11月17日、片山和之・元ペルー大使は駐台湾日本大使に相当する日本台湾交流協会台北事務所の代表として着任した。その後、11月30日には首相に相当する行政院の陳建仁院長を行政院に訪ね会談している。昨日(12月11日)は総統府に国家元首の蔡英文総統を訪ねて会談したという。
新任の挨拶回りだが、本誌が着目したのは、日本の日本台湾交流協会台北事務所代表が行政院や総統府を訪ねて院長や総統と会談できることだ。外交部などへも自由に出入りできる。また、代表などが乗車する車には、外交官ナンバーに準じたナンバープレートを付けることが許されている。
日本の外交官にはいわゆる「外交官特権」が与えられている。
しかし、日本にある駐日台湾大使館に相当する台北駐日経済文化代表処の代表、つまり台湾大使は首相官邸や外務省の建物に入ることはできない。外交官ナンバーに準じたナンバープレートも付与されていない。謝長廷代表など代表処職員の乗用車は一般車扱いだ。空港でも一般客と同じ扱いだ。
日本の外交官は台湾ではほぼ外交官として扱われ、日本では台湾の外交官は外交官として扱われていない。
昨年3月4日の衆議院外務委員会で、台湾の外交官が外交官として扱われていないことに関して「日本外交官は総統府に行って総統と会っているか」という質疑に対し、当時の政府参考人は「出先の職員の、個別のそういった総統等の要人とのやり取りについては、個別にそういうのがあるなしということについては、事柄の性質からもお答えは差し控えたい」と答弁していた。
その答弁に納得できない議員は「それは極秘でも何でもないはずですよ。向こうの総統府のホームページやなんかでも出てくる・・・どうなっていますか」と食い下がると、今度は林芳正外務大臣(当時)が「今委員からお話のあったような点も含めて、台湾との関係については、我が国の基本的立場、これを踏まえながら、適切に対応してまいりたい」と答弁し、まともに答えていない。
台湾についての政府の考え方は「我が国との間で緊密な経済関係と人的往来を有する重要なパートナー」だが、外交官待遇の一事をみても、これが日本の実態であることがよく分かる。これでは「重要なパートナー」である台湾の外交官が効率的に業務を行うことを妨げていることになる。
互恵平等からはほど遠い、なんとも情けなくも申し訳ない実態だ。日本はなぜ台湾と同じように台湾の外交官を扱えないのか。いったい日本はなにを恐れているのだろう。蔡英文総統と会った片山代表の笑顔を、日本の謝長廷代表はどういう思いで見たのだろうと思わざるを得なかった。
下記に中央通信社の記事をご紹介するが、これでも日本政府は「事柄の性質からもお答えは差し控えたい」と言う姿勢を貫くのだろうか。まさに日本は裸の王様だ。
—————————————————————————————–蔡総統、日本の新駐台代表と会談 経済パートナー関係の深化に期待【中央通信社:2023年12月11日】https://japan.focustaiwan.tw/politics/202312110003
(台北中央社)蔡英文(さいえいぶん)総統は11日、日本の対台湾窓口機関、日本台湾交流協会台北事務所の片山和之新代表(大使に相当)と総統府で会談し、台湾と日本が今後も経済や貿易の分野でパートナー関係を引き続き深化させ、インド太平洋地域の繁栄や発展に共に尽力できるよう期待を寄せた。
片山氏は1983年に外務省に入省し、米国や中国、ベルギー、マレーシアなどでの勤務を経験。2020年7月から今年10月までペルー大使を務め、先月17日に現職に着任した。米国留学中の1986年に台湾の民主化をテーマに修士論文を執筆した経歴も有する。
蔡総統は、片山氏がかつて台湾の民主化に関する研究を行っていたことに触れ、台湾駐在によって台湾の民主主義の成果についての理解がさらに深まることだろうとあいさつ。民主主義や自由は台湾と日本が共有する価値観であり、インド太平洋の平和と安定の維持は台湾と日本の共通の使命だと述べた上で、先月の主要7カ国(G7)外相会合や日英外務・防衛閣僚会合(2プラス2)の会合後の共同声明で台湾海峡の平和と安定の重要性に関する言及があったことに言及し、台湾海峡の平和に対する日本政府の固い支持に感謝を表明した。
また、片山氏が着任後に表明した「日本のファンを増やす」との目標は、「台湾通」を日本で増やすという台湾の目標とも合致しているとし、片山氏と共に分野や世代を超えた台日間の交流を促進し、双方の友情を引き続き増進させていきたい考えを示した。
片山氏は、台湾には過去に5度、旅行や出張で訪れたことがあり、最後に訪問したのは2006年だったと紹介。この17年間に台湾が大きく変わったことに気付いたと話し、台湾の変化に追いつくべく努力していくと語った。また、在任中にはより多くの台湾人と日本人に互いの重要性を知ってもらえるよう努力し、経済や文化、学術、人材など各分野での交流を引き続き推進していくと表明した。
(編集:名切千絵)
※この記事はメルマガ「日台共栄」のバックナンバーです。