「中国ガン・台湾人医師の処方箋」より(林 建良著、並木書房出版)
●幼稚化現象が氾濫する日本
中国というガン細胞に立ち向かうのは、名医「ブラックジャック」のような日本だと考えているが、日本は果たしてブラックジャックになれるだろうか。というのは、以下のようないくつかの問題をクリアしなければならないからだ。
私は日本の「幼稚化」を強く憂えている。例えば、次のようなことがその幼稚性を象徴している。
ある政治家から頂いたカレンダーに、タレントがやっている番組に出演したときの写真をデカデカと使っていた。政治家がタレントのレベルに合わせ、迎合的な発言をする現象は日本の幼稚化を象徴している。
「先生」と呼ばれ、尊敬される職業であるはずの国会議員がお笑い芸人に混じって、くだらない討論に参加し、視聴者の関心を惹きそうな話をし、軽薄な番組に出演することが自分の業績であるかのように選挙民にアピールする。そして選挙民は「あの政治家は偉い」と錯覚する。このような馬鹿らしい連鎖には幻滅せざるを得ない。
知識があり、成熟した人間が、知識のない、幼い人間に媚びる傾向は社会のあちこちで見られる。学校の教師も親も、子供に媚びるようになっている。日本の教科書は漫画化され、写真や挿絵がたくさん使用されている。確かに子供にとっては読みやすいかもしれない。しかし学問とは、決して知識を頭に入れるだけのものではない。我慢し、苦労しながら学習するというのが学問のはずだ。
だが教育の現場は初等から高等にいくほど深刻で、大学が保育園のような状況に陥っている。
私は二年間、ある私立大学で非常勤講師として「内科学」を教えたことがある。ある日、大学から、私の担当する学科で不合格になった学生の親から抗議を受けているとの連絡があった。親が教務係に「なぜ俺の息子を不合格にしたのか」「合格できないのは教師の責任だ」「責任をとれ」と大学で暴れたそうだ。呆れるほかないが、もっと呆れたのは、大学から「何とかしてくれないか」という連絡だった。
ちなみに、私以外にこの学生を不合格にした四名の教師が大学の要請に応じて対応したようだ。
このような例は多くはないかもしれないが、日本の大学が無知識に合わせるというより、「反知識」に向かっていることをよく現している。
このような現象を目の当たりにすると、日本が国家として目指しているのは、もしかしたら「ディズニーランド化」なのかと思えてくる。ディズニーランドとは、現実の世界とはかけ離れ、ライオンとシマウマが仲良く共存するような平和な世界だ。そこは、食うか食われるかという厳しい生存競争とはまったく無縁の世界である。このような幼稚な世界を日本は夢想しているのではないかと思えてならない。