宮崎正弘
中国人の謀略専門家が描いた「超限戦」というのは、どんな状態でも、いかな
る手段を講じても戦争に勝つことを目的とせよ、という凄まじい内容で、宣戦布
告を伴わない、目に見えない戦争を、相手に悟られないうちに静かに巧妙に仕掛
けて、相手をへとへとに衰弱させる。テロもサリンも、いやいやテレビ放送の中
味に謀略をしかけることも、ナンデモアリの世界。
性善説に立つ日本人の多くは、そういうことを信じない。悪人顔のオザワ某で
さえ高野山へご機嫌伺いにいく国ですから。
問題となったNHKの台湾特集番組のあまりに売国的偏向は、その無限戦争の
典型の手口だ。
ここで蒸し返す必要もないが、北京から指図でもあったかのようにNHKの番組
は全体が日本=悪という手口で描かれ、あまりのデタラメに国民の怒りが集中し
、現在はNHKに対して、一万人を越える集団訴訟に発展したことは周知の事実
だ。
訴えた原告団には、直にNHKの取材を受けた台湾の少数民族のグループも含ま
れる。
国際問題化しているのである。
藤井さんの新刊である本書はシナの謀略の全貌を白日の下にさらし、その全体
像を把握するためのテキストを企図して編まれたもので、著者ならではの試みで
ある。
さて本書のような硬い諸作を連続して世に問う藤井教授。よほどコチコチの保
守かと誤解の向きも多いが、本人はざっくばらん、楽天家の典型で、しかも多芸
の人である。俳句の先生、シャンソンの作詞家。しかもハーバード大学に学ばれ
、国際結婚と、およそ民族派の範疇を多方面から軽々とはみ出す人生を歩んでき
た。
本書はチベット、ウィグルの直接の悲痛を訊き、さらに台湾論客とのインタビュ
ーも挿入されていてバラエティに富むうえ、浩瀚500ページ。
それでいて写真、漫画、イラスト、コラムが随所にちりばめられていて硬い本に
仕上がっていない工夫もされている。