「中国ガン・台湾人医師の処方箋」より(林 建良著、並木書房出版)
日本人は自覚していないかもしれないが、日本も中国に強い影響力を持っている。清朝を倒した辛亥革命の発祥地が日本であることは何よりの証拠だ。日本で中国人革命家たちの教育、資金や武器の提供、政治庇護などがなければ、辛亥革命もなかった。
アジアで唯一中国とわたり合える国は、日本しかない。日本は国際孤児の台湾と違い、国際社会での発言権を持つ。日本と台湾は実は補完的な存在なのだ。日本がその気さえあれば、台湾と連携して中国の民主化運動を支援して中国の内部から分裂させられる。
確かに日本でも台湾でも、中国民主化運動を支援する民間団体が多数ある。しかし、中国ガンの退治は民間団体だけでは不十分なのだ。国の関与がなければ、中国の分裂を誘発するほどのエネルギーは作れないのだ。
中国の民主化運動家も、日本と台湾に期待を寄せている。『中央宣伝部を討伐せよ』の著者で元北京大学助教授の焦国標氏は、二〇〇六年三月十日に東京で「日本は中国の民主化と人権擁護を促進すべき」と題して講演した。
彼は「東アジアの各民主国家政府は、これまでの対中外交の伝統を変え、敢えて中共の人権蹂躙記録に対してノーと言い、欧米国家の多くが中共政府に対するのと同様、正面から外交ルートを通し中共政治に影響を与えるべきである」と発言し、今まで中国に対する日韓台政府の軟弱な態度を諫めた。
さらに「ひたすら経済にだけに気を使って、東アジアの民主的勢力と非民主勢力との対比を無視し、東アジア政治を民主化促進する義務を放棄してはいけない」と厳しく注文した上、焦氏は「民主・自由・人権を核心として訴える東アジア国際組織を創設すべきだ」と提言している。
日本と台湾が民主・自由・人権の価値観を高らかに標榜しているからこそ、焦国標氏も多大な期待を寄せているのだ。焦氏の訴えはまさに「日本も台湾もブラックジャックになれ。そうならなければ、もはや中国は止められない」という諫言である。
●中国の民主化を支援
欧米各国は、すでに中国の民主化運動家への支援活動を行なっている。中国の民主化を求める「零八憲章」を起草して投獄された元北京師範大学講師の劉曉波に「ノーベル平和賞」を与えたことと、アメリカ政府による盲人の人権活動家陳光誠の救出は、その支援活動の一環だと言えよう。
中国はこのような支援活動に強く反発しているが、中国の反発が強ければ強いほど、この支援活動が有効である証なのだ。
しかし、人権を何より重視しているはずの日本政府は、こうした民主化運動家や人権活動家への支援にはまったくの無関心だ。
無理もない。日本政府の対中国政策の基本方針とは、国益を損なっても中国を刺激しないことにあるからだ。尖閣諸島の所有権をめぐる日本の駐中国大使や元外務省の高官の発言が中国寄りになっていることからも、その病巣の根深さがうかがえる。
それでも日本は民主国家なのだから、国民の意思が強ければ、政府の対中国政策も変わる。中国ガンの深刻さを理解する国民の声が何より重要な所以だ。
日台両国が中国の民主化運動を積極的に支援することは、中国を無害な存在にする有効かつ実現可能な手段なのだ。中国ガンの膨張は待ってくれない。今から対処しなければ手遅れになる。
今の我々が生きるか死ぬかの歴史的転換期に立たされていることを、日台両国民は理解しなければならない。