「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」より
トランプ・ピボットは対中政策で始まる
台湾総統と電話会談。南シナ海問題を初めて言及
宮崎正弘
さきに台湾問題で、画期的な「事件」が起きた。
蔡英文総統からの祝意の電話にトランプ次期大統領が応じたのだ。1979年の国交断絶以来、37年ぶりの快挙である。
「台湾に何十億ドルもの武器をアメリカは売却している。そのリーダーが祝意をつたえてきたのだ」とトランプはツィッターに書き込んだが、ついでにこういったのだ。
「南シナ海の(岩礁を埋立て人口島建設と軍事基地化)ことで(中国は)アメリカの許可を得たか?」
ペンス次期副大統領はテレビに出演し、蔡英文総統からは祝賀の電話会談だけだったと述べたが、消息筋はこの米台談話会談は長きに亘って練り上げられた演出だったとしている(ワシントンポスト、12月5日)。
トランプの次期対中国政策は、トランプ・ピボットがおきる可能性を示唆している。
過去の発言を振り返ってみよう。
トランプ名言集は以下の通りである。
トランプは中国を明確に「敵」と言っている。
15年6月16日の出馬表明で、トランプは「私が中国を敵として扱うことが面白くない人間もいるが、やはり中国は敵以外の何者でもない。アメリカは深刻な危機に直面しており、嘗て勝ち組だったのは昔話である。最後にアメリカが誰かを打ち負かしたのは何時だった? 中国に貿易でアメリカが勝ったことがあるのか」。
そして同年11月のテレビ討論会では
「TPPなんてトンデモナイ。中国がいつものように裏庭から入りこんでだまし取ろうというのがTPPである」と発言し、このときまでTPPに中国が加盟していないことも知らなかった。
北朝鮮問題にからめて、こういう発言もしている。
「北朝鮮問題は中国が簡単に解決できるのに、これを利用してアメリカを操作したいため、問題解決に努力しない。北朝鮮問題を解決できない中国なんぞ潰してしまえ」。(2016年1月6日、CNNでの発言)。この文脈から日本の核武装を容認する発言へと繋がった。
こうして過去の発言をフォローすると、トランプの中国観が自ずと浮かび上がってくる。台湾総統からの祝賀をうけたのも自然の流れである。
オバマはアジアピボットを提唱したが、南シナ海でほとんど何もせず、リップサービスだけだったため、アセアン諸国はアメリカへの信頼を薄め、ラオス、カンボジア、タイが中国の圧力に屈し、ついにはフィリピンまでもが中国へなびき、「アメリカ軍は二年以内に出て行け」とドゥテルテ比大統領をして言わしめた。
こうした退嬰的なアメリカの姿勢と百八十度異なるトランプは、つぎのアジアピボットを用意しているのではないか。