「中国ガン・台湾人医師の処方箋」より(林 建良著、並木書房出版)
https://www.amazon.co.jp/%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E3%82%AC%E3%83%B3-%E6%9E%97-%E5%
BB%BA%E8%89%AF/dp/4890633006/ref=sr_1_2?s=books&ie=UTF8&qid=1500599789&sr=1-
2&keywords=%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E3%82%AC%E3%83%B3
尖閣問題が顕在化してからは日本にくる中国人観光客が激減したが、それまでは日本で旅行や買い物に楽しむ中国人観光客の姿をよく目にした。銀座で抱えきれないほどの高級品を買い漁る彼らは、まさに沈滞している日本経済の救世主であった。普通の人間なら一生に一度や二度しか買わないような高価な宝石や腕時計を、スーパーのバーゲンセールのように一掃するほど買い漁る。
彼らはたまたま旅先で気前よく金を使っているのではなく、中国でも贅沢に暮らしている。北京のビジネス街には、道路の両側にフェラーリ、ロールス・ロイス、アストンマーティンなど、一台数千万円もする超高級車ばかりが並んでいる。
中国人富裕層の収入は、先進国の富裕層と比べても遜色はない。むしろ、贅沢という面だけなら先進国の大富豪以上だ。国民所得はまだ四千ドルで日本の十分の一ほどの国だから、富裕層と庶民の格差はいっそう際立っている。中国の一般庶民からすれば、まさに天国のような暮らしぶりに映る。
西側の富豪の多くは裕福な暮らしをする一方で、慈善事業にも熱心だ。それは一種のステータスと言ってもよい。国の福祉だけでなく、民間にも貧者を救済する組織がたくさんある。所得格差は歴然としてあるが、持てる者が持たざる者へ手を差し伸べるルートは制度的に完備されている。
ところが、中国は実質的に資本主義社会に変身してしまったものの、共産主義の看板をゴミ箱に捨てたわけではない。
だから資本主義国と比べれば、国の持つ権限が大きく、企業に対する国の関与も深く強い。事業をスムーズに進めるため、企業家は権力者と結託しなければならない。結果として、事業の成功者は全員、権力者にコネを持つものか、権力者の家族になる。だから、金持ちは全員権力も持っていると考えるべきである。
このような構造だから、一握りの人間がますます財を成していく。そして、中国の富裕層は今の制度を守らなければいけないと考える。
中国人が豊かになれば、民主化も進むと考える政治学者は少なくないが、それはしょせんナイーブな夢物語だ。中国の富裕層にとっては、金で権力を買い、権力から金を生む現在の社会主義市場経済は最高の制度と言えよう。しかし、これは数億の人間の犠牲の上に、一握りの人間が裕福になるいびつな構造であることは言うまでもない。