戸籍問題について早川友久氏と柚原正敬氏がオピニオン誌に寄稿

早川友久氏「私は中国人ではなく…戸籍に『台湾』、実現の舞台裏」 【月刊「正論」5月号(4月1日発売:900円)】 https://www.fujisan.co.jp/product/1482/new/

・柚原正敬氏「台湾人の戸籍が『中国』から『台湾』に」 【月刊「明日への選択」4月号(4月1日発売:600円】 http://www.seisaku-center.net/monthly

本誌でも何度かお伝えしたように、今年の5月26日、法務省は「戸籍法施行規則の一部を改正する省令」を施行し、国籍欄を「国籍・地域」欄に改め、台湾出身者を「中国」から「台湾」と表記するようになります。

李登輝元総統の秘書をつとめた早川友久(はやかわ・ともひさ)氏は、日本台湾交流協会台北事務所専門調査員を経て現在は笹川平和財団安全保障グループ研究員をつとめています。

奥さんは台湾人です。

このほど戸籍問題について月刊「正論」5月号に「私は中国人ではなく…戸籍に『台湾』、実現の舞台裏」と題して寄稿しています。

早川氏自身から、結婚したとき、戸籍の「配偶者の国籍」を「中国」とされたことに驚きつつも「どうして台湾人の妻の国籍が中国なのだ!」と憤り、子供が生まれて出生届けをすると、戸籍の「出生地」が「中国台湾省台北市中山区」となっていたことにまたもや憤りを覚えたとお聞きしました。

早川氏も戸籍の被害者であり、問題の当事者でした。

早川氏は寄稿の冒頭で、奥さんは日本の戸籍では台湾出身者の国籍が「中国」とされることを知らず「単に役所の記載ミスだと半ば信じ込んでいた」そうですが、「のちに真相を知ると『中国人にされた』と不満に口を尖らせた」と書いています。

寄稿では、戸籍問題が解決されるまでの経緯として、1964年の法務省民事局長通達の詳細や、李登輝元総統が進めた台湾化政策で台湾における台湾人アイデンティティの高まってゆく様子、在留カードに「国籍・地域」欄が設けられたことなどを紹介し、謝長廷前台北駐日経済文化代表処代表が細心の注意を払って国会議員に働きかけたことや日本李登輝友の会の署名活動にも言及しています。

今後の問題として、医師免許証などに記された「中国」という国籍を「台湾」に改正表記されることが戸籍問題の終着点であることを示しつつ、日本は「台湾を中国とは別個の存在として認め、より多方面での関係強化を進めていくべき」と締めくくっています。

一方、日本李登輝友の会事務局長の柚原正敬(ゆはら・まさたか)氏は、同会が取り組んできた台湾正名運動を担ってきた中枢の一人です。

ほぼ早川氏と同じ観点から、外国人登録証明書問題を解決した後に戸籍問題に取り組んだことなどの経緯を記しつつ、戸籍で台湾出身者の国籍を「中国」としたままでは、日本の国益に不利な状況が生じる恐れがあったとして、下記のように指摘しています。

<戸籍簿という公文書で台湾出身者の国籍を「中国」と記すことは、中国が主張する「一つの中国」を日本が承認している証とされる懼れがあり、日中関係にも影響を及ぼしかねない懸念があった。

日中関係は歴史問題のみならず、いまや安全保障上からも注意深くあらねば、中国は必ず「軟らかい土」を掘ってくる可能性が高く、戸籍簿という公文書に台湾出身者の国籍を「中国」と記していることが日本のアキレス腱とならない保証はどこにもありません。

中国が戸籍を手掛かりとして攻めてくる前に改正できたことを素直に喜びたいと思います。

早川、柚原両氏が指摘するように、この戸籍問題は、法務省管轄の戸籍が改正されただけでは終わりません。

台湾出身者の医師免許証や調理師免許証など多くの免許証に「中国」と国籍を表示してきた厚生労働大臣はじめ、各省庁に免許申請施行令の出し直しを求めてゆくことが必要です。

両氏の論考を参考に、多くの方が厚生労働大臣などに早期の免許申請施行令の出し直しを求めるご意見を届けていただきますようお願いします。

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