【産経。主張】尖閣と台湾漁船 中国を利する攻勢許すな

【産経。主張】尖閣と台湾漁船 中国を利する攻勢許すな

2012.9.26 産経新聞
 

中国公船の出現が常態化している沖縄県・尖閣諸島周辺の海域に台湾の漁船群が押し寄せ、約40隻が海上保安庁に相当する海岸巡防署の巡視船12隻とともに一時日本領海に侵入した。

 一部漁船や巡視船は尖閣から約5・6キロまで接近した。台湾側の違法かつ無謀な行為であり、許されない。海上保安庁の巡視船が警告し、放水などで進路を変えさせたのは当然だ。

 台湾は日本の尖閣国有化を「不法占拠」(楊進添外交部長)と抗議する一方、馬英九総統が尖閣問題では中国側と連携しないとし一線を画す立場を表明している。

 だが、中国外務省は「台湾漁船群の行為は正当」とすばやく反応した。台湾公船が率いる漁船群の日本領海侵入は問題を複雑化させ、対日攻勢を強める中国を利することにもなる。

 台湾の尖閣領有の主張は中国と同様、国連機関の調査で付近の海底に大量の石油資源埋蔵の可能性が判明した昭和43年以降だ。法的、歴史的な根拠は全くない。

 ただ、台湾漁船側の主張には、耳を傾けざるを得ない側面もなくはない。尖閣周辺が台湾の伝統的漁場で、漁民の生活にかかわる問題である点だ。

 日中間の漁業協定では、中国が領有権を主張する尖閣諸島の日本領海外の海域に「暫定措置水域」を設け、双方は相手国の漁船に対して自国の法令を適用しない。これに対し、日台間には漁業協定がない。そのため、台湾漁船が日本の排他的経済水域(EEZ)内で操業すれば摘発され、台湾側は問題視してきた。

 領土と主権で日本は譲歩してはならない。漁業面での取り決めに再検討の余地があるならば、日台間で交渉を再開し、操業秩序の確立を含む解決を模索すべきだ。それが日台の切り離しを狙う中国の狙いを阻むことにもなる。

 2期目に入った馬総統は対中融和政策を維持しているが、安全保障に関しては日米同盟支持の立場だ。日本メディアに対し、「日米安保条約があってこそ台湾を含む東アジアが安定する」と強調したこともあった。この発言に矛盾しない自制を強く求めたい。

 日台間の往来者数は昨年約250万人に上り、今年はそれを大きく上回る勢いだ。これまでに積み上げてきた良好な関係を壊さない知恵が必要である。


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