【黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」:2022年2月2日】
◆WHOのテドロス事務局長と同じ臭いがするIOCのバッハ会長
台湾政府は1月28日の段階では、コロナを理由に北京オリンピックの開会式や閉会式に参加しないと表明しましたが、1月31日深夜、不参加を撤回しました。
報道にあるように、その理由は、「IOC=国際オリンピック委員会から式典に参加するよう要請があったから」とのことです。
読売新聞の報道によれば「IOCから参加を求める通知を何度も受け取った。IOCは、五輪に参加する各国・地域は、関連式典への参加を含む責任を果たすべきだと強調したという。防疫面では、全面的協力を約束した。IOCの要求の背景には、中国の働きかけがあったとみられる」とのことです。
そもそも、コロナの起源についてもWHOのテドロス事務局長の中国びいき発言が象徴するように、いくつかの国際機関は中国に骨抜きにされています。IOCのバッハ会長もテドロス氏と同じ臭いがするのは、私だけではないでしょう。
一部報道では、バッハ会長と中国の親密ぶりが報じられています。その証拠に、北京市中心部にある東四オリンピックコミュニティー公園には、早くもバッハ会長の銅像が建てられているそうです。とはいえ、ネット上では、音楽家のバッハだと勘違いする人が続出だとか。
この公園では、近代オリンピックの父といわれるクーベルタン男爵、そして2001年に北京五輪が決定した際にIOC会長だったサマランチ氏、2008年の北京五輪時に会長だったジャック・ロゲ氏の銅像もあるそうです。
つまり、クーベルタン男爵以外は、中国の国威発揚に貢献した人たちということで銅像が建てられているわけで、その一人として、バッハ会長も名を連ねたということです。
さらに、バッハ会長は、昨年の東京五輪のときに「ジャパニーズ」と言うべきところを「チャイニーズ」と言い間違えるということもありました。
そして、張高麗・元副首相に性的強要をされたと告発したことで、世界的にその安否が懸念されている女子テニス選手の彭帥氏の問題でも、女子テニス協会(WTA)がコンタクトを取れないなか、バッハ会長は簡単に彭帥氏とビデオ通話したと発表しました。
しかも、その会話風景の動画は流さず、単に静止画を公表するだけで、「彭帥氏は無事で安全だ」などと強調し、まるで中国当局の代弁者のような振る舞いに、多くの批判が集まったことは記憶に新しいでしょう。
そんな人物が会長を務めるIOCから台湾が再三不参加撤回を指示されたということは、半ば強制的に撤回させられたようなものでしょう。
台湾は国際的な評価が急上昇しているとはいえ、中国の巧みな戦狼外交とバラマキ外交のアメとムチで包囲されていては、身動き取れない部分もあるのでしょう。
以前もこのメルマガで書いたように、台湾内でも、国民党勢力が台湾独立を叫ぶ立法委員をリコールしようとしたりと、台湾の民主主義堅持を邪魔しようとしています。
蔡政権は内外の圧力と闘わなければならないわけで、台湾が前進するためには、今回のような妥協もひとつの選択肢にせざるを得ないのでしょう。
◆台湾が北京冬季五輪の開閉会式に参加する意義
中国は、台湾を北京オリンピックの開閉会式に呼び、「中国台北」という呼称を使い、台湾は中国のものだと世界に示したいのでしょう。IOCでの呼称「チャイニーズ・タイペイ」は通常、「中華台北」と呼びますが、先日、中国政府当局は、「中華台北」ではなく、わざわざ「中国台北」と呼び、台湾側が反発したことがありました。
台湾当局は、開閉会式に参加しない理由として、新型コロナの影響を挙げていましたが、中国側からこの「中国台北」という呼称を使われることを避けるためだという見方も広がっていました。
たしかに、先の東京オリンピックでは、開会式で入場行進する台湾選手団に対し、日本のアナウンサーが「チャイニーズ・タイペイ」ではなく「台湾」と連呼したことで、台湾で大きな話題になりました。中国はこの意趣返しをしようと狙っている可能性があります。
とはいえ、長い目でみれば、今ここで不参加を堅持するよりは妥協する道を選ぶことで、世界に台湾の存在をアピールすることも可能です。とくに今回の北京冬季五輪は、これまでもメルマガでお伝えしてきたように、世界中から異様な大会だと認識されています。
自由主義陣営の国々はもとより、世界の人権団体、マスメディアも、かつてないほど中国の動向を注視し、警戒しています。
人権や発言の自由のない国の異様さと、台湾のような民主主義国の自由な気風の違いを開閉会式で世界に印象づけ、相容れないまったく異なる国だということを明らかにすることも、大きな意義があると思います。
※この記事はメルマガ「日台共栄」のバックナンバーです。