メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』より転載
●森友学園問題、中国でねじれ報道──「極右教育」籠池氏側に立つ?
森友学園で行われていたことがメディアで登場するたびに、中国にとっては格好の攻撃材料だと思っていましたが、案の定、CCTVでも報道されるほどの扱いで中国では連日報道されています。内容としては、「安倍政権」と「極右勢力」との癒着を批判するようなものであり、安倍政権の本性ここにありといった感じです。
●安倍卷入右翼学校丑闻事件
籠池氏の証人喚問前にも、中国の外交部の華報道官は定例会見で森友学園問題に言及し、「日本にはいつまでも歴史を正視して反省するのをいやがる勢力がいて、侵略戦争を起こした罪を認めず軍国主義への道を再び歩もうとしている。こういった勢力は教育機関を通して青少年に軍国主義思想を植え付けようとしている」などと日本批判を繰り広げました。
●日本“森友学園”给幼童“洗脑” 外交部回应
森友学園は、戦前の教育勅語を使って児童を洗脳し軍歌を教えているとして、痛烈に批判しているのです。まあ、実際日本でもそうした奇抜な映像がメディアで取り上げられて話題になっているのだから、中国が放っておくわけがありません。ただ、中国が注目しているのはそれだけではありません。冒頭で紹介したコラムでもあるように、籠池氏の証人喚問後の中国の報道に変化が現れました。日本同様、それまで盛んに騒いでいた森本学園の教育内容と土地売買問題以上に、中国でも安倍首相夫人の寄付金問題を取り上げるようになったのです。
●日本:安倍深陷森友学園丑闻 笼池——安倍夫人亲手给我百万日元
証人喚問の中で言及された安倍昭恵夫人に関する部分だけを編集して、昭恵夫人の100万円の寄付を強調しています。とはいえ、仮に寄付をしていたとしても、これは違法ではありません。日本の報道もどうかと思いますが、いかにも首相が何らか後ろ暗い「関与」をしていたという印象をつけたいのでしょう。
もともと安倍晋三総理大臣を煙たがっている中国ですから、このスキャンダルで失脚してくれれば万々歳です。とはいえ、中国では政治家が寄付をするなどということは非常に稀なことです。政治家は賄賂を受け取って不正蓄財をすることが中国では当たり前ですから、この話はあまり盛り上がっていないようです。
日本では、今や状況は籠池氏対昭恵夫人といった様相を見せていて、いまだに事態が収束する感じはありません。土地購入に関しても、籠池氏は証人喚問で政治的介入があったことを認めましたが、どこまで本当のことを言っているかはよくわかりません。森友学園事件が起こって以来、安倍総理の支持率は急落していますが、それでも50%以上の支持率を保っています。
中国は、このチャンスに安倍失脚のシナリオを描きたいようです。籠池氏は、もともと民間政治団体「日本会議」のメンバーでしたが、すでに退会しており、日本会議の田久保忠衛会長も巻き込まれるのは迷惑だとの発言をしています。
●【森友学園問題】日本会議・田久保忠衛会長が激白 「籠池問題は迷惑だ」
ただし、先日、政府が公開した昭恵夫人と籠池夫人のメールでは、籠池夫人が「民進党の辻元清美議員が幼稚園に侵入しかけた」「嘘の証言をした男は辻本議員と仲良しの関西生コンの人間」などという内容のメールを送っていたことが明らかになりました。民進党はこれは虚偽だとしています。
民進党がメールの内容を虚偽だとするならば、籠池氏らの発言も極めて疑わしいということになります。民進党も、自分たちに関することはウソで、総理や昭恵夫人に関する発言は正しいといったダブルスタンダードは取りにくいでしょう。見事にブーメランが返ってきたということだと思います。これ以上、野党が籠池問題を国会で取り上げる必要があるのでしょうか。
一方で、韓国ではこの問題はあまり騒がれていないようです。それはそうでしょう。自分たちの前大統領はそれどころの騒ぎではなく、まもなく逮捕される可能性があるのですから、他国の総理のことをあれこれ言える立場ではありません。
ただ、この問題ばかりが国会で取り上げられるので、国民もそろそろうんざりしてきています。中国がこの問題を積極的に取り上げるというのは、やはり中国の国民に「安倍晋三はとんでもない首相だ」というイメージを植え付け、習近平の正当性を訴えるためです。
日本は今のところトランプ米大統領と良好な関係であるようですが、中国との対話は久しくありません。安倍政権は、これまで中国ともうまく渡り合ってきました。中国がいかに自分勝手な国でも日本にとっては隣人であり、世界の大国である以上、避けることはできません。
韓国では政治が乱れ、北朝鮮は核ミサイル実験で世界を脅し、台湾は独立派政権が誕生し、フィリピンでは二枚舌の大統領が大人気となっており、アジア情勢は本当に混沌としています。
加えてトランプ大統領の保護主義政策による混乱も起きています。4月初旬には米中首脳会談が開催される予定です。世界情勢は大きく動き出そうとしています。
与野党とも、籠池問題などで大騒ぎしている場合ではないのです。安倍政権にしても、100万円の寄付金スキャンダルに動揺することなく、しっかりとアジアを牽引する政治を行ってほしいものです。ここで失脚してしまったら中国の思うツボです。
森友学園問題をめぐる国会での野党追及の騒ぎは、日本国民にとって「反面教師」としての意味が大きいという声が、一般国民からも出ています。
築地の豊洲への移転問題が都議会の百条委員会で追求されたように、この問題は国会ではなく、大阪の議会で取り上げる問題であって、国会で議論すべきものではない、だから国会がつまらないという声のほうが多いようです。バカバカしいという声も少なくありません。
なぜわざわざこの問題で国会の貴重な時間を使い、国家の大事については論議しないのか、野党の時代錯誤というよりも、別の目的があるのではないかという疑念を持つ人も多いようです。一方で、この問題は、日本国民が国会で何をすべきかということを再認識するためのいいチャンスではないかという声もあります。
民進党やマスコミは、森友学園は国家「君が代」を斉唱させているので、愛国教育をやっているとして追及していますが、君が代はサッカーの国際試合でもよく歌っています。愛国教育がだめなら、反日教育ならいいのでしょうか。ちなみに、民進党の党大会では国歌斉唱はないようです。
反愛国教育、反国歌の民進党議員が国会で声を大きくすればするほど、民進党の反日政党としてのイメージが広がっていきます。日本共産党のライバルにはなれても、国民の支持率を高めることには繋がらず、民主党のイメージを払拭するどころか、政権政党としての可能性はますます遠ざかっていきます。
いままで中国政府の対日工作は、メディアがメインでした。学会についてつい最近わかったのは「反日利権」までばらまいていたということです。しかし、中国経済の衰退から、今後の中国の対日工作は減少せざるをえません。そうなると反日勢力の力も衰退することになるのでしょう。
沖縄の基地闘争は、反日の最後のたまり場となっていますが、国際情勢時も変わりつつあります。グローバリズムの衰退から、日米も中印露も国益中心主義になっています。日本では国益中心主義を唱えると「右傾化」といった批判を受けますが、世界が自国優先主義になっているのです。
中華人民共和国が国共内戦を勝ち抜いて政権を樹立してから、すでに一甲子(60年)以上経っています。政権を守るテコとして反日を活用してきましたが、その方法もそろそろ効かなくなりつつあります。
中国政府が「一つの中国」が中国の核心的利益だと公言していても、日米、そして台湾もそれぞれがその解釈が異なります。日本にしても「一つの中国」については「中国の主張を日本政府は尊重し、理解する」というものであり、承認はしていないのです。
今年の1月1日から、日本と台湾との交流については、台湾という名称を使うようになりました。この名称は「チャイニーズ・タイペイ」よりも現実的です。すでに「台湾国」のシールを貼られたパスポートを所持する台湾女性が日本入国を認められたことが、ニュースになっています。
●「台湾国パスポート」で台湾女性が日本に入国、中国当局は「荒唐無稽」と不快感―中国メディア
当然中国は「荒唐無稽」という批判をしていますが、こうした中国の主張をいちいち「ハイハイ」と聞いていたら切りがありません。中国の夢や幻想に日本が付き合うのはバカバカしいことです。台湾を含め、日本国民が目覚めれば世界が変わるということを期待する諸国民も多いのです。日本人もそのことをもっと知って、自覚すべきだと思います。