューに応じ、沖縄県の尖閣諸島を巡
っては、関係するすべての国と地域が島への上陸などの行動をそろって自制することが重
要だという考えを示しました。
そして、尖閣諸島を巡る主張の違いによって日本との関係が悪化することは避けたいと
いう立場を強調しました。
馬英九総統がことし5月に2期目に入ってから日本のメディアのインタビューに応じたの
は、これが初めてです。
インタビューの冒頭で、馬総統は沖縄県の尖閣諸島について、「台湾に属する島だ」と
述べ、改めて領有権を主張しました。
一方で、同じく尖閣諸島の領有権を主張する中国と連携して日本に対抗する意図はない
ことも明確にし、尖閣諸島を巡る主張の違いによって日本との関係が悪化することは避け
たいという立場を強調しました。
そのうえで、先週、尖閣諸島に上陸して逮捕、強制送還された香港の活動家らが10月ご
ろに再び上陸する計画を検討していることについての立場を問われたのに対し、馬総統
は、日本の地方議員らが19日に島に上陸したことにも触れながら、「最も重要なのは、い
ずれか一方だけに自制を求めるのではなく、皆が平和的に争いを解決する方法を探ること
だ」と述べ、関係するすべての国と地域が島への上陸などの行動をそろって自制すること
が重要だという考えを示しました。
馬総統は今月5日、争いを平和的に解決するためとして、「東シナ海平和イニシアチブ」
という構想を打ち出して、関係する国や地域による資源の共同開発を呼びかけたのに続
き、今回のインタビューでも、「主権を分割することはできないが、資源は分け合うこと
ができる」と述べました。
そして、尖閣諸島周辺の海域は台湾の漁業者が100年以上前から主要な漁場にしていて、
日本側の取り締まり強化に不満を募らせているとしたうえで、日本と台湾の漁業交渉が停
滞していることについて、「これが解決しなければ当然、多くの抗議行動が起きる。進展
があれば、衝突のおそれはきっと少なくなる」と述べ、漁業協定の締結に向けて日本側の
協力を求めました。
馬総統は、日本と台湾の関係は過去40年間で最もよくなっているとしたうえで、「台湾
の人たちが、日本との関係をもっとよくしてほしいと望んでいることを私は実感してい
る」と述べ、今後、日本とのFTA=自由貿易協定の締結を目指すなど、経済連携や文化
交流をいっそう深めたいという意欲を示しました。
さらに馬総統は、中国の次の最高指導者としての地位を固めている習近平国家副主席に
ついて、「台湾の対岸にある福建省で長く仕事をしたことがあり、台湾の事情をよく理解
している」という見方を示し、経済面を中心に中国との関係強化が進むことへの期待を表
しました。
ただ、政治面で注目されている中国との平和協定については、「長期的な計画としては
あるが、今のところ差し迫った事情はない」として、締結交渉入りを急ぐつもりはないと
いう立場を改めて示しました。