【宮崎正弘】台湾総統選観測

【宮崎正弘】台湾総統選観測

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」より転載 
     

 「えっ?」、なんで今頃。椿事、茶番、嫌がらせ、閣僚狙い?????????
   台湾総統選、またまた宋楚瑜が立候補の構え、与党連合は分裂選挙か
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2012年1月14日(土曜日)に実施される台湾総統選挙の公認候補は当然ながら現職・馬英九総統である。立法委員(国会議員)選挙も同時に行われる。
国民党は副総統候補として呉敦義行政院長を擁立した。七月の国民党全国大会でのこと。馬総統は「あと4年で一層生活はよくなる」と再選への決意を述べた。
蕭万長副総統(本省人。元首相)は今期で退任する。

 呉敦義も台湾・南投県生まれの本省人。台湾大学卒、「中国時報」記者を経て、73年に台北市議に初当選。南投県長や高雄市長を経験後、立法委員(国会議員)になる。
以後、国民党秘書長(党幹事長)や国民党副主席、09年に馬総統から行政院長に指名された。
 馬総統は「人柄と経済政策の実績を評価した」と理由を述べた。

さて世論調査では現職の馬総統と野党・民主進歩党の蔡英文主席の支持率は現時点で、ほぼ互角だが、副総統候補の人選が大きく支持層を広げるか、狭めるかの分岐点になる。民心党は台湾人にもっとも影響力のある、しかもノーベル化学賞に輝く李遠哲博士を推薦する声が強い。

さて、政治は一寸先が闇。
宋楚瑜(親民党主席)が立候補すると言い出したのだ。宋楚瑜は2000年の総統選にも国民党から分かれて新党を作って立候補し、惜敗した。漁夫の利をえたのは陳水扁だった。
04年には連戦とコンビを組んで、副総統候補だったが、いずれも陳水扁にまけた。政治生命は失われたとみられた。

ところが北京とのコネを見せる連戦(名誉主席、李登輝時代の副総統)にあやかり、中国大陸を訪問したりして、影響力をやや盛り返していた。

宋楚瑜はテレビ番組で、「100万人以上の署名」を条件としながらも、再び、総統選に出馬すると述べた。
国民党はびっくり。親民党は与党・国民党と強力な提携?協同関係にあるため、これは裏切り、それとも嫌がらせ、或いは閣僚入りが狙いかと巷間の噂は喧しい。
いずれにしても宋楚瑜が出馬すれば、与党分裂となり、民進党が俄然有利になる。

民進党は8月28日に台北で開催した党代表大会で正副総統候補を承認する手はずだったが、内部が紛糾して決まらず、また統一か独立か野基本路線で鋭角的対立が残り、かろうじて「これから10年の台湾の発展戦略」を描いた政策綱領「十年政綱」や、経済決議文などを決定するだけとなった。

 「十年政綱」で注目するポイントは中台間の自由貿易協定(FTA)である「経済協力枠組み協定(ECFA)」に対して従来の反対の立場、厳しい批判をトーンダウンさせ、現状維持を目的として、「すぐには破棄せず、民意を集約し対応」と修正したことである。かなり、その姿勢を軟化させたのは軌道修正、支持者の批判も招くだろう。とはいえ、一つの中国を民進党は改めて否定している。