台湾の卓栄泰・行政院長は3月7日に来日し、東京ドームで行われた「ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」の台湾対チェコ戦を観戦した。
行政院長の来日は、1972年の日華断交以来、初めてのことだった。
日本はこれまで中国との関係を考慮し、台湾の政府要人として総統、副総統、行政院長、外交部長、国防部長の来日を原則として受け入れて来なかった。
自主規制してきたと言ってよい。
しかし、近年は「台湾当局関係者の訪日につきましては、こうした立場(非政府間の実務関係を維持する)も踏まえ、個別具体的な状況に応じて対応する」「ハイレベルの訪日やトランジットを全面的に認めないということはしておりません」(2024年4月5日、衆議院外務委員会における外務省大臣官房参事官の門脇政府参考人答弁)と対応を軟化させている。
その中でも、2022年7月、銃弾に斃れた安倍晋三・元総理の弔問に頼清徳・副総統(当時)が来日したことは未だ記憶に新しい。
断交後、もっとも高位の台湾政府要人の来日だった。
未確認ではあるが、2024年4月、副総統に当選した蕭美琴氏が就任前に来日したとも漏れ聞く。
また、昨年7月には日華議員懇談会の招きで林佳龍・外交部長が来日し、古屋圭司会長や木原稔事務局長、首相になる前の高市早苗議員らと懇談している。
これも日本政府は容認している。
今回の卓栄泰・行政院長の来日は、日本政府が個別具体的な状況に応じたことと推察される。
木原稔・内閣官房長官によれば「台湾側はプライベートなものと説明している」「日本政府関係者との接点はない」と判断したことで来日を容認したようだ。
今回の来日は純粋に「休日を利用して自費で日本を訪れ、台湾代表チームを応援」するための来日だったようだ。
朝日新聞は社説で「行政院長の来日はきわめて異例だ。
その判断には首をかしげざるを得ない」と疑問を呈し、「中国に挑発と受け止められかねない行動は控えるほうが賢明だろう」と目くじらを立てているが、このような観点は「中国を刺激するな」という中国におもねった観点でもある。
中国は誰もが予想したように、烈火のごとく怒り、卓行政院長に対しては「『私的なスケジュール』を名目に『独立』を画策する挑発的な行為」だと非難し、日本にもその矛先を向け「「台湾独立」分裂勢力に著しく誤ったシグナルを発した。
台湾問題をもてあそび、軽挙妄動するのをやめるべき」と非難している。
米国には、台湾の総統、副総統、外交部長が何度も訪問している。
国防部長も2025年6月に防衛政策を協議するため訪問が決まっていたが、米中首脳会談への影響を考慮し米国側がキャンセルしたものの、米国は柔軟に対応している。
中国は米国側には弱腰だが、日本となると居丈高に上から目線で非難するのが常だ。
しかし、日本は主権国家である。
日本はやみくもに判断している訳ではない。
中国は、主権国家として個別具体的な状況に応じて柔軟に対応している日本の判断をもっと尊重すべきではないのか。
卓・行政院長が東京でWBC観戦、現職行政院長訪日は断交後初【台湾国際放送:2026年3月9日】https://www.rti.org.tw/jp/news?uid=3&pid=196139
行政院(内閣)の卓栄泰・院長(首相)は7日、「私的な日程」として日本の東京ドームを訪れ、野球の国・地域別対抗戦「ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」1次ラウンドC組の台湾対チェコ戦を観戦しました。
今回の訪日をめぐっては、日本側の要人との面会があったかどうかに注目が集まっています。
卓・院長は8日午前、台湾北部・台北市の台北駅で行われたパブリックビューイングイベントに出席するのに先立ち行われた取材で、「休日を利用して自費で日本を訪れ、台湾代表チームを応援した」と説明しました。
卓・院長は、「これは休日を利用した自費による私的な活動であり、唯一の予定は台湾の国民と共にチーム台湾を応援することだけだった。
ほかにいかなる目的もなく、ほかにコメントすることもない」と語りました。
卓・院長の今回の訪日に際し、日本政府がどのような待遇を提供したのか、また現職の行政院長が日本で公の場に姿を見せたことをどう解釈すべきかとの問いに対し、外交部(外務省)は、行政院長の私的な日程であるため、外交部としてコメントはないと発表しています。
一方、日本政府は9日、卓・院長が7日に東京での野球を観戦のため訪日したことに関して、日本側の政府関係者との接触はなかったと明らかにしました。
日本の外務省はフランスのAFP通信社に対し、2004年に当時の游錫●・行政院長が台風の影響で沖縄に立ち寄った事例を除けば、卓氏の今回の訪日は1972年以来で台湾の現職の行政院長が日本を訪れた初めてのケースであると発表しました。
(●=方方の下に土)
台湾と日本がまだ国交を維持していた時期には、当時の副総統兼行政院長であった厳家淦氏が1970年に代表団を率いて日本を訪問し、中華民国の政府を代表して大阪で開催された日本万国博覧会で「中国・ナショナル・デー」の式典を主宰したことがあります。
1972年の台日断交後も、多くの台湾の政府要人が日本を訪れていますが、その多くは退任後の身分や他の公職身分での訪問でした。
2019年5月、頼清徳氏は行政院長退任後に招かれて日本を訪問し、東京で講演を行いました。
日本の学者と台日関係について意見交換を行ったほか、元首相の海部俊樹氏、野田佳彦氏、森喜朗元氏らを表敬訪問しました。
2022年7月、当時副総統であった頼清徳氏が「家族・友人」の立場で、銃撃により死去した安倍晋三元首相を弔問するため日本を訪問し、現職として台日断交から50年で最も高位の政府要人の訪日となりました。
2023年6月には、行政院副院長(副首相)であった鄭文燦氏が代表団を率いて日本を訪問し、当時の自民党副総裁であった麻生太郎氏や自民党政調会副会長の鈴木馨祐氏らを表敬訪問。
さらに遡ると、1994年の李登輝政権の時代には、当時行政院副院長であった徐立徳氏が広島で開催されたアジア競技大会に出席するため訪日しています。
また、行政院長を務めた謝長廷氏は退任後、2016年から2024年にかけて8年間にわたり、台湾の駐日大使に相当する、台北駐日経済文化代表処の駐日代表を務めました。
国会間の交流では、2016年に当時の蘇嘉全・立法院長(国会議長)が党派を超えた立法委員(国会議員)20人余りを率いて日本を訪問し、4日間の交流行程を行いました。
2025年9月には、立法院長の韓国瑜氏も党派を超えた立法委員訪問団を率いて訪日し、2025年大阪・関西万博を視察したほか、当時の自民党最高顧問の麻生太郎氏、当時の立憲民主党代表の野田佳彦氏、国民民主党代表の玉木雄一郎氏らを表敬訪問しました。
(編集:許芳[王韋]/豊田楓蓮/本村大資)
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