【産経・台湾有情】「旺旺」と総統の事情
日台漁業権交渉を邪魔する馬英九の背後にある中国の影
2012.10.3 産経新聞
日本政府による沖縄県・尖閣諸島の国有化後も台北の街はいたって平穏で、週末、作務衣(さむえ)姿で外出しても、人々はいつも通り親切だ。日本への抗議デモも特定の団体による予定の行動のみ。日台交流行事にも全く支障はない。
それだけに日台漁業交渉再開に努力してきた現場の嘆息は当然だろう。
「再開は『旺旺』に乗っ取られたも同然だ」
9月25日、地元県政府が延期を求める中、日本領海に侵入した台湾北東部・宜蘭の地元漁民の漁船団に、巨額の燃料費を支援したのが中国市場で成功し、台湾有力メディアも傘下に持つ「旺旺」グループの蔡衍明会長(55)だ。
新潟の製菓会社の技術支援で宜蘭の食品会社を巨大企業に育てた半生に興味を持ち、取材を申し込んだこともあるが「最近はほとんど中国大陸。台湾にはいません」という。
燃料費支援の狙いは定かではないが、中国の影響を指摘する声は強い。
「主権問題で弱腰」とも批判されている馬英九政権は、25日の漁船団の抗議には12隻の巡視船を同行させた。日本領海内での海上保安庁巡視船との放水合戦に留飲を下げた人もいるかもしれないが、民放の同月25、26日の世論調査によると馬総統の支持率は就任以来最低の13%だった。(吉村剛史)